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佐伯日菜子
2019年8月4日 22:21
①かみさまの葬式には行けなかった。大人たちが場所を教えてくれなかった。わたしはひとりで冷たい床に横になり、星を数え、あの星に花は咲くのだろうか、猫はいるのだろうか、どの星と仲が良いのだろう、かみさまはあの星を何日かけて作ったのだろう、と毎晩思いを巡らせた。教えてくれるひとがいないので、自分の好きな答えをつくった。そうして7日も過ごしているとだんだん現実と区別がつかなくなってきた。一旦脳みそ
2019年7月14日 03:58
ふたつだけもらったこの手ひとつは心臓を握りしめているもうひとつはお花をそっと持っているコンクリートの狭い部屋、鉄格子のついた窓からは満天の星空が見えた。触れようと心臓を握る手をはなすと目眩がした。インターホンが鳴った。この晩の訪問者はかみさまだった。かみさまは手みやげだよと微笑んで、今さっき心臓をはなしたわたしの手のひらに、小さなオルゴールを握らせてくれた。意地の悪い大人に夕食を盗
2019年4月30日 23:51
彼女は細くて死にそうで目は泣き腫らして赤くなって疲れた顔は朝よりも痩せていて分からないことがたくさんあって歯ブラシについた血も落ちた髪の毛も吐き気がする治らない唇の荒れもニキビも鼻水をかみすぎて皮の剥けた赤い鼻も日が沈むといびつになる心も気持ちが悪いのだろうひとつ分かったの、誰にも言えない大きな大きな恥気づいてしまったの彼女はそのまま静かに顔を歪ませて残ったジャス