365日のみじかいおはなし(130日目)
もしもカメと話せたら
次郎:あのぉカメさん。
カメ:なあに?
次郎:ぼく、話し下手で、相手にすぐ言い負かされちゃうんです。
カメ:ほぅ。
次郎:どうすれば勝てるようになりますか?
カメ:まず、これだけは言わせて。
次郎:なんでしょう?
カメ:バカメ
次郎:(ダジャレ・・・ドヤ顔・・・)
カメ:そもそも、相手を言い負かしたって勝ちではない。
次郎:えっ?
カメ:本当の勝ちたいなら、譲るんだ。
次郎:譲る?
カメ:そう。不毛な争いになりかけたときはな、譲るんだ。
次郎:んーどういうことですか?
カメ:キミはたぶん、議論のとき、相手に反論したりしてたんだろう?
次郎:そりゃあちょっとは言いますよ、自分の意見もありますから。
カメ:反撃すると、さらにぶっ叩かれる。これは生き物の法則だ。
次郎:・・・たしかにお互いエスカレートして言い合いっぽくなって、最後は気まずくなったなぁ。
カメ:オレらの生き方を見てみなよ。
次郎:カメの生き方、ですか?
カメ:オレらはな、敵から襲われたらどうすると思う。
次郎:え? 逃げるイメージがあります。
カメ:その通り。とにかく逃げる。走って逃げる。もしくは甲羅に身を隠す。
次郎:(いやそこでドヤ顔する?)
カメ:ヘタに反撃して敵に噛みついたりしてみろ。100倍返しされて命を落とす危険だってある。
次郎:それはカメの場合はですよね。
カメ:人間だって同じじゃないか。ちょっと反撃したのがきっかけで、大きな争いになってるだろう?
次郎:そうですけど・・・。
カメ:そういえば、この前キミ、満員電車で足踏まれたのに腹を立てて、その人の足を踏み返して逆ギレされて「踏んでんじゃねえよ!」って首ねっこつかまれてたじゃないか。
次郎:なんで知ってるんですか!
カメ:バカメ、なんでもお見通しだ。
次郎:(この顔!)
カメ:争いはな、反撃しちゃダメだ。譲ったもん勝ちだ。それが結果的には一番自分の身を守れるんだ。
次郎:・・・まぁ理屈ではわかるんですけど、なかなかできないですよ、譲るって。
カメ:あれ? 不満? 納得いかないのかな? だってキミ、言い負かされて不快な気分になったんでしょ? だったら言い負かされる前に撤退したほうがましじゃない? ましだよね? 電車で足踏まれたのだって、踏み返さずにいればそれで終わったのに、わざわざ反撃しちゃったからさらに大きな被害を受けたわけでしょ? ほら、譲るべきじゃん。譲ろうよ。ってか譲れー!
次郎:めっちゃ反撃してくるじゃないですか!
カメ:だって絶対オレ正しいし。
次郎:ぜんぜん譲らないんですね。
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