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STP分析(上級編)を題材に「人が担うべきBtoBマーケティング」を解説

以前の投稿で、人間にしかできないマーケティング活動について触れました。今回はその具体例について解説したいと思います。まずはマーケティング活動の鉄板とも言えるSTPについて、その上級編で解説してみます。

セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの頭文字をとってSTP(STP分析やSTP戦略とも言う)。マーケティングに深く携わっていない人でも知っていることの多い有名な単語であり概念だと思います。

仕事の中で使っている人も多いと思うので、今日はその一段上級なやり方について解説してみたいと思います。

S(セグメンテーション)の基本と上級編

セグメンテーションとは何らかの尺度や差異によって市場(顧客)を分類・分割することを指します。そうすることで、多くの企業で活動の効率化を図り、組織を編成し、優先順位を決め、セグメントごとの戦略などを設定している訳ですが、BtoBで言えば「産業とエリア」が分類の基本となります。

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上記のような分類は、どこの企業も当然のこととして行っている訳なので、あくまで基本であり、それによって何らかの差が生じるケースは少ないです。

では上級編はと言うと、「競合他社とは異なる」「盲点をつくようなニーズの抽出や価値提案が可能となる」切り口による分類となります。そして、例えばそんな点に、人間しか担えないBtoBマーケティングの妙がある訳です。

そうした切り口については、挙げよう思えばきりがありませんが、主だったものを2点ほど述べていきます。

その① 顧客の事業方針や戦略で分類する

同じビジネスを行っている企業間でも競争の仕方(差別化のポイント、優勢性の生み出し方)は千差万別です。なので、顧客ごとの方針や戦略といった切り口で市場を分類する方法があります。
こうすると、単なる「自動車業界向けのマーケティング活動」といった検討から、「〇〇を重視する自動車メーカー向けのマーケティング活動」というように思考が具体化され、これまで見落としていたニーズや、自社との親和性・優先順位などが再考できるようになる訳です。

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また、こうした分類を行うにはそれなりの情報収集(顧客や市場の理解)が必須となります。各社と人間同士の関係を築き、深い対話なくして描くことはできません。

その② 顧客の経営資源で分類する

こちらも相当な顧客理解が必要ですが、それこそ本当に多様な分類をすることが可能となります。例えば代表的な経営資源の一つである「人」だけを取り上げてみても、いくつもの分類方法が考えられます。

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このように、ありきたりでない分類をし直してみることによって、これまで見落としていた(気付かなかった)ニーズや課題を抽出し、製品戦略や営業戦略などにつなげていく訳です。
データからはじき出された上位顧客を優先するだけでは何の芸もありません。こうした視野を持ち、スキルを磨くことが人が担うマーケティング活動の一部だったりする訳です。

T(ターゲティング)の基本と上級編

ターゲティングとは、様々な切り口で分類したのうちの、どこの顧客・市場(客層)に注力するかを決める作業です。

なお、STP分析を行う際の留意点として登場する「6R」という考え方は、様々な分類を試してみた後で、どんなターゲットが有効かを確認・検証する際に使用するのが得策です。(分類前に6Rのことを考えても特に発見は得られません)

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ここに挙がっている指標は、ビジネスとして当然の考え方である「勝てそうか?」「魅力(うまみ)が大きいか?」ということが主な判断基準となります。ここまでは知っている方も多い、基本的な考え方ですが、ではターゲティングの判断基準・設定方法は本当にそれだけなのでしょうか。

以下の内容が「上級編」と呼べるかどうかは分かりませんが(敢えてそう呼ぶ必要もありませんが)、個人的な見解として意思・意志を込める方法があると考えます。「企業としてどんな社会を作り上げていきたいのか?」という意思表明を兼ねたターゲット設定という意味合いです。

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これは合理的ではないのかもしれませんが、実際のところ存外に有効だったりします。なぜなら、人間の意志というのは…驚くほど強く、逆境にも折れず、新たなアイデアを生み出し、イメージを実現し、社会を変革する力が備わっているからであります。(すみません、根拠はありません。単なる経験則で言ってます)

だからこそ、合理的な判断に基づくターゲティング以外に、「どういった世の中にしていきたいか?」という意志に基づくターゲティングだって、あってもいいと思うのです。

合理的な判断が外れる(想定よりも市場が成長しなかった/競合の台頭が著しかった/顧客にリーチしようとしたら思わぬ阻害要因が発生した…)こともありますし、想像以上に人の想いが困難な現実を凌駕する場面を目の当たりにしたことで、そんな風に思い至るようになりました。

P(ポジショニング)の基本と上級編

ポジショニングとは、ターゲット顧客の頭の中に、競合他社(の製品やブランド)と比べて、自社の差異や特徴をイメージしてもらうことをゴールとした活動を指します。
差別的優位性を築くための活動でもありますし、その結果として顧客のマインドシェアを高めていく活動でもあります。

特定市場における各プレイヤーがどのようなポジションを取っているかは、人手をかけて分析せずとも、ビッグデータ解析やAIを用いたポジショニングマップの形成が可能なようです(そういったツールは今後益々一般的なものになってくでしょうし、存分に活用すべきだと考えます)が、これからどのようなポジションを築いていくかは、イコール「差別化の軸の取り方」をどう設定すべきかと同じ意味合いで、相当に発想力が問われる領域です。

現状のポジショニング(自社の立ち位置や、他社の立ち位置)が把握できていればOK、という場合は以下の事柄を考える必要性はありませんが、新製品の上市、新規事業、新規参入、リポジショニングなどを行う際は、新たなポジショニングの設定(再設定)が欠かせません。

ちなみにポジショニングマップ(ポジショニング戦略)を策定する際は、顧客が購買を決定する(取引するかどうかを判断する)因子を軸に置くのが基本となります。(一般的には2軸でとり、4象限マトリクスで設定します)

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ではポジショニングの上級編は?と言うと、ポジショニングマップを離れることにあろうかと思います。ポジショニング戦略の目的は、競争の回避であり、差別的優位性を確保することで事業活動(営業、商品企画、ブランディングなど)の効果・効率化を図ることです。言い換えるなら、競争が回避でき、自社の優位性が設定できさえすれば、必ずしもポジショニングを考える必要性は無いということです。

ポジショニングマップは、思考を整理したり気付きを得るためのフレームワークとして優れていますが、顧客の購買決定要因(KBF)が必ずしも4象限に分けられる訳でもなく、また、最近ではバリューチェーンやビジネスモデルの変革によって競争回避、優位性の確保、顧客イメージの獲得などを実現する方策も登場しています。

その活動の結果、従来(既存)のポジショニングの枠から外れ、更には顧客・市場に対する新しい価値創造も行われています。

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人にしか担えないマーケティング活動は山ほどある

今回はマーケティング活動の中でも、基本のキとも言えるSTPを題材に取り上げてみました。まだまだ言いたいことはありますが、最後に一言だけ。
人間を舐めるな!俺たちはまだまだやれる!

気軽な気持ちで書いてみようと始めたら、思いの外大変でした。。
気が向いたらまた同じテーマで次回作も書きたいと思います。

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