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紙とウェブの校正+仕事のこと

最近ちょろっと隙間時間に校正もどきの仕事をしています。
厳密な校正ではないけど、文字等のチェック作業のようなもの。

わたしはエディトリアルデザインとDTPの仕事をしてます。
ページ物の制作が主なので校正や内校はかれこれ18年くらい?やってる。
※内校=内部校正のこと。クライアントに出す前のチェック

校閲は全然別ものだと思ってるので、今回は校正に焦点を当ててみます。
校閲できる人ほんと尊敬。
※数年前に石原さとみが『校閲ガール』ってドラマやってましたね。

紙媒体の校正についてだけ語ってるので、
ウェブの校正との違いについては、
書かれているサイトがあったので共有しますね。


わたしは紙媒体で20年近くやってきてるので
ウェブ媒体のことは正直よくわからないですが
紙もウェブも誤字脱字等の基本的に見るところは同じだと思ってます。

ただ、誤植があった場合

・ウェブ=すぐに修正が可能(という認識ですが違ってたらすみません!)
・紙  =最悪刷り直し。膨大な損失。

この事実だけみても、紙の校正はミスした後の精神的ダメージが半端ない…
(制作も同様に)


◉ そもそも紙媒体の制作ってどうやってるの?

雑誌や書籍に触れる機会は多い人でも、制作過程に詳しい人は
あんまりいないんじゃないかなと思います。

書籍の制作を例に書いてみます。
①の前にはもちろん企画段階があって、
編集者さんと著者さんの打ち合わせ、執筆があって、
その過程を経てわたしたち制作の元に原稿がやってきます。

⓪ 最初にデザインを決めます
この作業はDTPのみの場合はやらない時もあります。
(デザインだけする人もいる。わたしは両方やる人)
原稿もらってデザインのイメージ指示を受けて制作。
だいたい何回かやり直します。
ビジネス書で何回も組んでるorこだわりのない編集者(&著者)さんとだと
一発OKのことも稀にあり。笑

① 原稿が入稿される(文字データ・画像データ等)
この原稿にいろんな指示が入っているのですが、
これがまあ、綺麗だったり汚かったり(汚いと文字が読めない)
分かりやすかったり分かりにくかったり、人それぞれです。
…どんな仕事でもきっとそうですよね。
最近ではPDFで完結させる人も多くなったけど、
それはそれでぐっちゃぐちゃのこともあるので…泣

② ①で入稿した原稿を見ながらInDesign(組版用のソフト)
 を使って組んでいきます。

ボリュームによって違いますが、文字だけ(小説とか)なら
マッハでやれば1〜2日くらいで組めるし、ボリューミーなものは
見開き1ページで何時間もかかることもあります。
※基本的にペラ(ポスターやチラシ、名刺といった1枚モノ)はIllustrator、
  雑誌や書籍などのページモノはInDesignで制作が一般的

③ 組み上がったら出校(提出) ※初校といいます

④ ③で出校したものが戻ってきます(=初校戻)
1週間で戻ってくる時もあれば、2ヶ月戻ってこない時もあったり
戻す戻す詐欺する人も多々いるので、
このあたりは内容とか編集者のヤル気によって変わる気がする…(マジで)

⑤ この初校戻がマジで大変です。
超ベテランさんだと原稿入稿段階でわりと整理していれてくれるのですが
ここ10年くらいは真っ赤になって戻ってくることも多いです。
全部さしかえとかもあります(組んだ意味……)。
計算しない(できない?)んですよね、文字数を。たぶん。
写植の時代にこれやったら○されるか相当恨まれると思うレベル。
もちろん、ちゃんとしてる編集者さんも多いです🙏
※初校はちゃんと見てなくて赤字少ない→校了前真っ赤で地獄パターンもアリ
 著者さんの気が変わって文章然差し替えとかもある。

赤ければ赤いほどいいって勘違いしている著者さんもいるって話を
聞いたことがあるような、ないような、あるような…笑

⑥ 修正が終わったら出校〜戻しを何回か繰り返します。
初校→初校戻→再校→再校戻→三校→三校戻……→念校→責了→校了→
色校(白焼き)戻→出校→責了→校了→下版(印刷所に入れること)
校了前に大幅修正なんてこともザラ。

一回白目剥いて倒れそうになったのが、
判型(本のサイズ)間違えて伝えてしまってました。1日で直せますか?
と泣きながら新人の編集者さんに相談されたこと。
次の日印刷所に入れる予定だったのだけど、組み直せたとしても
その後もう一回校正してもらわないと怖すぎるので、
校正もしなきゃだし無理だと伝えたのですが……。

どうしても印刷所の予定がずらせないから、
僕これから出張校正行って徹夜で見るので、なんとかお願いしますううう!
と泣きつかれた時がありました。=私ももちろん徹夜
新人くんの上司には平謝りされましたが、そのクライアントさま、
いつも私に「新人なので色々教えてやってください」って
任せてきたけどどういうことなんでしょうw
わたし編集者じゃないのに他社の人に教えるとか、いまだに意味わからん。
自社の新人教育でいっぱいいっぱいなのに、面倒ミレマセン。

愚痴入りましたが、こんな感じで進んでいきます。
※詳しい用語解説は興味あったら調べてみてくださいね

ちなみに、責了というのは責任校了の略で、
もうこれ直したら印刷所入れてOKだよ。
だけどなにか(修正モレとか)あったらそっちの責任だよ。ってこと。
信用してもらっていて嬉しくはあるけれど、
なんかあった時に「お前が悪い」と言われてしまう恐怖。
信用してるよって甘く囁いて、奈落に落とすなんて……。

(関係性と赤字量にによりけりだけども)
校了にしてほしいと交渉します、わたしは。
1〜2文字なら良いけど、組み直してるのに責了ってどう考えてもおかしい。


◉ 紙媒体は確認事項が大量にある

上記の感じで制作してるので、出校するたびに校正をかけます。
そして修正する。その繰り返しなので悲しいかな見落としは発生します。
赤字が多ければ多いほど、ルールが多ければ多いほど。
これは人間なので仕方ないことですが、完璧にしたいですよね。

しかも仕様変更が多いこともしょっちゅうなので、
近年のは、印刷事故起こしたいのかな?ってくらい進行が危なくて、
気を配ることが多すぎてストレス半端ない。

・赤字がきちんと修正されているか(指定や指示が反映されているか)
・(差し替えがある場合)図版や写真がさしかわっているか

という基本的なことに加え、

・ルビ(振り仮名のこと)が指定の形式になっているか
・ケイ(線のこと)の太さがあっているか
・フォントが合っているか(ウエイトも含め)
・色が合っているか
・塗り足しが足りているか
・ノンブル(ページ数のこと)が正しいか
・文字組の決まり、統一事項が正しいか

などなど、まだたくさんありますが、
ざっと挙げるだけでもこれだけありますし、
正直素人目には違いがひと目ではわからないものも多いです。
最大の難関は校正記号を覚えることでは…?
校正記号ってすごいよなってほんと思うもん。
わたしも覚えるまでは結構苦労したなあ。

校正以外でも、制作側が気をつけなければならないこともたくさんある。
印刷物の制作は決まりゴトが多いです。
データの作りが間違っていると、PDFが書き出せないことも多くて。
そういう時はひたすらトライ&エラー。
データをくまなく見直して「これかな?」ってところを消して出す。
それはもう気が遠くなる作業で、校了前に出ないとなると焦る。
正直な話、デザインするならDTPのこと学んでほしいくらいです(切実)。

そういえば今日、XでCanva論争してるのをチラッとみたけど、
なるほどなあと。
自分でも今度Canvaで1ページ作って印刷してみよう。

もらったデータでただ文字を流して図版や写真置いてけばいいんでしょ?
と思うかもですが、決まりがあるんです。たくさん。

あああ(あああ)あああ
   ↑ここのアキを詰めるか詰めないか

あああ(あああ)あああ
   ↑これは一見詰まって見えますが、半角なのでダメ

あああ…。
   ↑「…」は「……」2つ(偶数)が基本なので、足りなかったら足す

数字や欧文スペースの全角・半角も統一が必要なのですが、
1ケタの場合は全角、2ケタの場合は半角という風に
出版社や担当者によって異なるし、欧文の表記も異なるから
そういう部分のチェックも必要だし、
横組みと縦組みでルールも変わるので覚えること最初は多かった。

全角 1234567890 ABC
半角 1234567890      ABC

全角 How are you?
半角 How are you?

これ以外にもたっくさんあります。
制作してる側ならちょっと見れば違和感で気付くことも
細かすぎると見落とすよねって思います。

わたしはスピード重視で仕事しているので(そうしないと捌けなかった)、
6〜7割の完成度で組んだものをチェックして
赤字を入れてから完成に持ってく方法をとっているので、
見直して気付くことほんっとに多いです。

その分自分が見落としやすいのは「ここ」って気付くことが多いので
それでだんだんミスが減ってスピードもクオリティも上がっていきました。
完璧主義な性格ですが、仕事に関しては完了主義をモットーにしてる。


◉ 誤植や間違いは重大問題

なんせ印刷しちゃったら最後、
数文字なら訂正シールや正誤表をつけることができても
(これはこれで1カ所ずつ人の手で貼るので気が遠くなる。泣)
大きい間違いがあった場合は最悪刷り直し=製本し直し。
製本した本をまたバラして(全刷り直しの場合もある)、
正しいページを印刷してさしかえて、再度製本。
人件費・紙代・インク代が余分にかかってしまうんですよね。

わたしも一度だけ、大きなミスをしてしまったことがあって
刷り直しになったことがあります。

最終チェックが私ではなかったこと、
一緒に組んでた営業さんがど素人だったこと、
クライアントさんがスケジュール管理できなくて
全部私があれこれ指示を出して動かしていたことを分かってくれていて
「あなたのせいではないよ」
「営業を教育できてなくてすまない」と上司が言ってくれたけど
やっぱり担当者は自分だし、全部全部わたしの責任だ……と
当時はすごくすごく落ち込んで、会社で大泣きしてしまったし
逃げちゃいたくて、メンタルが地の果てまで落ちました。

みんな優しくて
「あなたに責任はない」「あの酷い進行では事故も仕方ない」
「あなたがいなければ完成さえできてなかったよ」と言ってくれたけど。
優しければやさしいほど、期待に応えることができなかった自分に
幻滅して辛くなるからいっそ怒ってほしかった。

もうあんな思いは二度としたくないし、してほしくもない。
その時に、校正の重要さに改めて気づかされました。

◉ そもそも印刷・出版業界は大変

ちなみに。この時ヘビーな案件大量に抱えてて、毎日終電始発なのに
わたし以外の人がほぼ新人かつ、手一杯で振りたくても振れない状況。
それをわかっているのにさらに仕事を入れられると言う負のループ。
完全キャパオーバーでストレスと過労から帯状疱疹になってしまって。
熱が38度近くあるしつらいから休みたいのに休めなくて。

「これ以上は無理です」
「他の支店の人に振ってください」

って懇願したのに「あなたなら大丈夫よ〜」といいながら
急ぎの仕事振ってきた上司、今でも恨んでる……。鬼なの?悪魔なの?

1社目のほうが仕事量もっと大変だったけど、
クライアントさんがまともだった分、
大変でも仕事は断然やりがいあったし、楽しかったなあ(遠い目)
↑倒産しましたw 倒産しなかったら居続けてたと思う

すごーく話が逸れて後半愚痴っぽくなってしまいました、
すすすみません!


「デザイン関係の仕事してます」って言うと
華やかだと思うことが業界外の方々は多いみたい。
何回か言われたことあります。
でも全然華やかではないし、むしろ泥臭くて大変。
心身ボロボロになって病む人も多い。
わたしも20代と30代の時、適応障害になってます。

最近ちょっと疲れてしまったのでDTPの比重多めでやってますが、
なんだかんだで相当やる気があるか、根性があるか、
好きじゃないと続かないと思う。

正直、給料は安い(手取り14万くらいとかザラに聞く)。
わたしは運が良いことに1社目がかなり待遇が良くて、
2社目もそれを基準にしてもらってるので
たぶん同僚よりもらってた方だと思う。

1社目は深夜手当・夜食手当・休日手当、
遅くなったらタクシー代出たのでかなり良かったんじゃないかな〜。
深夜手当+夜食手当だけでも7万ちょい出てた。
…徹夜ないのが一番いいんだけどね。


わたしは本業が書籍やムック等のページ物が主なので、
ペラものもやるけど、9:1でページ物が多い。

2社目が学参(学習参考書)を主に取り扱う会社だったので
最近は書籍の比率が少なくなっていたけれど、
やっぱり書籍やムックの仕事が一番好きなので
今年はそちら方面に営業かけて案件取っていけたらいいなと思ってる。
関連してることでいうと、Kindleの制作に興味があるので
なにか1冊、少ないページでもいいから
作り上げられたらいいなあと思ってる(自分のでも、他人のでも)

すぐには無理かもしれないけれど、
ゆくゆくは本業5:複業(副業)5くらいの割合にしたい。
なので!
フリーランス2年目はお仕事改革を行う予定。
これはまた別記事で書きたい。

ばばっと書いた&自分が経験してる範囲でのことだから
違っているところもあるかも…

通りかかった同業者さまへ。
違ってるところがあったら指摘していただけると嬉しいです(人任せ。笑)

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