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赤い公園『Canvas』

昨年祖母が亡くなった。
亡くなる少し前から、私は取り憑かれたように赤い公園というバンドについて調べていた。
音楽番組でアイナ・ジ・エンドが赤い公園の楽曲『Canvas』をカバーしていたのを見たのがきっかけだった。
それを見て、少し前にメンバーが亡くなったことを思い出した。
そのメンバーに向けて歌っていた『Canvas』があまりに美しくて、私はテレビに釘付けになった。

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ぼくらの日々まで春はさらっていくの
やけに眩しくて途方に暮れる
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こんなにも短い言葉で、こんなにも情景が思い浮かぶものだろうか。
聴くたびに胸が苦しくなり、涙ぐむ。

赤い公園の楽曲のほとんどは、メンバーの津野米咲さんが手がけている。
その津野さんが2020年10月に亡くなった。
自ら命を絶ったという。真実はわからない。
けど、もしそうだとしたら、天才と呼ばれた彼女がなぜ自らこの世を去ったのか。
当時とてつもなく気になった。
赤い公園の楽曲をあらためて聴き直し、彼女のインタビュー記事を読み漁った。
もちろん理由はわからなかった。

そんな中、祖母が亡くなった。
夏だったけど、Canvasを聴いてぼろぼろ泣いた。



先日、実家の愛犬が亡くなった。
亡くなった日の朝、通勤電車でCanvasを聴いていた。偶然だった。
車窓からピンクや黄色の花々を眺めながら、その日も私は涙ぐんでいた。

19歳だった。最期の最期まで、生きることを諦めなかったそうだ。
苦しい時そばにいてあげられなくてごめんね。
最期を看取れなくてごめんね。
私は君に出会えて本当に幸せだよ。
だいすきだよ。
君の綺麗な瞳から見るこの世界は、どう見えてたのかな?

悲しかった。けどずっと泣いているわけにもいかないから、頭を切り替えて仕事をした。いつも通りの顔で出勤した。ちゃんとやれてたと思う。
平気な”フリ”をしていたはずなのに、その内本当に平気になっていった。
祖母や愛犬がこの世を去っても、世界はいつも通りまわっていた。


死んでも何も変わらない。生きる意味なんてあるんだろうか。
私が明日死んでももちろん世界は何の問題もなくまわる。
けど、この世を去った祖母も愛犬も、私の心の中で確実に生き続けている。
一緒に過ごした日々が胸の中で温かく残ってる。
多分、それでいいのだ。
祖母も愛犬も、生きていた意味が絶対にある。


津野さんが作った音楽は今日もたくさんの人の中で生き続けている。
津野さんが生きていた意味も、絶対にある。







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