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短歌人

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2019年2月の記事一覧

「短歌人」2019年3月号

泡のようといわれる泡ではあるのだが泡には泡の言い分もあろう
生きものに舌があること食べるとき愛するときに思い至れり
食い逃げは多分しないまま死ねるかな してみたい気も少しするけど
有楽町駅の急すぎる階段に未練は落としてきた気がするの
わたくしが詩を知りしとき美しき噴水は机の上に湧き出る

「短歌人」2019年2月号

悲劇的人生を知って涙してしかして彼は立志伝の中
もしかしてなかなかいいとこいくのでは仏壇詠というジャンルがあれば
私たち蕾がひらくそのときを一緒に見たね楽しかったね
受け容れたときのまどかな切なさを煮染め仕上げて考えている
冬の日に飴玉が固くなるようにあなたの隣で肩をすぼめる

髙橋小径

書き込んだ手帳から

書き込んだ手帳から

2016年6月、仙台文学館の小池光短歌講座に初めて参加した。大げさな表現になるが人生で初めて短歌を人に見せたのだった。好運にも初参加の際に提出した歌、

書き込んだ手帳をひゅっとゴミ箱へ投げ捨てるようなあきらめのある

に比較的良い評を頂き、年度末にはこの歌ともう一首が講座記録集に採用された。とても嬉しかった。
短歌を発表するのは初めてだったが、東日本大震災のころから短い文で生活の記録をしてい

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