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映画『フランス』ーレア・セドゥのまなざし

こんにちは。あるいはこんばんは。おしゃま図書です。
コミケの準備もですが、仏検の勉強が一向に進んでおりません。単語は覚えられないし(老化?)、復習した問題が前と同じところで間違えるし。。。
j'ai besoin de changer d'air.
気分転換が必要!
「そうだ、映画に行こう。フランス映画なら、ほら、勉強にもなるし、ね」
そう、自分に言い聞かせ、「第4回映画批評月間 〜フランス映画の現在をめぐって〜」で上映中の、レア・セドゥ主演『フランス(原題:France)』を観に行ってきたのですが。
これが、ここ数年のわたし史上フランス映画ベスト10をつくるとしたら、間違いなく入れます!というくらい、最高によくて!! 
熱い気持ちの時に感想を書きたいという気持ちと、もう少し頭の中を整理してからまとめたいという相反する気持ちのせめぎ合いの中、だいぶ、noteに書くのが遅れました。

フランス(原題:France)
監督:ブリュノ・デュモン
製作:フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー
上映時間:133分
上映館:ユーロスペース

フランス映画さんへ 最近あまり見てなくてゴメンナサイ

カラックスのことがあれほど好きだったのに、結局まだ『アネット』すら観に行けてない自分に、フランス映画のことを語る資格なんてないんじゃないか、と思う今日この頃。
いい映画が減ってるんじゃない?というのを、自分がフランス映画をみる機会が減った理由にしてたけど、ただ、出会ってなかっただけなんだな。。。
一番映画を観ていた20~30代の時期、とくに、自分の中で大切にしたい映画のことを、「ココロノエイガ」と呼んでいました。主に、別格としてトリュフォーがいて、あとはカラックスとか、いろいろ。
で、先日観たレア・セドゥ主演の『フランス』が、本当によくて。ココロノエイガにしたいと思いました。
こういう映画、多分、ミニシアター全盛期の頃なら、ごろごろ入ってきてたんでしょうけれど、シネコン形式が主流になり、名画座もどんどんなくなってきている映画興行事情からいったら、採算とるの難しいでしょうね。ブリュノ・デュモン監督もカンヌの常連だけれど、だからって興行的に成功するかどうかはわからないですしね。今は、冒険ができにくい世の中ですよね。(だから実話とか原作ベースの作品が増えちゃうのかな)
なので、「フランス映画批評月間」みたいな特集上映って、ほんとに貴重だと思います。本当に、他の作品も観たかったんですけど、もう、こういうスケジュール学生じゃないとこなせないよ。。。

“フランス”とは誰か

ちょっと話題は変わりますが。ヘタリアじゃないけど、国の擬人化って、ヨーロッパではよくありますね。フランスはLa France というだけあって女性形です。で、フランスを象徴するのが「マリアンヌ」です。ドラクロワの描く自由の女神でおなじみですね。

ウジェーヌ・ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』(1830年、ルーヴル美術館所蔵)

で、マリアンヌはさらに、著名人がモデルとなって、そのモデルを模した彫像がつくられるらしいんですけれど、今は2012年からずーっとソフィー・マルソーが務めているんです。ウィキを観れば、カトリーヌ・ドヌーヴやモデルのイネス・ド・ラ・フレサンジュ(今やUNIQLOのコラボアイテムでおなじみですね)なんかも、マリアンヌだったことがわかります。

なんか、映画『フランス』を観たとき、レア・セドゥ扮するジャーナリスト、その名も“フランス”(看板番組をもつ人気キャスターでもある)であり、ある意味、国そのもののようでした。国を演じるってすごい。次のマリアンヌはレア・セドゥでいいんじゃない?と思いましたよ。

みること/みられること

別の日に、ゴダールの追悼上映で、久しぶりに『気狂いピエロ』をみたのですが、アンナ・カリーナがこちらをみる眼差しに、レアを思い出しました。ジャン=ポール・ベルモンドがカメラ目線で語ったり、オープンカーから“観客”の方を振り返るアンナ・カリーナ。物語の中に入り込むのを拒むような、「これはフィクションです」と何度も言われているような気持ちになる。
ベルモンドの、アンナ・カリーナの、こちらを見つめ返す視線に、ドキッとしたことを思い出しました。

演出なのか。リアルなのか。嘘か。真実か。
“フランス”は“勇敢”なジャーナリストであり、常に撮れ高を考えて番組を支える人気キャスターでもある。
ハイブランドの服を着て、マクロン大統領の会見で最初の質問者に選ばれてキャッキャしている。危険な戦闘地域で自らレポートするのも、自ら“演出”し、常に自分の映りを気にする始末。
ライバルと思しき女性キャスターに「自分が出過ぎでは?」と言われても気にしない。
常に、美しく、聡明で、人気者の“フランス”。
そんな彼女にも試練が訪れ、やがてパブリックなイメージの“フランス”と本来の自分との間で苦しんでいきます。その姿をパパラッチに撮られ、タブロイド紙にあることないこと書かれるのと、彼女が“演出”してレポートした戦地の状況に、何か違いはあるのか。メディアの役割ってなんでしょうね、と考えさせられます。

レアの“フランス”がカメラに向ける視線と、ゴダール映画のアンナ・カリーナのまなざしを重ねるのは、間違っているかもしれない。でも、うまくいえないけれど、まるでこちらがのぞき見しているような気分になって、ドキッとさせられたんですよね。とくに、きったない顔でくしゃくしゃになって泣くレアの女優魂に圧倒されました。

レアもいいけど、バンジャマンもね

キャスターの役ということもあって、あっちのニュース番組風のシーンがたくさんあるんだけれど、キャスター役だからか、比較的台詞も聞き取りやすい気がしました。

フランスが、夫と口論になり、あんまり稼いでない夫に対して、
J'ai gagné cinq fois plus que toi(私はあなたの5倍稼いでる!)
というのは聞き取れたよ! 他にも聞き取れたところはあるけれど、この台詞が一番インパクトがあった。まぁ、仏検のテストには出てこないわね。

あと、夫役が、バンジャマン・ビオレなのも個人的にはよかった。彼の音楽が結構好きだったので!
昔、ジョニデと別れた後のヴァネッサ・パラディと噂になったことありましたね。(情報が古い?)

名画座か、日仏学院でもう一度観れたらいいなぁ。
サブスクにはなるかな…ならないかな。
いやぁ、久しぶりに、フランス映画を好きでよかったと思いました。

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