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うつ病患者の就職活動

4月から大学3年生になります。病院実習が本格化する一方、秋から冬にかけて徐々に就職活動が始まります。

先日、97歳の祖父に聞かれました。大学を卒業したらどうするのかと。

わからない、と答えました。

うつ病という不確定要素を抱えているせいで、1年後、2年後に自分がどうなっているのか予想がつきません。なにより、持病のある30代の学生を採用してくれる組織(病院・施設・会社)なんてこの世に存在しないと思っています。もしわたしが採用担当者だったら、精神疾患のある学生は採りません。若くて健康で活きのいい看護学生は掃いて捨てるほどいます。彼らを差し置いて、わざわざわたしみたいな傷物を採用するメリットはないからです。

主治医は精神科を推すけれど

先週、クリニックを受診したときに主治医にも就職相談をしてみました。オープン就職がいいのか、クローズ就職にすべきか? 夜勤はできそうか? 急性期病棟ではなく慢性期病棟のほうがいいのか?

一般的な看護学生は学校を卒業したら規模の大きな病院で経験を積むことが多いけれど、それは極力避けたほうがいい、と言われました。夜勤は生活リズムが崩れるので、うつ病の経過を考えるとあまりおすすめできない。急性期よりは慢性期や療養病床のほうが業務の負担やプレッシャーが少ないだろう。そして、もちろん病気のことをオープンにして就職すること。

引っかかったのは、主治医が精神科で働くことを提案してきたことです。精神科なら精神疾患に対して理解が得られやすいので、わたしの持病についても少しは配慮してもらえるかもしれない。それに、精神科の慢性期病棟だったら病状が急変する患者さんが少ないので負担は最小限だし、時間外勤務もほとんどないからと。

精神科が他の診療科に比べて残業が少ない傾向にある、ということはわたしも知っています。でも(これは主治医には言いませんでしたが )、わたしは何があっても絶対に精神科では働きたくないと思っています。

精神科で働きたくない理由

精神科で働きたくない理由。それは、看護師として精神科医の指示に従うことができそうもないからです。

精神科には「行動制限」があります。病気や障害のせいで的確に判断したり行動したりできない状態の患者さんに対して、安全確保を目的に行われます。具体的には、身体拘束と隔離(保護室への入室)があります。

例えば、認知症の患者さんが自分でチューブを抜いてしまったり、ベッドから転落したりしてけがをしないように、患者さんの体や手足をベルトでベッドに縛りつける。統合失調症の患者さんが昼夜を問わず病室のドアや窓を叩いたり、スタッフに暴力をふるったりするのを防止するために、個室に閉じ込めて外から鍵をかける。

これらはいずれも、わたし自身が精神科病棟に医療保護入院したときに実際に目にした光景です。あの光景は一生忘れないと思います。全身をベッドに縛りつけられた患者さんが、ベッドごと体をガタガタ震わせてもがいていた光景。部屋に監禁された患者さんが「おーーーい。誰かいませんかぁぁぁーーー。ここから出してくれぇぇぇーーー」と叫びながら1日中ドアを叩いて助けを求めていた光景。縛られたり閉じ込められたりした本人たちのストレスはさることながら、それを間近で見聞きしていたこちらも心に大きなダメージを受けました。

一度、わたしの受け持ちではない看護師が誤ってわたしを病室に閉じ込めたことがあります。鍵を閉められた瞬間、心の芯がひやっと冷えるような感覚を覚えました。ただですら所持品をひとつ残らず(文庫本や生理用ナプキンといった明らかに害のないものまで)とりあげられ、週に2回しか入浴を許されないような環境におかれていたところに、不意打ちの監禁。幸い1時間ほどして回診に来た医師が看護師のミスに気づき、鍵を開けてくれましたが。

身体拘束や隔離の光景は、わたしにトラウマを残しました。人間としての自尊心が剥奪されました。人間以下の存在におとしめられ、もう二度とはい上がれないという無力感を抱かせました。精神医療に対する不信感が芽生えました。

だから、医師が看護師のわたしに身体拘束や隔離の指示を出したとしても、わたしはその指示に従いません。従えません。あれは人が人に対してやっていい行為ではない。病気や障害を理由に人を縛りつけたり監禁したりしてはいけない。おかしいのは患者じゃない。おかしいのは、しょうがねぇなという表情を浮かべて平気で人間を縛りつけ閉じ込める医師や看護師です。あの行為を平然と「治療」や「看護」と呼ぶ医療者です。狂っているのはあんたたちのほうだ。恥を知れ、と思います。

さて…

そんなこんなでわたしの前途は視界不良です。お先真っ暗、と自分では思っています。いったいどうなることやら。

このマガジンでは、うつ病患者で看護学生のわたしが就職活動で見たり、聞いたり、考えたりしたことをつらつらと(ときに苛烈に)綴っていこうと思います。

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