去勢手術
するるーんと抜けていたドアの隙間で一度つっかかるようになる頃に、発情期がやってくる。
部屋の中をアオーンアオーンと鳴きながら彷徨い歩きスプレーをした。その頃、部屋のあちこちからあの独特な匂いが漂い、当時営業職だった私のスーツからも仕事中に匂ってきた事があった程だ。このままではマズいと思っていたけれど、いざ去勢を!と思うとそれに伴うリスクばかりに気を取られなかなか踏ん切りがつかずにいたが、ケージを貸してくれた友人からのアドバイスもあって去勢手術に踏み切る。
ジョージを拾った時にお世話になった動物病院で手術をしてもらった。
手術前に麻酔の危険性などの説明を受けて同意書にサインをする。一泊入院してもいいけど、心配だったら迎えに来てもいいよと言われて、指定された時間に迎えに行く。
ジョージはぐったりとケージの中で横たわっておしっこを漏らしていた。爪も短く切ってくれていたのは良かったのだけれど、そのうち一本の爪が切られすぎて血が出ていたのが駄目押しのようで何だかとてもショックだった。胸がぐっと苦しくなった。きっと子ども達はもっとぐっとなっていたかもしれない。ただ無事手術が終わって麻酔から醒めてくれた事を喜んだ。
よく覚えていないけれど会計は20000円くらいだったと思う。
連れ帰るに当たって先生から注意事項を聞き、いつも以上に慎重にキャリーを家へと運ぶ。術後の経過も順調ですぐにいつもの元気な様子を取り戻し改めて胸を撫で下ろした。
元々、野良猫母さんに育たないと思って置いていかれただけあって、ジョージはちょっと運動神経もイマイチでよじ登った壁から降りられなくなったり、棚や窓枠から落ちたりした。15年経った今でさえシャーと言った事は一度も無い、いまでこそ大変穏やかな猫さんだが、当時は大変ビビりな猫といった印象だった。
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