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東日本大震災から10年:何も考えずに奈良クラブを鼓舞しに行ったら、まだまだ心寄せなきゃいけないことが続いていることを意識することになった話 - (コバルトーレ女川がJFLにいたことのオッサン的意味)

あの震災から10年。2011年3月11日。揺れが収まってから普段は25分の道を6時間かかって帰った自宅は停電。電気の復旧が真夜中からそろそろ早朝と呼んでもいいという時間。そこからテレビに映し出されたものはとても現実とは思えないことの連続。あれから7年が過ぎたころにサッカーをたまたま見に行ったことで初めていまだに震災の影響を受けた生活を余儀なくされている現実を見、行き帰りにちょっと怖い思いをした1日の話です。

コバルトーレ女川

2018年の1年だけでしたがJFLに「コバルトーレ女川」というチームが所属していました。もちろん、女川がどのあたりにあるのかは知ってはいましたので、震災後、あの数年でJFLに昇格してきたことの凄いことはいろいろ目にし耳にし、なんとなく自分でも想像はしていました。が、個人的告白をするとJFLに昇格しても正直関心を寄せていたサッカークラブではありませんでした。

関東を飛び出して石巻へ応援に行こうと決断する奈良クラブの事情

私が遠くからゆるーく応援しているクラブ「奈良クラブ」は2018年6月6日(水)天皇杯2回戦、名古屋市瑞穂陸上競技場で名古屋グランパスと対戦。延長の死闘の末、引き分けに持ち込み、その後のPK戦に勝利し、3回戦へ進むことになった。それを仕事中からそのつどそわそわ確認しながら、仕事終わりのスマホで最終結果を目にし、あのグランパスを撃破の報に電車内でニカニカほくそ笑んでる気味の悪いオッサンがいたと思います。

後半の 金久保 彩 選手の同点ゴール。これぞ 金久保 彩!!!というゴール。この年のあの距離の金久保彩選手と山田晃平選手はホントヤバかった。ところが……。

「次回戦進出チームの決定に直接影響を及ぼす担当審判の競技規則の適用ミスにより特例措置としてPK方式のやり直しを実施を6月28日(木)に実施」。
読むのも途中で嫌になるほどの長さ。まあミスはあるから仕方ないにしろ、試合後に双方がその結果に納得して競技場を去ったはずなのに、やり直し。それも特例措置。判断ミスではなく適用ミスとか、PK自体は試合ではないとか、いろいろあるのでしょうけど。

個人的な考えとしては天皇杯という性格上、次の対戦相手を決める必要があるのだから、PK戦を含めて試合であって、やはり「プレーに関する事実についての審判の決定は最終である」にたちかえるとどうなんでしょうねぇ。判断ではなく適用を間違えたからとやり直しの理由になりましたが、フェイントとして判断してやり直しを適用したことを含めて「プレーに関する事実についての審判の決定」に他ならないのでは?。と個人的にはいまだに心穏やかではない日本サッカー協会による結論です。

そんなこの件に関しては不遇といえるサッカークラブ「奈良クラブ」の次の試合は、6月10日に行われたアウェイ青森でのラインメール青森との対戦。結果は0-2で敗戦。

そして青森はさすがに遠すぎたが、石巻なら行ける。天皇杯でPKのやり直しを命じられた選手・チームを鼓舞しようといてもたってもいられなくなり、奈良クラブ次の試合の地、石巻に向けて車を走らせた。2018年6月17日ファーストステージ第13節。夜明けとともに常磐道を目指します。

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常磐道 中郷SA のモニュメントに誰かが載せた花かざり。こういうのカメラに残しがちです。

いわきを過ぎて周波数に合っていないままのラジオが捕らえる電波

数年前までヘビィなラジオリスナー、それもニッポン放送一択な自分が車内で聞くのもニッポン放送。そしてラジオのチャンネルをプリセットしてないまま使用しているために局を変えるのがメンドーでほぼニッポン放送つけっぱなし。ニッポン放送もさすがに常磐道の日立あたりからは電波がまったく届かなくなります。そうしていわきを過ぎてしばらくするころから無音だったラジオが時々、短い雑音を車内に鳴らすようになる。これが時々けっこうな強さでスピーカーを鳴らす。たまに入る雑音を車内で聞きながら走らせる高速の脇には、この場所の放射能の数値を示すモニタリングポスト。たぶんこのあたりを飛び交う放射線の影響かと。FUKUSHIMAの影響をつけっぱなしのラジオから感じるとは想像もしていなかった。放射線が飛んでいるからといってすぐに健康に何かあるわけでもないのですが、自分の体の中をそういったものが通過しているかもしれないと想像すると、さすがに少し怖い思いになりました。

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(モニタリングポストの画像は、WEB上のフリー素材より借用)

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南相馬鹿島SAはさすが相馬野馬追の地

石巻フットボール場の素晴らしい雰囲気

常磐道から仙台東部道路を経て、試合会場の石巻フットボール場には11時前に到着。

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初めて訪れるスタジアム・競技場はぐるっとひと回りしたくなる人は私だけではないと思うのですが、ここも初めて訪れたのでひと回りしながら、コンパクトながら"当時の"町田の天空の城、野津田にはなかったカラーの掲示板!!!!があったり、スタジアムの眼前に芝生のサッカーフィールドより大きい広場があってラグビーのクラブチームが試合をやっていたり、石巻の公園の雰囲気を楽しんでいた。そうそう、旧、霞ヶ丘競技場、一般的な呼びかたでは国立競技場のバックスタンド最上段にあった聖火台が移設されて置いてあったことには驚き。つまりは2013年3月9日の大分トリニータ戦で川崎フロンターレのマスコット ふろん太くん さんが火を灯したあの聖火台だ。サッカーフィールドとその周辺はいつもそうですが、ここも心が解放される素晴らしい雰囲気の場所です。

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ただ残念だったのが曇天。

駐車場の向こうに並ぶ仮設住宅

しかし選手バスが乗ってたと思われるバスが広い駐車場を移動しているときに気がついた。あの白いフェンスの先の建物は仮設の住宅???。それにしてもいまだに多くの数。もう住んでいる人もそれほど多くないかもしれないけど、いまだに……。初めて目にする震災の仮設住宅。まさかサッカー観戦に足を運んでこれだけ近接して震災の影響を感じる光景を見るとは。想像すらしていなかった。変な話ですが、自分があの日の翌朝からテレビで見たことは、ここを訪れたことによってオッサンの中でよりリアルな現実となって改めて強く心に刻まれることになりました。

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往復のラジオ。試合会場の公園内の仮設住宅。奈良のサッカークラブのことばかりを思って行動した結果、思いもしなかった震災の影響を感じる体験となった。

試合 JFL 1st Stage Sec.13 コバルトーレ女川 vs. 奈良クラブ

ここを訪れた目的、肝心の試合。試合前に奈良クラブの活動によって寄せられた支援によって送られるビブスの贈呈式が試合前に行われ、ならでんフィールドでの活動の様子もビジョンに映された。

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試合に先立って行われたビブス贈呈式のようす

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そして試合直前の観客席(ただし芝生で座り放題)でオッサンの座ったそばにとまるアブ。オッサンが観客席で昆虫などと出会う試合は、実は推しチームの不敗伝説が続いている。2017年のフロンターレのリーグ戦、アウェイ埼スタ。2019年のルヴァン決勝も、この時にはオッサンの肘でトンボがしばし休んでいった。等々。
そして結果は4-0。まだ家まで車を運転して帰るというけっこうな仕事が残るなか、試合終わりの時点でめちゃめちゃ満足の日帰り観戦旅となってしまった。

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Postscript:

試合後にコバルトーレ女川の改めて底力を感じることに。それは「蒲鉾本舗 高政」さんという存在。帰りがけに購入した袋詰めの蒲鉾のセット。帰宅後に食べてめちゃめちゃおいしかったのはもちろん、驚いたのはその量。えっ!採算度外視???。そして試合終わりに帰路につくお客さんに対して最後まで物販ブースを開いているスポンサーがあるコバルトーレ女川。そういうスポンサー・クラブを取り巻く人たちを生む女川という土地。それも数年前に震災があったにもかかわらず……。再びのJFL昇格を願わずにいられない。そして2021年、コバルトーレ女川は「高政」さんのロゴを胸につけている。表立ってはいないが密かに強く応援している。