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私を包む暁

泣きすぎて眠れない夜があった。
自暴自棄になってぎゅっと目を閉じた夜があった。
自身のなさに足がすくむ朝があった。
風の強さに、心まで吹き飛んでしまいそうな朝があった。

どんな日も私を包んでくれたのは、マンションの私の部屋を出て、渡り廊下から見える街の景色。

少しずつ動きを止める街、家路を急ぐ人でにぎわう街、のんびりした空気に満たされた街、お祭りの紅が灯された街。

そして、ゆっくりと一日を始めだした、静かな活気を内包する暁の街。

早朝に家を出なければならない、とても大きな大切なことが待ち受けている日、私を包んだ暁の街の景色は、今でも目に焼き付いている。

守られている部屋から飛び出した瞬間に出迎えてくれ、帰ってきた私を優しく迎えてくれるこの街の景色は、私の心を一瞬でつかみ、包む。優しい抱擁のように。

今日のあなたに、幸多からんことを。
帰ってくるあなたに、あたたかなねぎらいを。



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