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知ってるようで知らない「食物繊維」


はじめに

前回、「ペットフードの都市伝説」でビートパルプにまつわる噂をとりあげました。
その記事の中で書いたように、ビートパルプは「食物繊維」としてペットフードに利用されています。

食物繊維と聞くと、どんなイメージを持ちますか?

ダイエットによさそう?
お腹の調子を整える?

どちらも正解ですが、食物繊維の働きはそれだけではありません。
今回は「食物繊維」について詳しく解説していきます。


糖質と食物繊維

まず、食物繊維とはどんなものでしょうか。

この講座の第17回「栄養素の基礎 その1 タンパク質、脂質、炭水化物」の炭水化物のところで少し触れましたが、炭水化物のうち、消化酵素で消化できないものが「食物繊維」です。
(第17回の記事はこちら

おさらいをかねて、食物繊維がどんなものか、もう少し説明しますね。

炭水化物は糖からできている成分の総称で、つながっている糖の数によって、単糖類、二糖類、多糖類などに分類されます。
糖の数による分類でいうと、食物繊維は、いくつかの糖がつながっている「少糖類」(いわゆる「オリゴ糖」)、あるいは、たくさんの糖がつながっている「多糖類」に分解されます。

たとえば、「セルロース」は、植物の細胞を取り囲んでいる細胞壁(さいぼうへき)に多く含まれる食物繊維です。
このセルロースは、グルコース(ブドウ糖)がたくさんつながってできています。

ところで、お米などに多く含まれている「デンプン」もグルコースがたくさんつながってできていますが、こちらは食物繊維ではなく糖質です。

同じようにグルコースがたくさんつながってできていても、セルロースは食物繊維で、デンプンは糖質です。
ということは、セルロースは消化酵素で消化することはできませんが、デンプンは消化酵素で消化できるということですね。

何が違うのでしょうか?

それは、セルロースを作っているグルコースと、デンプンを作っているグルコースの構造が少し違っていて、そのせいでグルコース同士の結合のしかたが違っているからです。
グルコース同士の結合のしかたが違うと、それを切断するために別々の酵素が必要になります。セルロースを分解する酵素は「セルラーゼ」で、デンプンを分解する酵素は「アミラーゼ」です。

アミラーゼではセルロースを分解できません

哺乳類はアミラーゼを合成することはできますが、セルラーゼを合成することができません。
そのため、デンプンは消化できますが、セルロースを分解することができないんですね。

それで、デンプンは糖類セルロースは食物繊維ということになります。

(第22回「ネコやイヌに穀物を食べさせてはいけない!? 」はこちら

なお以前は、食物繊維は「消化酵素で消化できない、植物由来の多糖類」と定義されていましたが、いまは植物由来に限らず「消化酵素で消化できない多糖類」と定義されています。
つまり、動物由来の食物繊維もあるということですね。

「動物由来の食物繊維??」 と思われたかもしれません。

じつは、カニやエビなどの甲殻類の殻なんかに含まれる「キチン」が動物由来の食物繊維です。(キチンを分解すると「キトサン」になります。)
キチンも「N-アセチルグルコサミン」という糖がたくさんつながってできている多糖類で、消化酵素では消化できないため、食物繊維のひとつに分類されます。

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