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わたしのすきなひと

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明るくて暗くて明るい日記です。
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2018年4月の記事一覧

キノコな彼女

キノコな彼女

鼻から空気を吸ってみたら、紙のにおいがした。
本屋にいるのだった。
きっと長い間このにおいに包まれていただろうに、まさかはじめて息をしたのか。

なにか悪さでもした後のように、わたしはそっと本を棚に戻して辺りをきょろきょろ見回した。
入ってきたときには、となりに姉がいたはずだった。

わたしを見下ろすようにそびえ立つ本棚たちの間を、ひとつひとつ覗いてみる。
気がつくとわくわくしていた、子どものころ

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命の範囲はどこからどこまでか

大切なものを増やすのが本当に苦手だ。
わたしはとても臆病だ。

自分で「恋人」や「友達」と定めたものに対してどう向き合えばいいのかわからない。

優先順位を決めることができず、そのしゅんかん、いちばんちかくにあるものしか大切にできないときが多くある。

遠くで悲しんでいる人に、本当の意味で寄り添えない。
顔が見えない人に思いを馳せることができない。

目の前で涙を流している見知らぬ人に、心を持って

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