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人格形成に影響を与えたかもしれない作品の続編発表とその思い出

読者の中に人格の形成や、人生のターニングポイントになる作品に出会ったことがある人はどれくらいいるだろうか。

自分にはその作品が幾つかある。

その中で最も好きな作品がアニメ「フリクリ」である。

フリクリは2000年に全6巻のOVA作品として発売されてアニメで、エヴァンゲリオンを制作したGAINAXと攻殻機動隊S.A.Cなどで有名なProduction I.Gの共同作品である。監督はシン・エヴァンゲリオン等で有名な鶴巻和哉さん。

自分がこの作品に出会ったのは発売当初ではなく、当時高校3年生だった2005年である。

当時、自分はアニメをあまり見ていなかった。どちらかと言えば幼少期からアニメより漫画を好んでいて、中学の頃は仲の良い友人と影で漫画を書いているような人物であった。

「影で」というのは、漫画やアニメは今ほど市民権を得ておらず、オタク気質が学校でバレてしまうと気持ち悪いというレッテルを貼られる。思春期にそれはちょーツラい。なので影で隠れて趣味を謳歌していたのである。最近の10代が羨ましい限りだ。

当時の自分はオタクというより、サブカル寄りの人間であった。中学生の頃に姉の影響でインディーズロック(SNAIL RAMPやHi Standardなど)、高校になるとSUM41を始めとする洋物アーティストに出会い、KISS、AEROSMITH、Motley Crue、Guns & Roses、X JAPAN、Blankey Jet City、ZIGGYなど周りの友人が誰も聞いていないようなアーティストがどんどん好きになっていった。

つまりアニメや漫画よりロックミュージシャンに憧れる少年になっていた。

アニメや漫画を見ていたがオタクと呼ぶには程遠い嗜む程度のものが多かった。当時、オタクとサブカルには埋めようのない溝のようなものが有り、どちらにもなりきれない自分は立ち位置に戸惑うことがよくあった。

そんなある日ラジオを聞いていた少年は、とあるアーティストに出会った。

the Pillows

それまでハードロックを好んでいた自分にとって、ハードロックとは違う魅力を楽曲に感じその歌詞とメロディが心に刺さった。

当時の彼らは今ほど認知度も高くなく、同業者に愛されるアーティスト的な立ち位置であった思い出がある。

サブカル人間にとって、「自分は他人とは違う」という気にさせてくれる作品やアーティストは大好物だ。なぜなら彼らを知っているだけで、「自分は特別な人間」「人とは違うなにか」であると思い込ませてくれる。いわゆる厨二病を患っていた。

足早に彼らのCDを借りに近所のTSUTAYAに向かった。5枚1000円でレンタルできたので、全て彼らのCDを選んだ。その中にイラストがジャケットの作品があった。

出典:http://u0u0.net/J9C3

CDのライナーノーツにはフリクリいうアニメのサウンドトラックとして、pillowsが楽曲提供したと記されていた。このときはまだ特にフリクリに関心は持っていなかったが、CDを聞いたらちょーかっこいい。超絶悶絶。ベンジーにグレッチで後頭部を殴られたような衝撃である。

こんなかっこいい楽曲が使われているアニメってどんな作品なんだと、翌日またTSUTAYAに行った。お得意さんやろう。

DVD全6巻がアニメコーナーの片隅に陳列されていた。

ジャケットから漂ってくるオシャレ感がすごかった。サブカル民の胸を踊らせるジャケットだ。

出典:http://u0u0.net/J9C8

胸を踊らせて家に帰り作品を視聴した。

??

アイドントアンダスタンド。

わけがわからない。

ストーリーが視聴者丸投げ型で阿呆なロックキッズには皆目理解できない。

阿呆にもわかりやすいアニメを作ってくれやい!と思ったこともあった。

1度目の視聴で理解できたのは、ニナモリが最高にキュートだと言うことくらいだ。

話はよくわからんが、作中での登場人物の会話より大音量で流れるpillowsの楽曲は雰囲気を壊すことなく一つのミュージックビデオのような印象を受けた。

全6巻1話30分のpillowsミュージックビデオだ。

これはそういうものだと、勝手に納得した。言い聞かせるのだ。TSUTAYAのレンタル期限は旧作1週間である。返却までに何度か見返した。1回目に理解できなかったことが、回数を重ねるごとに理解できたような気がした。最初わけのわからなかった作品を理解できるようになった自分すごい。という感覚に陥る。救えない厨二病だ。

アニメの主人公である小学生のナオ太は、兄であるタスクの恋人(留学先で新しい恋人を作ってしまった事で事実上失恋)である高校生のマミ美に恋をしている。

すごいことなんてない ただ あたりまえのことしか おこらない

と、当たり前の日常に辟易しつつ、普通でない事は起こらないのだと半ば諦観し、普通であることを望んでいる。同級生やマミ美の言動を「子供っぽい」と揶揄しては自分は大人だと粋がる少年ナオ太。ここが厨二病の自分とシンクロしていたのかもしれない。「子供っぽい」友達の行動を格好をつけて仲間に入らないがゆえに、楽しい機会を逃すタイプである。素直になれない厨二病のそれだ。口では色々言うくせにバッターボックスに立ってバットを振らないナオ太。まさに当時の自分である。

ヒロインのハル子はナオ太にこう告げている

空に向かって打ち返してみ。真のスラッガーは現実のボールを打つ前に、まず心の中でアーチを放っているのさ

自分はスクールカーストの上位になれないタイプだった。小学生の時にいじめられた経験もある。周りに馴染むためには好きでもないテレビや音楽を聞かなくてはだめなのかと挑戦したこともあった。

しかし、彼女のセリフは周りの視線や陰口を気にしていたらボールを打つこともできない。周りに振り回されるなと言っている気がした。

そこからの自分は好きなものだけを、好きでいられるようになった。

他人と違うから特別だという感情とは違う。何かが吹っ切れた。

吹っ切れた人間は強い。行動力もついた。海外に留学もした。編集者からエンジニアに転職もした。転職はすでに4回経験済みである。

フリクリという作品を通して人生を変えられたというわけではない。

でも、思春期だった当時の人格形成の一部となったとは感じる。

そんな「フリクリ」が今年続編が放映されることとなった。放映のティザーサイトムービーを拝見し、ワクワクな思いがこみ上げてきたのでこの記事を書いた。少しでもpilllowsとフリクリに興味が湧いた方は視聴してみてほしい。

頭を空っぽにして見ても楽しい作品なので。


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