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物語【絶望への秒読み】番外編①

僕達がシェルターに入ってから2週間が経った。「何事もなければドアを開ける。」と言っていた父さんからの連絡は今だにない。


最初の1週間はさすがに不安で眠れなかったが、今はさすがに寝ないと身体がもたないと感じている。とにかく夏陽とパール、一緒にドアが開く日まで生き抜かないと。。。


今日もシェルターに用意されている非常食を食べて、水を飲む。いったい何日分くらいあるのだろう。尽きたらどうなるのか、なるべく考えないようにしている。


いろいろ考え疲れてくると眠くなる。そんな時、決まって見る夢があった。


僕が小学2年生の時、夏陽はこの町に引っ越してきた。ある日、おじさんに手を引かれて僕の家に遊びにきた。


まったく話そうとしない夏陽に「しゃべれないの?」と僕が言うと、父さんに怒られる。僕は泣きながらおばあちゃんのところへ行く。


そんな僕を見て夏陽は笑っている。


お母さんが死んでしまったショックで、表情をなくしてしまった夏陽が、久しぶりに笑ったとおじさんは喜び涙ぐんでいる。それを見守る父さんと母さん、僕を慰めるおばあちゃん。


僕達6人はその時から家族みたいに過ごしてきた。


父さんと夏陽の父親が同じ職場だったため、伊賀咲家は我が家に頻繁に遊びに来ていた。「ここに遊びに来ると夏陽が元気になる。」夏陽の父親がそんなことを言って喜んでいた。


そうそう。パールが我が家に来たのも、この頃だった。


外の状況は分からず不安だけど、好きな人と過ごせる時間は、僕にとってかけがえのないものとなっている。


物語【絶望への秒読み】番外編①   ー完ー



こちらは本編。

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