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物語【絶望への秒読み】番外編②

僕が小学2年生の時に伊賀咲いがさき家はこの町に引っ越して来た。伊賀咲夏陽いがさき なつひに出会ったのはその時だ。


第一印象はしゃべらない暗い感じの女の子だった。夏陽とは同じクラスだったが、当初不登校になっていて、学校には来ていなかった。


僕は時々、夏陽の家に様子を見に行っていた。


夏陽ー!遊ぼー!


僕が夏陽の家の前で叫ぶと、おじさんがいつも謝りにくる。「太洋たいよう君ごめん。今日も調子が悪いみたいなんだ。。。。」僕は仕方なく帰る。


父さんには夏陽と仲良くしろと言われていた。


父さん。夏陽、全然家から出てこないんだ。


「まぁ、人にはいろいろ事情ってもんがあるからな。気長に付き合ってやれ。」父さんはそう言ったが、僕は半ば諦めかけていた。


夏陽が不登校のまま一年が過ぎたある日、夏陽が行方不明になる事件が起きた。夏陽の父親から連絡がきて父さんと母さんは探しに行った。僕はおばあちゃんと留守番をするように言われたが、心配になって家を抜け出した。


必死で夏陽を探してみたが、見当たらない。もうすぐ日が暮れる、僕は半泣きになりながら諦めて帰ろうかと思った矢先、何処からか子犬の鳴き声がした。


鳴き声のする方に行ってみると、子犬と遊んでいる夏陽の姿が見えた。


夏陽ー!何してんだよ!みんな心配してるんだぞー!


「この子」


何?


「この子、迷子みたい。。」


えっ?


「この子、連れて帰る。」


お前んち、犬飼えるのかよ。


「。。。。。」


。。。とりあえず帰るぞ!


「嫌だ!連れて行く!」夏陽は意外と頑固だった。


はぁ。。。。仕方ないなー。


僕は夏陽と子犬を連れて家に帰った。


家に戻ると父さんと母さん、おばあちゃん、夏陽の父親が居た。


「太洋!もう少しで警察に電話する所だったんだぞ!」父さんがいつもの大きな声で言った。


夏陽見つけたよ。。。


「心配したんだから。。。。」と母さんが泣きそうな顔で言った。


「まぁまぁ、無事だったんだから、いいんじゃないかね。」おばあちゃんは相変わらず優しい。


「夏陽!何処へ行ってたんだ!」いつもは温厚なおじさんも心配してたからか、少し声を荒げて言った。


「で、その子犬は?」父さんが訪ねてくる。


夏陽が連れて帰るって効かないから。


「夏陽、うちはアパートだから犬は飼えないって前に言っただろ。。。。」


「。。。。」夏陽は今にも泣き出しそうだ。


父さん!家で飼おうよ!ねぇ!いいだろう!


いつもしゃべらない夏陽が、初めて自分の意思表示をした。僕は子供ながらに、きっかけがあれば夏陽が変われるんじゃないかと感じていた。


「ちゃんと世話できるのか?」


ちゃんと面倒見るよ!なっ!夏陽!


夏陽も頷いている。


「。。。しょーがねーな。分かった。」


夏陽が見つけた子犬は、結局我が家で飼うことになった。


僕達はこの子犬に"パール"と名付けた。




物語【絶望への秒読み】番外編②ー完ー


番外編①

こちらは本編です。

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