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【企業インタビュー】企業のコスト削減がSDGs促進につながる持続可能な事業モデル 株式会社プレミアムウォーターホールディングスの事例

脱炭素化社会の推進に向けて、企業はさまざまな取り組みを始めています。

しかし「何をどうすればいいのか」「他の企業はどんなことをしているのか」と考えあぐねている人は多い様子。

パーセフォニジャパンは、先進的に脱炭素化社会に向けた取り組みを進めている企業様にスポットを当て、みなさまが参考にできる実践法をお聞きしています。第8回となる今回は、パーセフォニのお客様である株式会社プレミアムウォーターホールディングス様へのインタビューです。

迷ったり悩んでいる方々の参考になりますように。

【用語解説】カーボンニュートラルとは、発生した炭素(CO2が対象)排出量と除去量を差し引きゼロにする状態です。詳しくは過去の記事【秒速理解】脱炭素社会とは?なぜ目指すのか?達成の第一歩とは?で解説しています。

■インタビューした企業様
株式会社プレミアムウォーターホールディングス
■お話を伺った方々
株式会社プレミアムウォーターホールディングス 清水 利昭様、金田 優美様、髙島 眞子​​様

企業努力によるコスト削減が、そのままSDGs推進に繋がる事業


――貴社の事業内容について、改めて教えてください。

当社は、自社ブランド「PREMIUM WATER」を中心に、ミネラルウォーターの宅配事業を実施しています。全国にある8つの採水地のうち、3つを自社で運営しており、お客様に対して日本の豊かな天然水を提供する、宅配水業界のリーディングカンパニーを目指しています。

天然水に加え、現在では浄水器型サーバーの提供も開始しました。これは、ご家庭の水道水をろ過して利用するものなので、ボトル交換の必要もなく、容量を気にせずにお使いいただけます。

――天然水を宅配してくれるプランもあれば、自宅の水道水をろ過するサーバーの提供をするプランもあるのですね。御社は、意外にも法人のお客様より個人のお客様が多いとうかがいました。

はい。ほとんどが個人のお客様で、法人のお客様はごく一部です。個人のお客様で水質にこだわりのある方などは天然水のプラン、法人のお客様でコスト削減と手軽さを求める場合にはろ過プランを選ばれる方が多い印象です。

(株式会社プレミアムウォーターホールディングス 清水 利昭氏)

ーー脱炭素化社会に向けて、御社ではどのような取り組みをされていますか?

当社の天然水宅配事業は、事業そのものがそもそもSDGsやカーボンニュートラルを目指す社会に適した内容だと考えています。私たちの事業は、地域の地下水源を採水し、家庭や企業に宅配することで成り立っています。ただし、配送するにあたってコストの発生や、CO2の排出から免れないことが課題です。この配送距離を短くすればするほどにCO2の削減につながります。また、プラスチック材料を減らせばコストの削減にもつながります。つまり、企業努力をすれば、そのままSDGsの推進になるのです。

これからは、このような活動努力について、ステークホルダーに対して発信していくことが重要だと考えています。

(自社配送拠点  画像提供:株式会社プレミアムウォーターホールディングス)

ーー具体的にはどのような内容を発信されているのでしょう?

たとえば、マイボトルの普及推進です。外出先でペットボトルのお茶を購入するのをやめ、自宅のウォーターサーバーを利用し、マイボトルを持参すれば、単純にペットボトルの消費量は減ります。また、ペットボトル飲料を外出先で購入すると、どうしても外出先で捨てる機会が多くなります。投棄したペットボトルは、一見再利用できるように見えても、実はリサイクルの循環システムに乗らないこともあるのです。

当社のウォーターサーバー用ペットボトルは12ℓあるため、500mlのペットボトルと違い、河川やコンビニエンスストア前などに投棄することは、現実的に考えにくいです。現に当社のお客様の約90%が、自治体の分別に従ってサーバー用ペットボトルを資源ゴミの日に出しています。

結果、当社のペットボトルは外に投棄されることなく、行政のゴミ回収システムおよびリサイクルシステムに乗って循環されるのです。

ーーマイボトルを持参すれば外出先でペットボトル飲料を購入することもなく、ペットボトルの消費量とともに不法投棄の量も減り、リサイクルを促進できるのですね。

もちろん、当社も輸送容器として使用するプラスチックの削減には取り組まなければなりません。そのために当社は2015年から使用しているペットボトルの素材や構造を変更し、プラスチック削減に努めてきました。

ペットボトルをなくすのではなく、ペットボトルを変える


ーーペットボトルの素材や構造を変更したとのことですが、現在までにどの程度削減しているのでしょうか。

当社は従前から経費削減を目的として、ペットボトル使用量を減らす取り組みを実施していました。ペットボトルの使用量を減らすことは、製造原価の削減につながります。加えて2015年からは、経費削減だけではなく、マテリアルリサイクルも目的に加わりました。

以前使用していたボトルの構造を変更することにより、20%ほど軽量化したペットボトルに変更しました。このボトルに順次入れ替えを実施し、2020年4月時点で全水源の97%程度で軽量化したペットボトルへと移行完了しました。使用量の面では、年間931tの使用量削減が実現できています。

(商品やサービスの排出CO2相当量の“削減率”「デカボ スコア」は52%に到達 画像提供:株式会社プレミアムウォーターホールディングス)

――2015年から5年間で、御社で使用する97%のペットボトルを軽量化ボトルに移行したのですね。今後の目標として掲げている数値があれば教えてください。

とはいえ現在は軽量化に成功したのみです。これからは素材の見直しも行わなくてはなりません。当社で利用している容器や資材などへのサスティナブルな素材の使用率は、2023年9月時点で5%程度に留まります。これを2030年までに50%程度まで引きあげ、さらなるプラスチック使用量の削減を目指しています。

(同社が採用している軽量化ペットボトル。今後は削減化も目指す 画像提供:株式会社プレミアムウォーターホールディングス)

――ペットボトルそのものの使用量を削減するのではなく、サスティナブルな素材に変更していく、ということですね。

はい。ペットボトルの使用そのものが悪だという考え方もありますが、当社が敢えてペットボトルの使用を続けることには理由があります。ペットボトルは水を長期保管しても匂いがつきにくく、保存性に優れています。また水漏れをしないことも優れた点の一つです。たとえばこれを紙製のものに代替したとしても、結局水漏れ防止のために内側にプラスチック製のコーティング素材を塗らなければならないので、根本的な解決にはなりません。

それよりも私たちは、ペットボトル自体をサステナブルな素材に変更していくことで、プラスチック使用量の削減を目指しています。また、将来的にはペットボトル資源の循環の促進も進めていかなければならないと考えています。

企業活動と紐づけることが、持続可能な事業を実現する


――現在御社では、脱炭素化を進めるにあたり、どのような課題をお持ちですか?

当社では2015年以降、プラスチック削減を進めてまいりました。今までは単純にプラスチックの削減量にのみに焦点をあてていたのですが、これをどのように国際基準であるScope1、2、3に当てはめていくべきか、現在体制を整えている最中です。

Scope1、2については、2022年11月のサスティナビリティレポートの中で、CO2排出量が実質的にゼロとなる「カーボンニュートラル工場」を軸にした省エネ活動の推進や、再生可能エネルギーの積極導入を打ち出しました。しかし、Scope3については、自社だけでなく関連するバリューチェーンにおける間接排出量の削減が必要となるため、ステークホルダーとの間で調整しているというのが現状です。

こうした取り組みや調整事項は、他社がどのように実施しているのか情報がなく、意見交換の場もないため手探り状態ですが、社内で調整しながら進めています。

(プレミアムウォーターホールディングス本社。もちろんウォーターサーバーを備える 画像提供:同社)

――実際にサスティナビリティへの取り組みを始めようと考えたとき、まずどこから始めるべきかでつまずく会社が非常に多いと感じます。何をどうしてよいのか二の足を踏んでいる方に対し、御社からアドバイスがあれば教えてください。

当社もなにかやらなければならないという気持ちばかりが焦ることもあります。しかし、サスティナビリティ経営を実施するためには、通常のビジネスが持続可能であることが大前提です。

SDGsを推進するために、コスト削減を項目の一つとして活動をすることは、どの事業、どの企業においても可能でしょう。当社の場合は、プラスチック使用量の削減が、材料費の削減にもつながり、さらにCO2の削減がひいては運搬コストの削減にもつながっていきます。まずは企業活動と交わる点を探すことからスタート、そして実行に移し、その上で事業の資金余力が出てきたところで、根本的な貢献となる取り組みを検討していけばよいのだと思います。

当社でも、まずは現実的な取り組みとしてコスト削減の検討から開始した上で、当社の事業主体である「水」を主軸に、SDGsに対して根本的に貢献できるような活動を目指していきます。

最初から大きな目標を掲げるのではなく、まずは目の前にあることから注力し、企業活動とSDGsをうまく紐づけながら社会貢献にアプローチしていくことが重要なのではないでしょうか。

(ウォーターサーバーは、水質にこだわりのある個人のお客様から愛用いただいている 画像提供:株式会社プレミアムウォーターホールディングス)


プレミアムウォーターの皆様、ありがとうございました!

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最後までお読みいただきありがとうございます。
通常の企業活動がSDGsに繋がるからこそ、持続可能となる、だからこそ目の前にあることから始めることが重要だというお話がとても印象的でした。

今回の事例を通じて、皆様の活動のヒントが見つかることを祈っています。

それではまた次回、お会いしましょう!


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