天下取った友達っている?

・俺の周りには少なくともいまのところいない。なんで急にそんなことを書いたのか。宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』を読んだためです。

・いい小説だった。主人公の成瀬あかりは子どもの頃から一貫して何でもできて、何となくただならぬ雰囲気をまとっている。誰の子供時代の記憶にも恐らくひとりはいるであろう「将来大物になるであろうあいつ」を思い出すのがこの成瀬あかりだった。実際そいつは大物になったり天下を取ったりするのか…というと、大体の場合はそうではないと思う。この成瀬にしても同じで、ほとんどのことに早くから頭角をあらわすが、極めるまでには至らずに放り出す。泰然自若とした成瀬だが困難にぶつかればそれなりにバグるし、タイトルが「取った」ではなくあくまで「取りにいく」なのはそういうことなんだろう。俺たちは「将来大物になるであろうあいつ」が思い悩んだり何かをばっさり切り捨てる様を実はよく知らない。しかし成瀬にはそれを見せられる島崎という友人がいる。この島崎というのも成瀬に振り回されるだけではなく、時には成瀬の方を翻弄したりする味わい深いキャラクターで、その光景がなんかよく分からんけどとても美しく感じた。

以上

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