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心にいる人

昔よくお世話になっていた人が、震災を期に、引っ越していって、いろいろなものを作っては売る方になっていて、
数年前に、たまたま展示会があった時に行った。ものすごい久しぶりに。
自然の中で、落ち着いた日々を送っているのに、
大都会の中で、自然の息吹をバーゲンみたいに求めてくる人たちの相手をするのにうっすら疲れた感じを感じていた。

でも、相も変わらず、私は声と、声の出し方が大好きで、ずっと話している声を聴いてうっすら涙ぐんでいた。昔、なんかわからんけど、この人がいる空間にいることが好きだったなあ、と思いつつ。

遠くで知ってる人や知らない人に、すっと距離を詰めて立つようなふうにしたり、そっと相手との間に木の棒を一本置くような声を出したり、その、わずかな声の表情を聴いていた。

私も、彼にとっては彼岸の人なんだろうなあ、と思いつつ。
でも、だからといって私は私なのだから、街で暮らすよ、と思って、
バッカみたいに高いいろいろなものが売れていく会場をあとにした。

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