#132 家庭の味
実家に住んでいた10年ほど前、かつて料理の先生をしていた祖母を中心に叔母と母が主に夕飯を作っていた。
珍しい料理も家庭で作れると分かれば率先して取り入れる人ばかりだったので、あまり一般的でない献立が並ぶことも少なくなかった。
当時は珍しかったタイ料理のグリーンカレーやパッタイなどのエスニックだけでなく、お祝いごとにはパエリヤ、ヴィシソワーズ、ラザニア、タコスなど、色々出ており、時々クラスメイトと家庭料理の話をしたときに驚かれることもあるくらいだった。
そういうこだわりのある家庭だったので、所謂「名もなき家庭料理」というのが少なかったが、その数少ない家庭料理で今でもたまに食べたくなるものがある。
我が家では「浜田山スープ」と呼んでいるそれは、ルーの入っていないカレーやシチューのようなものだ。浜田山に住んでいた祖母の近親者がよく作っていたもので、ちょうど今くらいの時期によく出ていた記憶がある。
玉ねぎやニンジン、ジャガイモに豚肉を炒めて塩胡椒、そこに小麦粉を塗して水を入れ、コンソメでしばらく煮込めば完成だ。
至ってシンプル。でも、滋味深くて美味しく、胡椒のピリッとしたのや、たまに出てくるすいとんのような小麦のダマがいい味なのだ。
ちょうど今、冷蔵庫に玉ねぎもニンジンもジャガイモもある。先程豚肉だけ買ってきて、今週の作り置きとしてこれを作ろうと思うのだ。
きっと、木のスープ皿に入れれば中世の食堂で出されそうな見た目になるはず。
そんな風に盛り付ける人がいたら、ぜひ教えてくださいね。