羽佐間ペルノ

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羽佐間ペルノ

一期は夢よ、ただ狂へ。 小説やエッセイ、旅行記、ハウツーなどさまざま。 決して無断転載・無断使用・AI学習への利用はなさいませんようお願い致します。 景色の写真に関しては、個人的な使用(待ち受け等)はOKです。

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  • エッセイまとめ

    エッセイ作品のまとめです。

  • 小説まとめ

    オリジナル小説中心のまとめです。

  • プラハ奇談(別名:中欧奇談)

    実体験と妄想、幻覚、幻聴の狭間に揺れる虚構のエッセイ。ある意味で、詩。

  • 三部作『ZOO』

    動物の生態に関連した3つの短編小説の連作です。

  • ローマ~プラハ 電車で3週間一人旅

    ローマからプラハへ3週間で電車移動のみで旅行した記録です。

最近の記事

エッセイ「人生が一変した特に何ということのない日」

 再生、ブラウザバック、再生、ブラウザバック、再生、ブラウザバック……  先程からパソコンに向かい、YouTube上でこれをずっと繰り返しているが、私としては真剣そのものである。日々聞いている音楽にそろそろ飽きを感じて、新しい音楽を探しているのだ。実家の棚にあった母親のサザンオールスターズのすいかボックスはすっかり聞きつくして、もはや私のものになっている。高校の図書館から借りたQUEENのベスト盤や、友人から借りたthe pillowsのアルバムも、たった6GBしかないiPo

    • Twitter三題噺「溶かしバター・譜面台・眼精疲労」

       ドヴォルザークのチェロ協奏曲 ロ短調 作品104は過去に何度も演奏したことのある曲ではあるが、自分がメインでやるのは初めてのことだ。この日、何度目かの練習を終えて帰ろうとする間際、指揮者のペトルが私を呼び止めた。呼び止められる理由に心当たりが無いわけではない。メインとして、今の自分は十分な働きが出来ていない。  国営放送後援の交響楽団に入団してから一年。そこからチェロのメインパートを任されるのは四十代を前にして異例の早さであり、自分のこれまでの実績に期待あっての任命であるこ

      • Twitter三題噺「三半規管・爪切り・夕立」

         蒸し暑い空気が、アパートの六畳一間に満ちる。シダの葉のような模様を描く黒カビだらけの壁の向こうから、住人同士の怒鳴り合う声がかすかに聞こえる。時計を見ると、もうすぐ五時だ。かれこれ一時間くらいお隣さんは喧嘩している。  パチン  八月のど真ん中に似つかわしくない雪の結晶があしらわれた、いかにも昭和らしいすりガラスの窓。そこに、先程から急に降り始めた雨が当たり続けている。僕は、早くこの時間が終わらないだろうかと、雨の音を聞きながら思うばかりだ。  パチン  僕のよそ見に気づい

        • アンドウという男

           私が安藤に初めて会ったのは、二十二歳の頃の夢の中だった。そう話すと、ほらその顔だ。夢の話だと聞くと、まるで価値がないような顔をする。夢で起こったことが現実に何も作用しないと本当に思っているのか?夢と現実はときに地続きに繋がり、作用する。安藤はそういう存在だ。  しかし、私は彼を安藤と呼んでいるものの、名前がこの漢字で合っているかは恥ずかしながら不明だ。脳裏に漠然と安藤の文字が浮かぶが、ひょっとしたら庵堂かもしれないし、そもそも彼の名前は安藤ではなく、城木だったかもしれない。

        エッセイ「人生が一変した特に何ということのない日」

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        記事

          創作落語台本「最期の鯛」

          ・あらすじ  戦国時代、都のある京よりほど近いとある一帯を治めている将軍・淀永春康は、彼のかけがいのない腹心である武将・加藤義辰の兄による離反・逃亡に伴い、兄に代わって義辰に切腹を命じることになる。  重宝していた戦力を失う口惜しさから、春康は義辰の最後に「何でも好きなことを叶えてやりたい」と申し出る。義辰は主君の好意をありがたく思い、自分の希望を伝える。  しかし「食べたことのない鯛を食べてみたい」という希望を皮切りに、一つ叶えるとまた一つとお願い事が増えていく…… ・登

          創作落語台本「最期の鯛」

          うさぎ

           先程まで公園のベンチでうたた寝をしていたはずなのに、目を覚ますとプラチナを砕いたような銀の砂浜の上で寝そべっていた。南国の白砂よりも遥かに細かく、そして光を受けて七色に輝くこの砂は、あたり一面にまさしく銀世界を作っていた。起き上がってみるとこの銀の砂はちっとも服につかず、手に取るとまるで液体のように、しかしサラサラと何の粘度も水気もなく落ちていく。  空は大きなビロードの布を張ったように真っ暗闇で、遠くには漆黒と白銀で作られた地平線がどこまでも広がっている。凍てつくような景

          とあるパン屋の言うことには

           新鮮な小麦、産みたての卵、出来たてのバターに、決して潰えないかまどの炎。そこで生まれたパン達が、この街に暮らす人々の腹と心を満たしていくのを、キミは知っているだろうか。  フレビーチェクを2つ買ったのは、お城に住まう錬金術師。チーズとハムのものと、トマトと卵のもの。急いで食べて、すぐに出ていく。大きくて黒いマントは、いつも店の床のパン粉を拾っていく綺麗好き。手に持った籠には、きっと黄金を生み出すための物があるのだろうと覗きこめば、きっとガラクタだらけ。  でも、そんなモノか

          とあるパン屋の言うことには

          アダム・ジシュカの霞の本

           これは、現在のチェコ共和国の首都プラハにて、14世紀に書かれた2人の男の手記と、またそれに関連した2つの奇妙な新聞記事を現代語などに翻訳し、まとめたものである。  しかし、この手記に記載のある人物や事象などは、現在残っている他の歴史的資料には残されていないことが多く、この時代における創作なのか、あるいは事実なのかは現在でも分かっていない。  手記はおそらく続きで書かれているものと思われるが、現時点では1冊ずつしか発見されておらず、その前後のものは未だに見つかっていない。 ま

          アダム・ジシュカの霞の本

          星見の塔で聞いた旅行話

           ある夜、星見の塔にいた青年が目を見開くと、そこには風来坊の男がいた。  青年は天文学者であり、この日は夜通し西の空に浮かぶ金星の観察に勤しんでいた。ところが、突然頭を殴られたかのような衝撃が体に走ったかと思うと、次の瞬間には天文台の天井が見えており、視界の端には汚らしい見た目の男がチラチラと見えていた。  どこか青年を心配しているようにも、笑いを堪えているようにも見えるその男は、まさに“風来坊”という表現が似合う見た目であった。天文学者の青年は起き上がると、その男と向き合う

          星見の塔で聞いた旅行話

          プラハ奇談2017

           最初に言わなければならないが、誓って私は生まれてこの方ドラッグに手を出したことは無い。  何故、そんなことを言わなければならないかというと、今から始まる話が全て実際に私が体験した現象をベースに、読み物として楽しめるように脚色を加えたものだからだ。この現象の数々を見て、きっと「頭がおかしい」「薬物中毒者の妄想だ」と思う人がいるかもしれない。だが、この虚構と現実の境など最初から曖昧なこのカタチで表現すれば、まぁある程度はフィクションとして認識してくれるだろうと思ったのだ。こんな

          プラハ奇談2016

          Prologue 「ここには私1人で住んでいるの。 奇遇にも今夜は私とあなたの2人きり。 お皿の上で出会うことはないと思うから、 近くに来てちょっとお話しましょう?」 #1 「失礼。お願いがあるのですが聞いて頂けないでしょうか?」 何でしょう? 「靴を履くのを忘れてしまって、これからデートだからおめかししたのに……」 困りましたね。 「えぇ、でも彼女は靴が無い方が喜ぶでしょう」 何故? 「彼女は花瓶なんです。足が無ければもっと喜ぶ」 #2 タイムカプセルみたいですね。 「

          エッセイ「泥水で結構でございます」

           予想を超えたものに出会えば慌てて取り乱してしまうのは、人間として当然の生理的反応だと思う。危険生物は出ないと聞いた山道で熊に出会ったり、小さなトイプードルを撫でようとしたら大暴れで噛まれそうになったり、男だと思って付き合っていた彼氏が実は女性だったり。  しかし人間とは哀れな生き物で、不測の事態に陥れば陥るほど、何とか社会的体裁を取り繕おうとしてしまう。素直に驚けばまだ冷静さを取り戻せそうなものを、変に格好つけようとするから余計におかしなことになってしまう。人間とはまことに

          エッセイ「泥水で結構でございます」

          パイナップル絶滅大作戦

           もし、自分が仕事も立ち行かなくなり、恋人や配偶者にひどいフラれ方をされ、友人には裏切られ、もう人生における何もかもを失ったらやりたいことがある。  それは、大型の火炎放射器を片手に世界中のパイナップル畑を巡る旅に出ることだ。目的は、パイナップルの絶滅。種一つも残さないほどに、この世界からパイナップルという存在を消し去り、ユニコーンやドラゴンと同じ、「そんなものはない」と人々に言われるような空想上の存在にしてしまうのだ。  そこまで過激な発想に至るのに、ただ単純にパイナップル

          パイナップル絶滅大作戦

          再会

          ※捉えようによってはグロく感じる部分がありますのでご注意ください。   空耳かと疑うくらいの年月が流れたことを、あの聞きなれた足音が知らせた。ドアが開けられる。見慣れた彼の顔だ。 「ただいま」 「おかえりなさい」  想像以上に静かな対面。彼は一つもバツの悪そうな顔を見せないが、手が震えているのは見ないでも分かった。言葉に窮した彼が、手に下げた紙袋を私に手渡す。 「これ……」  私はそれを受け取る。中身を覗くと、私が好きだったケーキ屋さんの箱が見えた。 「何年前のことだか……

          エッセイ「にょうそという女」

           世の中にいる大半の人が恐れるものの代表として、幽霊やお化けなどがあげられると思う。有史以来、死んだ人間が実体の有無を問わず生者の前に現れては、何か呪ったり襲ったりして困らせてきたからだろう。化学が発達した現代においても、夏になればテレビで心霊特集をやって、幽霊の映っている写真や動画、呪いの品物などを紹介して怖がっている。  もちろん、私もそのテの話は怖いもの見たさで好きな反面、時々どうしようもなく怖く感じることもある。 「この恨み晴らさでおくべきか」  とおどろおどろしく現

          エッセイ「にょうそという女」

          エッセイ「人形恐怖症について」

           大前提として、私は薬物に一度も手を出したことは無い。精神科医のお世話になったことも、幸いなことに今のところ無い。それにもかかわらず、白昼夢というべきか幻覚と言うべきか、意識がはっきりと覚醒しているときに、常識では説明のできない“何か”が度々目の前に現れることがある。それは、いわば霊感や第六感といった感覚に訴えうる幽霊や亡者の霊魂・思念が見えるというのではない。心霊体験や超常現象体験はいくつかあるが、そのものを目で捉えたことはない。  私が見るのは人ほどのサイズの巨大な蝶であ

          エッセイ「人形恐怖症について」