#106 キッズ大暴れ電力プラント

日課としている朝の散歩では、さまざまな人を見かける。通勤のため忙しそうに走る人、子供を保育園や幼稚園へ送り届ける親御さん、少し遅刻してダラダラ歩く中高生……

私が歩く時間帯、さらにはこの立地的に特に多く見かけるのはお散歩中の保育園児たちだ。

周りに沢山の保育園がある立地なので、午前中は少し歩けば保育園児たちの小さな大名行列に遭遇する。

よく見る御所車に乗って移動するのもいれば、保母さんに手を引かれてヨチヨチ歩くのもいる。あの小さな身体で、車や自転車、バイクの走る道を安全に移動させることを考えると、保母さんたちの仕事はすごいなと感嘆する。

今日もそんな幼児の行列を見た。
私の腰にも満たないような小さな身体で、保母さんたちに連れ添われながら、青い帽子を被った小さな存在が歩いている。

私は邪魔にならないように避けようと、少し進路を変えながら進もうとした。

その先に、花束を抱えたおばあさんがいた。
杖をつき、買い物袋も抱えていたおばあさんは、幼児たちの行列に近づいていく。

行列にピタッと寄り添う形で立ち止まると、おばあさんはこう行った。

「私も一緒について行っていい?一緒に遊びましょう!」

もちろん、小さな子供たちを可愛がるおばあさんなりのジョークだろう。そう思いたい。
しかし、保母さんの顔を見れば幼児たちの手を離すわけにもいかず、おばあさんを困惑した表情で見つめるばかりだ。しかし、そこまでの危機感がないのを見るに、まぁよくあることなのだろう。

すると、幼児の一人がこう言った。
「ダメ!」
「ダメだよ!」
「イヤ!」

はっきりとした拒否の姿勢。
保母さんたちは困り笑いを浮かべている。

言われたおばあさんはカラカラと笑いながら
「そうよねぇ」
と言って、その場を立ち去って行った。

あそこまではっきり拒否されては、おばあさんも少し可哀想だなと思うものの、とはいえいきなり保育園児たちに仲間入りしようとするのは随分な振る舞いだなと思う。
いきなり知らない大人が触れられそうなくらい近づいてきたら、怖かろう。

それに、子供の体力をナメてはいけない。
杖をつくほどのご老体では、ものの2分で精も根も尽き果てること請け合いだ。

先日、実家でBBQをした際に実感したことだ。
この日は私の両親と弟、祖父母に叔父叔母、そして従兄弟2人の配偶者と子供が大集結した。

子供は上は小学校低学年から、下は離乳食卒業を控えた赤ちゃんまで総勢4名。
そのエネルギーたるや凄まじいものだ。

幸い、ほとんどの子供がある程度自分でおもちゃを見つけて遊べる子ばかりなので、放っておいても仲良く遊んでいる。

しかし、その遊びの様は元気いっぱいどころではなく、様子を見ていた親の従兄弟ですら
「120%の勢いで遊んでるな……」
と呟くくらいであった。

子供のあのはしゃぎ回る姿には、無限のパワーが秘められているのではないかと思っている。

映画『モンスターズ・インク』では、子供の泣き声や笑い声が、モンスターの世界の電力インフラとして使われているが、そういうのが出来そうだと確かに思う。

そういえば、最近大きな声や音を電力エネルギーに還元できる装置が出来たというニュースを見た。

東京大学の研究らしい。
なるほど、渋谷や新宿の雑踏で発電できるなんて、夢のある話だ。

ならば、保育園かあるいは子供向けに大騒ぎできる施設を発電所にする時代がやってくるかもしれない。

「キッズ大暴れ電力プラント」
みたいな施設があったらぜひ見学したい。
きっと、室内はディズニーランドにある「グーフィのはずむ家」みたいにクッション張りになっており、怪我しないようにできていて、そのクッションの表面が超薄型音力発電素子なら、きっと凄まじいエネルギーが作り出せるかもしれない。

子供たちの声が、電力へと唸りを上げて還元されるのが可視化されていたらすごく楽しそう。
何をしても怒られないから、縦横無尽に暴れ回る子供たちの姿も凄そうだし、親御さんとしても夜には確実に子供が爆睡してくれるだろうからきっと助かるかもしれない。

園児たちに拒否されたおばあさんには悪いが、今日の光景を見てこんな妄想が広がる朝でした。

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