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注目の物流スタートアップ: 創業7年で時価総額5,000億円超え、デジタルブローカー「Convoy」

直近で資金調達及び話題のスタートアップの中から、物流業界に関連するものを厳選して、このブログで紹介します。

今回ご紹介するのは、荷主と運送会社をマッチングするマーケットプレイスを提供するデジタルブローカーの「Convoy」です。米国の著名VCであるGreylockのPodcast(↓)にて、Convoy創業者 Dan Lewisのインタビュー回答内容が面白かったので、その内容をなぞりながら、Convoyを紹介できたらと思います。

1.企業概要

Amazonでユーザの購入体験を向上するための"Review & Ratings"を担当していたDan Lewis創業したConvoy。AmazonのJeff Bezos、SalesforceのMarc Benioff、DropboxのDrew Houstonなど名だたる起業家/エンジェル投資家から資金調達し、その後もSeries AでGreylock(Linkedin創業者 Reid Hoffmanが社外取に)、Series BでY Combinator、Series CでCapitalG(GoogleのVC)など著名なVCから着実にお金を集め、今やデジタルブローカの中では最も時価総額が高く投資家の顔ぶれも熱いのがConvoyです。

  1. 創業年:2015年

  2. 本社:Seattle (Amazonのお膝元)

  3. 創業者:Dan Lewis (元Amazon Shopping ExperienceのGM)

  4. 累計調達金額:$930M, Series E

  5. Post-Valuation:$3,800M

  6. 主な投資家:Greylock, Y Combinator, CapitalG, T. Rowe Price, Baillie Gifford

2.なぜ、このタイミングで創業したのか?

デジタルブローカーの比較表

上図の通り、左からUber Freight 2017年、Convoy 2015年、Transfix 2013年、Loadsmart 2014年、Next 2015年 と創業タイミングが近しいので、「Why Now? (なぜ、このタイミングで創業するのか?)」また「業界構造をどう捉えているのか?」気になっていたのですが、前述のGreylockのPodcastでDanが3つ回答していたので紹介したいと思います。

2-1.スマホ普及による、オフライン業務データのオンライン化

「初代iPhoneが誕生したのは2007年だが、物流業界のパパママ中小運送会社や個人事業主の間では高価なiPhoneは普及していなかった。そこに風穴を開けたのが「Samsung Galaxy S II」、米大手携帯キャリアが積極的にマーケティングした結果、2011年に$100ドル以下で販売された初めてのAndroidフォンとなり、トラックドライバーにAndroidスマホが普及し始めた。

スマホがドライバーへ普及したことにより、これまで電話・SMSを中心としたアナログコミュニケーションにより記録に残らなかったデータが、オンライン化できるようになったこと がこのタイミングで創業した1つの理由だ」とDan Lewis。

2-2.フラグメントな業界構造による、地殻構造の変化が大きい

Danは創業前にトラック業界を調査し驚いたこととして「トラック会社トップ20社のトラック保有台数は市場全体の12%に過ぎず、88%は中小運送会社・ドライバー数名のパパママ・Owner-Operatorと呼ばれる個人事業主が保有していること」「貨物輸送コストに占めるトラック輸送は8割を占め、航空・海上・鉄道輸送など他のモーダルはわずか2割」「トラック会社には、各ドライバーに指示を出すディスパッチャー、その指示を受けて貨物を輸送するドライバー がいるが、この2者間のやり取りは電話・テキストメッセージなどアナログで非効率であること」をインタビューで挙げていました。

まとめると、業界の約9割のトラックを保有するドライバーはスマホを持っておらず、そんなドライバーが輸送するトラック市場がロジスティック市場全体の8割を占めていて、トラック会社内でのやり取りや荷主・ブローカー・運送会社間のやりとりがアナログで行われている。それがドライバーへのスマホ普及により、アナログでオフラインで行われていた業務やドライバーの自己位置情報などがオンライン化されることで、業界の地殻構造が変わっていく そこに魅力を感じた ということでしょう。

2-3.長期の運送業務請負契約の課題が大きい

業界の最大のチャレンジとして「トラック業界には入札を通じて年間単位で運送契約を結ぶ業界慣習があること」「燃料費や人件費などコストの変動リスクを運送会社がリスクテイクし、低い価格で入札を提示した人が勝つ「Gotcha Game」になっている」ことをDanは挙げています。

そうではなく、Uberの様にサービス提供者と受給者双方がお互いを評点・評価することににより、長期間の信頼関係に基づいたマッチングアルゴリズムにより、この問題を解決できないか とLewisは考えていたそうです。

AmazonでUXを最大化するために"Ratings & Review"を担当していたDanは、物流業界においても、今まで可視化されることがなかった「荷主」「運送会社」「荷受人」がお互いを評価・評点付けすることでDemand(荷主) > Supply(運送会社)のパワーバランスを変えることで、マッチングそのもの自体を変えられる可能性に早くから気づいていたのかもしれませんね。

3.中小ドライバーにトレイラーを提供する"Convoy Go"

ConvoyもUberFreightやTransfixの様に荷主と運送会社をマッチングするマーケットプレイスを提供しており、UberFreightやTransfixの提供プロダクトについては前回触れました。

そのため、Convoyについては、Convoyが2019年にロンチしたサービスである"Convoy Go"を今回紹介したいと思います。

図1 Youtube "Convoy Go Webinar for Shipper"より抜粋

Convoy Goは、荷主や運送業者向けに"ドロップ&フック"を提供するサービスです。次の積み込みに備えて、空のトレイラーは荷主の倉庫の外のヤードに置かれていることが多いのですが、これは荷主と年間契約を締結している大手運送会社のみが扱えるトレイラーのため、中小の運送会社やドライバーは従来取扱いの出来ないトレイラーでした。

Convoyの様なブローカーが自社でトレイラーなどアセットを持つことは大変珍しいことかと思いますが、Convoyは$900M以上調達した資金力を活かし、トレイラーをリースし、様々な荷主やPower Only(トレイラーを牽引するトレイラーヘッドのみを保有する運送会社)にConvoyの"Universal Trailer Pool"を開放しています。今までは大手運送会社のみアクセスできたトレイラープールを、パパママ運送会社や個人事業主ドライバーにも開放するのが狙いです。

図2 ConvoyGoのニュースリリースより

簡単にサービスの流れを説明します。図2の様に、Power Unit Only(トレイラーヘッドのみを保有する)ドライバーは、Facility A → Facility B → Facility C と既に荷積みされたトレイラーをフック&ドロップ を繰り返せるので、待ち時間などお金を生み出さない時間にドライバーが拘束されるのを極力削減できる点が最大の提供価値で、前回紹介したBatonの提供価値と似ています。 

"Convoy Go"ですが、Uber Freightも"Powerloop"という競合サービスをロンチしており、今後ドライバーインフラ・貨物を輸送するトレイラーというSupply側のアセットを保有したデジタルブローカーがどのような事業を推進するのか楽しみですね。

4.編集後記

UberFreight、Transfix、Convoyと調べて、だいぶ各社の特徴が見えてきました。各社ともに対象としてるSupply側(運送会社の規模)が異なっているようですね。

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Fin




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