生徒による占領下のギリシャの高校
学校の占領
9月の半ばからギリシャの学校が新学期を迎え、長い3ヶ月の夏休みを終え、学校生活が始まりました。私の二人の子供も、今年から中学生と高校生になり、新しいいいスタートを切って欲しいなと願っていました。学校が始まってまだ2週間ほどしか経ってない先週の月曜日に、学校に行ったはずの息子が家に戻ってくるではありませんか。そして、「学校が占領された」と言いました。
生徒たちの要望
ギリシャでは、「カタリプシ・(Καταληψη)」と言って、生徒たちが学校や国に対して抗議がある場合、学校を占領します。
先週1週間で、ギリシャ全土で中学校も含め130近くの学校が一部の生徒によって占領されました。今回学生たちが学校や政府に求めているのは以下の要件です。
- 大学入学試験の最低点の廃止。(前政権では、どんなに悪い点であっても、定員内であれば合格していたのですが、現政権は少なくとも基礎学力のないものは合格できないように、最低点を設けるように法律を変えています)
- コロナ禍でのウェブ授業では、ほとんどの教科において教科書を終えることができませんでした。その教えられなかった部分を国が責任を持って補うことを要求しています。
- 新学期が始まっても、まだある教科では教師が配属されておらず、授業が行われていない科目があります。すべての教科に教師を素早く配属させ授業を開始するように求めています。
- 10月の学校行事であるスポーツと文化的な課外学習をすべての生徒に求めています。
- 大学受験で必要となる科目は学校で教えるように求めています。(例えば、建築学部を希望する生徒は入試で建築の設計図を書かなければなりません。しかし、そのような授業は全く学校にはありません。建築学部を目指す生徒は、それ専門の有料の塾へ通って学ばなければなりません。また語学も同様で、ロシア語、イタリア語学科を受験するにはすでにその言語に精通しておかなければなりません。学校では教えない言語であるため、学校外でお金を払って学び試験に合格するしか方法がありません。)
- コロナワクチン接種に関して、国からの生徒たちに対する公式な公表を求めています。また、学校に学校医を置くことも求めています。(ギリシャでは小学校でさへ、保健室などはありません。身体検査なるものも全くありません。)
- もっと生徒が理解でき、参加できるための少数のクラス作りを求めています。(現在1クラス約20人くらいですが、高校受験がないため1クラスの子どもたちの学力の差が非常に大きいと思われます。)
- 学校の衛生状態の改善
学びの機会を失う生徒の権利は?
上記の学生からの要件は、個人的に大学入試の最低点以外、同意でき、子供を持つ親として切実に改善して欲しいものばかりです。しかし、息子はいわゆる尊い意義を持った占領のことを全く知らなかったし、その尊い要求も全く知らされていませんでした。もちろん本当に改善を願った生徒たちもいるとは思いますが、占領しているすべての生徒たちがそうなのかというのは謎です。また、学ぶ機会を失う生徒たちはどうなるのかなと考えます。それでなくても、授業が予定通りに進まず、毎年ほとんどの教科で教科書が終えられません。そんな中、占領のために1週間、2週間、長い時には1ヶ月と学校がなければ、また今年もかと諦めの境地に入ってしまいます。財力のある家庭は塾や家庭教師をつけることで解決するのでしょうが、私たちのような一般の家庭では簡単なことではありません。もし、息子が政府に要求するために学校を占領すると言ったら、私は止めるだろうなと思います。要求はするべきだけれども、他の方法で訴えるように促すだろうと思います。
最後に
今回、オンライン授業は国から許可されてのことですが、息子の学校はオンライン授業を決行しました。そうでない学校もあるようです。占領から3日後には息子は朝から自宅で授業に参加していました。学校で受ける授業と同じというわけにはいきませんが、コロナ禍でオンライン授業が普及したためにできた代替案です。私は個人的に良かったと思っています。
しかし、占領下の学校閉鎖中にオンライン授業をすることに反対している親御さんもいます。この行為は権威主義であり、反民主主義の道を歩み始めていると訴えています。1970代前後のギリシャでの軍事政権時代に戻ってしまうと恐れているのでしょうか。うーん。本当に色々な考えがあり、色々な権利があり、そんな中で生きていることが、ギリシャの生活なんだろうなと思います。(Written by Yuki)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?