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パフォーマンスビルダー三浦の視点 #8 ~日本の競技力向上と魅力の開拓:卓球フットワーク編

こんにちは、パフォーマンスビルダーの三浦千紗子です。
今回は卓球という競技に関してパフォーマンスビルダーの視点で紐解いてみたいと思います。
パリオリンピックの女子日本代表選手枠をかけた争いも話題になっていましたし、そして先日行われた世界選手権でも中国との決勝戦は手に汗握る、そして日本選手の強いプレーに心震わせながら観戦しました。
また日本の女子団体戦の初戦でルクセンブルクと対戦した際には、15歳の張本美和選手と60歳のニー・シャーリエン選手の対戦もありました。若手選手の勢いも素晴らしいですし、経験値の高い(大)ベテラン選手の活躍には本当に頭が下がります。
もちろん選手としてピークとされる年齢はあるとは思いますが、それだけではなく多様な個性を持った選手がいることが卓球の面白みでもあるのだなと感じた試合でした。
どの競技でも、世界で活躍すること、結果を残すことで競技の注目度も増し、それが競技の普及へと繋がると思います。このように選手ひとりひとりの競技力を上へ上へと向上させることも大切なミッションですし、一方で多様な選手の育成・輩出もその競技の魅力を開拓する一つのポイントなのかと感じた試合でした。
選手の個性や戦術の引き出しの多さや特色。勝つためにはある一定レベル以上にあることは重要だと思いますが、画一化されていない個性の選手が増えることもまた競技の魅力、面白みそして発展に繋がると思います。
そのような視点で考えた時に、選手のそれぞれの体の活かし方の点で私にも何かできることがあるのではないか。前回も卓球の記事を書きましたが、さらマニアックに笑、今回はフットワークの視点から卓球という競技を分解してみました。
フットワークのレベルがパフォーマンスのレベルを決めると言っても過言ではないくらい重要なポイントだと考えています。(でもこんな話を吹き飛ばすくらい、ニー選手は彼女独特の、個性あるパフォーマンスでしたが!)
このフットワーク→ボディワークの開拓により、さらに選手の競技力、そして個性の開拓に貢献できるとしたら。

※前回の記事はこちら


1.「卓球に必要な」フットワークのポイント


重心(体の軸)を崩さずに左右及び前後に動き、自分にとって良いポジションを取り続ける力だと考えています。

体の軸をつくるための順序

① 体の連動性を引き出す

(1)スクワット動作(上下と前後の動きの基本)
 

土台になるのは基本動作の習得


(2)スライド動作(左右の動きの基本)
 

意外と見落とされている左右の動きの基本

トレーニングは仮に同じ種目を行ったとしても「何を目的とするか」でその効果は変わってきます。ここでは特に足部(足裏と足首)と股関節の連動性をつくることを目的とします。
そうすることで自然とどのポジションでも体幹部が安定しやすくなります。

②  体の重心(軸)の強化

足裏を漫勉なく使えた上で、次に足の小指からの動きを強化することで、体の内側が強化されます。ここでのポイントは「体の内側(主に内ももや体幹部)」を使おうとしてはいけないということで、「自然と体の内側が使える状態をつくること」がポイントです。

そうすることで常に重心が自分の中心にあり、体の外側へバランスを崩すことを軽減できます。そこで面白い変化が見えるようになり、結果的に自然と大腿部の外側が細くなり始めます。
体の形やフォルムはその人が普段やっているパフォーマンスを表します。
シンプルに、体はよく使っているところが発達するからです。
太ももの外側が発達しているということは体の外側に重心が移っている場面があるということが想像できます。


基本的なトレーニングの時に足の親指が浮いたりしていませんか?
特に大切なのは「小指」!地面を捉えられていますか?!

③それを用いて練習すること

さらにその体の動きを踏まえて練習をすると自然と体を強化するトレーニングになり、卓球に必要な体に近づきます。「自然と」太ももの内側を使う、競技中のあらゆる動きの中でそこを使うトレーニングになるのです。
どんな選手でも1日は24時間、1週間は7日間です。その限られた時間を有効活用でき、さらにパフォーマンスも体も土台の強化に繋がります。 

④上半身(胸郭)の動きを取り入れること

ここが大事です、応用編(発展編)の第一歩。
人間の体は上半身(胸周り)が丸まっていると足を挙げる力は働きにくく、太ももの力で動いてしまいます。
 一方で上半身(胸周り)が自然はポジションにあり、そこから動きを作ると足を挙げる力は途端に働きやすくなり、自然と一歩の歩幅が広がり、一歩出た先でも体の内側を使って踏ん張る、そして切り返し動作が素早くできるようになります。
またこの動きを体に取り入れた状態で、フットワーク等の練習で反復性を高めることが今度はパフォーマンスの強化に繋がります。
 
狭い歩幅での正確な動き、大きな歩幅での反復性、前後への素早い動きなどフットワークの多様性を身に着けることで、相手の攻撃にも動じず自分にとって良い(適切な)ポジションを取り続けることに繋がります。
自分より格上の相手に勝つことを目的とするならば、この「強化」のレベルで練習や体づくりを進めていくことが大きなポイントとなると考えます。


2.得られる変化/フットワークからボディワークへ

①後手ではなく先手で動き続けられる

「相手の攻撃に対応する」のではなく、常に自分が優位なポジションを取って先手で動き続けられるフットワークが手に入ります。
表現上は「フットワーク」ですが、もはやフットワークではなく「ボディワーク」という表現の方がふさわしいのでしょう。脚で動くのではなく体幹・体の重心をコントロールする力で動いているような状態です。

②1プレー1プレーで途切れず、連続性のあるパフォーマンス

フットワーク(ボディワーク)では相手の攻撃を受けるディフェンスの場面は、「受け」ではなくもはや攻撃のスタートであり、攻撃を受けるきっかけをボディワークで対応することでそのまま攻撃に繋げていきます。一つ一つの動作が途切れず連続性のある動作を手に入れることができます。

③正確性×反復性×強さ

この正確性を反復できる体づくりこそが選手の強いプレーの源になります。

④疲労のたまりにくい体

体の取り扱い説明書通りに体を使うことで、疲労のたまりにくいパフォーマンス、体へと変化・進化します。集中力を必要とする卓球において体の疲労はそのまま集中力を欠く原因になりかねません。また年間を通して試合が続く今の競技形式では体が常にフレッシュな状態にあることはとても大きな財産になるはずです。

⑤新しいパフォーマンスの開拓

このようにフットワーク(ボディワーク)を取り入れることで、今までになかった発想で卓球を組み立てることができるかもしれません。
人とは違う勝負所、駆け引きの仕方、引き出しの作り方。
ボディワークへと変化することで、動きに変化も生まれ、また手の操作性も向上するため球種や球の緩急のつけ方にも変化を出せるはずです。

基本的にこれらのことはコンマ数秒、数センチの変化です。際どい勝負事を勝ち上がっていくためには欠かせない部分であると考えています。

3.フットワークの考えの輸入元/ハンドボール

20年近く関わっているハンドボールのフットワークから、卓球向けにアレンジして構築しています。
ハンドボールはチームによって様々なカラーがありますが、私が関わっている指導者はディフェンスを重視するため、前後左右に動き続けられて、粘れるフットワークづくり、体づくりのノウハウを積み上げてきました。
また高校生のカテゴリであることも踏まえ、筋力アップの前に体が本来持っている機能を引き出してあげることを重視しているため、このようなフットワークづくりのアプローチを行っています。

<卓球のハンドボールの類似点>
動きの幅が大きい(前後、左右、斜め)

<卓球とハンドボールの相違点>
どちらも体の軸は大事ですがハンドボールの場合はコンタクトがあるので相手を止める強さが必要です。そのための体の軸(体幹部)の力という意味合いが大きいですが、卓球の場合はコンタクトがないので、体の軸の強さは動作の連続性と正確性に活かすことが重要だと考えます。
上記パフォーマンスづくりの④まで進めると、足が出やすくなり相手に振られたり、ずらされたりしにくくなります。また相手についていくだけではなく 「勝つ」ためのパフォーマンスを求めるならば、常に先手で動けることを念頭に置き 強化することが重要だと考えるため、その一連の動作(動く、体制を取る、打つ、また動く)の連続性を高めることが大きなポイントだといえるでしょう。

※ハンドボールのディフェンス写真

大きな相手を止めたり


突っ込んで来る選手を止めたり


どっちに振られてもついていけるフットワークが必要です


4.おわりに

今回はフットワークから競技を考えてみました。
体は繋がって機能するようにできているので、「フットワーク≒足で動く」領域から「ボディワーク≒体全身が繋がって動く」へと進化する過程をつくることがポイントになると思います。
選手にとって体は最大のギア(道具)です。男子も女子も、老若男女問わずそのギアの開拓を行うことで、競技力の向上はもちろん多様な勝ち方、そして選手の個性を引き出すこと、そして卓球の発展に寄与できれば幸いです。
 
ひとつ一つは小さな歩みでもその積み重ねの先に新しい一歩を踏み出せる、そうやってコツコツ積み重ねることに喜びを感じます笑
 
日本卓球界の益々の発展と選手の活躍を祈念してこのnoteを終わりにしたいと思います。
 

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