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東京オリンピックシリーズ#6 ~卓球編/中国に勝つためのヒント :フットワークとラケット操作性の関係

こんにちは、パフォーマンスビルダーの三浦です。
水谷選手と伊藤選手の混合ダブルスの金メダルを始め、日本人選手の活躍が
記憶に新しい卓球。私もその熱い戦いを楽しませてもらいました。
オリンピックの後、選手が各メディアに登場し、その裏話やエピソードトークで二度楽しませてもらっていますが、その中で耳にした話から、ふと日本が中国に勝つための一つのポイントに気が付きましたので、今日はそのお話をしてみたいと思います。
ヒントはフットワーク、そしてラケット操作性の関係です!

1、 きっかけは水谷選手の腰痛

とある記事で、「水谷選手が腰痛に苦しんでいた時期がある」ということを知りました。

職業柄、ついつい怪我の話に耳がいってしまう私。
その情報がインプットされた状態で、ふとテレビで流れていた水谷選手の試合の様子を見て、「なるほど」と納得しました。
私は、人の体型を見てプレーを想像するという、おかしな妄想癖?!があるのですが、水谷選手の足、特に太ももの外側の発達に目が行きました。
太ももの外側が発達しているということは、内ももをもっと効率よく使えるというサインです。内ももが使えると、自然と体幹部の力が効率よく働き、腰に負担をかけない動きに繋がります。
では、この違いはどこから来るのか。
卓球を始め、テニスやバスケットボール、ハンドボールなどの球技におけるフットワーク、さらにサーフィンやスケートボードなどギアの上に乗る時の動きもそうですが、“体を下げる”という動作を「膝を曲げる」ことによって行うか、「股関節を曲げる」ことによって行うかの違いにより、動きの差が現れます。結果的にそれがその選手の体型となって表れます。
「膝を曲げる」ことによって動作を行うと、脚力が多用され主に太ももの外側が発達します。
「股関節を曲げる」ことによって動作を行うと、体幹部と内ももが働き、太ももが目立たない体型になります。

2、股関節を曲げるフットワークがもたらしてくれるもの

では、この違いが卓球にもたらしてくれるものは何か。
主に3つあります。

① スピードの向上
…股関節を曲げるフットワークの場合、体の重心は常に自分の中心部に
 あります。一方で膝を曲げるフットワークの場合は、フットワークの度に
 体の重心が一度外側へとずれてしまいます。このずれた状態から次の
 フットワークを始めなければならないため、結果的に出だしが少し遅れ、
 その積み重ねでラリー中のフットワークのスピードに変化が出ます。 

② 正確な反復性
…加えて、重心のぶれが少ないことから、より正確にフットワークを
 繰り返すことにも繋がります。

③ 虚を突かれた時の反応の速さと正確性
…そして、自分の思った方向とは違う方向にボールが来てしまい、咄嗟に
 反応せざるを得ない時にも、重心が体の内側にあることで、より速く、
 より正確に体をコントロールし、反応できるようになります。


3、卓球の特性に合わせた進化:攻撃型のフットワーク

この話を卓球の特性に合わせて、もっと言うならば卓球王国・中国に勝つための武器として考えるとしたら、何ができるのか。
卓球に必要なフットワークは、「守り:ディフェンス」の役割でもあり「攻撃:オフェンス」の役割でもある。守りのフットワークだけではなく、あくまで攻撃の準備としてフットワークを使えるかどうか。

まず、相手の攻撃に対して、「守る」だけではなく、そのボールの落下点に素早く移動し、自分にとってのベストポジションでボールを受けられるかどうか。
相手の打ったボールに対して、何とか追いつく、くらいつく場面もあるかとは思いますが、理想としては後手後手になる場面をいかに減らせるかという視点が必要になるはずです。
相手の攻撃を自分にとってのベストポジションで受けられることで、そのフットワークは守りのものから攻撃へと変化します。

次は、レシーブの質の向上です。自分のポジションが良い、そして自分の体の重心が常に自分の真ん中にあることで、相手のボールを吸収しやすくなる、弾きにくくなる。

そして、最後は攻撃の多様性です。
まず、自分のポジションが良いことにより、余裕が生まれ、最適な攻撃の選択ができる場面が増えます。


4、フットワークとラケット操作性の関係

さらにもう1点。
「ラケット操作性の向上」があります。
股関節を曲げるフットワークは、体全身に力が入りやすい、つまり連動している状態で体を使うことができます。体は、連動して機能するという特性があるため、元来のトリセツ通りに使ってあげることで、体が本来持っている機能をより引き出すことに繋がります。
では、卓球のように「手」でラケットを持つ場合はどのような機能を引き出せます。

① ラケットを握る力:強弱のつけやすさ、コントロールのしやすさ
…常に一定の力で握るだけではなく、握る力をコントロールしやすく
 なります
② 手首の向き:変化のしやすさ
…フォアハンド、バックハンドの変化だけではなく、「回内・回外」の
 手首の動きが出やすくなります

回内回外


③ 5本の指:操作性の向上
…指を一定の力・形で固定しておくだけではなく、親指側に力を入れる、
 小指側に力を入れるなど、指ごとの強弱も自然とつけやすくなります

実際にここまで細かく考えて手元を操作することはほとんどないと思いますが、ボールに回転を加えたり、バリエーションをつけたりする時には、自然と手元の変化をつけているはずです。その「自然と」のレベルを向上させることに大きく貢献します。その結果、手元に来たボールの処理の質の向上や、ボールをより芯でとらえる、そして攻撃のバリエーションを広げることに繋がっていくでしょう。



5、おわりに

卓球は、選手それぞれにスタイルがあり、技のバリエーションも様々だと思います。ただ、フットワークはどんなプレースタイルであってもすべての選手が行うものだと思いますので、その視点からより高いレベルのパフォーマンスを構築するヒントになればと思い、今回の記事を書きました。
実力が拮抗した、もしくは少し上の選手との闘いに勝つためには、ほんの少し、コンマ何秒、そしてわずか数cm、数mmの精度を上げていくことが欠かせないはずです。
卓球界の王者・中国に勝つ、なんとも言えない最高の、そして最難関のチャレンジに、ワクワクを感じながら今回のnoteを終わりにしたいと思います。






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