見出し画像

【怖い話】紙袋 その2(最終回)

それから数か月したある日の事、妹が部屋に来て言いました。
「ねぇねぇちょっと聞いてよ。怖いことがあったんだよね」
うわぁ出た!またトイレに行けなくなるから聞きたくないけど、怖い話は好きなので聞きます。

以下は妹の話。
登場人物は妹、妹の友人A子、その彼氏B。A子とBはともに霊感が強く、いわゆる見える人らしい。

3人でカラオケに行った後、時間もまだ早いからってドライブに行ったんだよね。とりあえず目的も無く、3人でわいわい盛り上がりながら郊外に行ったのよ。Bが運転してA子が助手席で、私は後ろに座ってたのよ。
でさ、だんだん人家も無くなってさぁ、ダムを過ぎたあたりで・・・

「ちょっと待った!ひょとして公園の前の新しい道路を通って橋に行ったりしてないよな」と僕が話を遮りました。
「えっ!なんかあったの?ちょっといやだ・・・あの新しい橋?」
「やっぱりあの橋か?」

なんだかこれだけで滅茶苦茶怖くなってしまい、聞くのをやめようかとも思ったのですが、もやもやが残るのも嫌だし、橋を越えてどっかに行ってからの話かもしれないで、鳥肌を立てまくりながら続きを促しました。

でね、公園の前の新しい道路をしばらく行ったら、新しい橋が出てきてそれを渡ったのよ。街灯も無くて真っ暗でさ、その橋を渡るとすぐに通行止めだったでしょ?

「いや、俺あの橋は渡ってないんだわ」
「そうなの?」

まぁ、まだ全部は開通していないみたいで、そっから引き返すことになったのね。そしたらさ、A子とBが何かヒソヒソ話してるわけ。
「どうするの」
「戻るしかないだろ」
「大丈夫?」
「大丈夫でしょ」
でさ「どうしたの?なんかした?」って私が聞いたらさ、
「ううん、何でもないよ、後で話すよ」って言うわけ。
なんだか今は聞かない方がよさそうだなって思ってさ、それ以上は聞かなかったのよ。

「それで?」

またさっきの橋を渡ったのね。
そしたらA子が「やっぱり・・・」って言って、Bはスピードを上げたのよ。
でちょっとしたら国道に出てさ、そのまま帰ってきて、駅の東口にあるMバーガーに入ったのね。(当時は24時間営業でした)
あそこの店狭くてさ、細長い店内の片側がカウンターで、片側にテーブル席が何組かあるでしょ。
入り口に近い方の席に座ってさ、ハンバーガーと飲み物を頼んで喋ってたのよ。
そしたら2時ぐらいになっちゃって、眠くなってきたからさ、さっきの車内での会話の意味を聞こうと思って「さっきの引き返す時のやり取りはなんだったの?」って聞いたのよ。

「何か見たか出たかした?」

そしたらさ、A子が言うのね。
「行きの橋を渡った真ん中あたりでさ、橋の両側(暗闇の空間)から
車に触るように、ざわざわと何本も腕が伸びてきてたの。身体は見えないんだけどさ、もう何十本も・・・」
Bも「こりゃまずいと思って、とりあえず早く橋を渡ろうと思ったら行き止まりだったじゃん。仕方無いから戻ったけど、やっぱり帰りも腕がたくさん出て来てさ」って言うわけ。
でも橋を渡ったら何とも無いんだって。

「お前は何にも見えなかったの?」
「全然、外真っ暗だし前はヘッドライトで明るいけど、ただの道路だし。でさ、まだ続きがあんのよ」

まぁ話を聞いて気味は悪いと思ったけど、私がなんか見たわけじゃないしさ、眠いから帰ろうって言ったのね。

そしたらさぁ、二人とも困った顔をしてさ、A子が言うのよ。
「それがさぁ、連れてきちゃったみたいで帰れないのよ」って。
えっ?何が?どこに?って聞いたらBが「店の入り口の自動ドアの横にこっちを向いてずっと睨んでるんだ。5,6歳の男の子」って言うのね。

半ズボン履いてて、子供のできる表情じゃないぐらい恨めしそうな顔で睨んでんだって。慌てて振り返ったんだけどさ、外が見えるだけで何も見えないのよ。

眠いから面倒臭くなってさ「まぁ、子供なんだし、そのまま出ちゃえば?あんま怖くないんじゃない?」って言ったのね、そしたらBがさ「それがさ、片手に茶色い紙袋を握ってるんだよね。それの角が真っ赤になってて、たぶん血が垂れてるんだよ・・・」って。
「えっ、何が入ってるの?」って聞いたんだけどさ「わからない。わからないけど、明らかに血だと思う。ずっと垂れてるんだわ。だから怖くて出られないんだ」って言うわけ、A子も「でもね、なんでかわからないけど、私たちをずっと睨んでる割には、店に入って来ないのよ。人が出入りしてもそのままだし、何故かは解らないけどこの店には入れないんだと思う」って。

「それ聞いて何も見えないけどビビりまくっちゃってさぁ。しばらく店にいたんだけど、4時前になって外が少し明るくなってきたのね」
「お、おう」

そしたらA子が「あっ、いなくなってる」って言ってさ、Bも「本当だ。今のうちに行こう」って言うからさ、急いで店を出て家まで送ってもらったわけよ。
私は別に何も見えなかったけど、血の滴る茶色い紙袋って何入ってると思う?想像すると怖いわ。

その後も特に何かあったわけでもありませんし、今になるまでそのあたりでの怪談話を聞いたことはありません。
それだけに僕と妹が別々のタイミングで、同じ場所で奇妙な体験をして、片方は同じ場所で二人が同時に恐怖感を覚えて、もう片方は信じる信じないは別として、自称見えるという二人が同じものを見ていて、霊的な現象が起きていると言っています。
あれからあの橋を通った事はありません。

おしまい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?