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歪んだ小鍋

持っている調理器具の中でも、一番好きで大切にしているアルミの小鍋は、私が一人暮らしをする時に母が持たせてくれたもの。自分のお金で好きな調理器具を買えるようになった今でも、不動のいちばん。出番も一番多いエースなんじゃないか。


母は料理をしない。しなくなった、というのが正しいのだけれど。

実家には炊飯器もないから、一人暮らしの憧れは炊飯器で炊きたてのご飯を食べることだったし、実はご飯の炊き方から始まって多くの料理を、一人暮らしをしてから、人から教わった。


料理をしなくなった母だけれど、私が子供の頃は食事を作ってくれていた。

例えば、ほうれん草の卵とじや、鰤の煮つけ、椎茸の煮物。毎週のルーティンのように作ってくれたそれらは、毎週のルーティンのように食べていたけれど今でも好きな味。それがこの小鍋から生まれていた。


私はこの小鍋が好き。

アルミの質感、使い勝手の良い大きさ、そして母と繋がっている気がするから。少し歪んでしまったけれど、これからも一緒に過ごしていこうと思う。


写真はその小鍋でつくった、いつしかの筍の土佐煮。

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