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太陽の空より vol.8 河村聡人

太陽活動に振り回された3回にわたる寄り道から、タイトルの「太陽の空」についての個人的な考えの話に戻ります。
vol.4にて、太陽表面でおきる突発的な増光現象(フレア)や太陽の表面から見上げた磁場の話をしていました。見上げた磁場が太陽の空かとも思えますが、僕の考えは少し違います。
今回から3回ほどはその磁場からさらに上空の、そして太陽の空の範囲の話です。

vol.3にて、太陽はその表面が光球と呼ばれ、そこから上空に彩層、そしてコロナと呼ばれる大気が広がっていると紹介しました。コロナとはあくまで見た目で定義されたものであり、大気という天体にひっついた気体というイメージに必ずしも沿ったものではありません。
そのコロナの一部、特に太陽から離れた部分は太陽から吹き出しています。(どこか明確な距離をもってその始まりを定義することはできませんが)
この吹き出した大気のことを太陽風と呼びます。太陽風は常に吹いており、地球周辺にも常に届いています。

太陽にてフレアが起こると、大気が特に速く吹き飛ばされ、太陽風の一部となります。専門的にはコロナ質量放出(Coronal Mass Ejection, CME)と呼びます。この突風とも爆風ともいうべきCMEが地球に到達した時に大規模なオーロラが発生します。突風が伝えるエネルギーが多ければ多いほどより低緯度までオーロラが広がります。
前回までの寄り道で紹介したオーロラの記録を探していた理由になります。

この画像は3つの観測(中心の太陽を映したシアン色:SDO衛星のAIAの131Å、赤色:SOHO衛星のLASCOのC2、外側の青色:同LASCOのC3)を組み合わせたものです(helioviewerによる合成)。
太陽でひときわ明るく輝くフレアの場所からCMEが飛び出している様子をとらえています。

太陽フレアはエネルギーの解放現象であり、一般向けには爆発という言葉をよく使います。激しい現象なので、CMEについても、ものが飛ぶという説明が通りやすいかと思います。一方で通常の太陽風の方はかなり難解です。
次回はかなりマニアックですが、通常の太陽風についての説明にチャレンジ
しようと思います。

河村聡人(かわむら あきと)
アラバマ州立大学ハンツビル校卒(学士・修士)、京都大学大学院退学。太陽・太陽圏物理学が本来の専門。最近は地球観測も。天文教育普及研究会2023年度若手奨励賞受賞。今回はかなりの難産で、定例よりも遅れての公開となってしまいました。すみません。次回に回した原稿ですが、最初はボツのつもりでした。編集長に見せたらアリでは?と言われたので、ちょっと挑戦してみます。

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