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【スターバックの本棚】『シングルマザー、その後』

『シングルマザー、その後』
黒川祥子 著 集英社発刊

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スウェーデンとフランスが、子どもに関する制度が手厚い国と言われており、フランスでは手当という形の経済支援、スウェーデンは福祉サービスが充実していると言われています。

フランスでは、<社会の子ども>という哲学のもと、子どもに対して経済的支援をするのは当たり前だという考え方です。教育費の無償化はもちろん、社会全体で子どもを育むシステムができています。この<社会の子ども>という意識が日本とは決定的に違うということがわかります。

例えば、教育費については、幼稚園から大学まで授業料は基本的に無料で、子どもがいる低所得者層には習い事に対しても補助金が出ます。他に医療費の補助、一般的な住宅手当、妊娠期や子供が病気の際のホームヘルプサービスなどの支援もあるそうです。

それに比べて日本では、ニュースで数年前に、ある自治体で保育所を建てようとした際に、近隣地区の住民が、赤ちゃんの声を騒音だと言って反対している映像を放送していました。生まれた時には、すべての人が赤ちゃんで、大なり小なり、迷惑をかけて大きくなったのではないでしょうか。もし日本にも<社会の子ども>という意識があればどうなのでしょう。

子どもを育てている女性に対して、日本社会は排他的で、冷たいと感じています。

少子化による人口減少を国難だと言いながらも、旧態依然とした家父長的な価値観を押しつける政策がまかり通っており、まさに日本社会全体の問題だと言えると思います。

シングルマザーの困難は女性の貧困、この国における女性の存在のあまりの軽さということにも通じていると思います。あとがきにもあったバス停ホームレス女性殺人事件と、シングルマザーのことは決して無縁ではないはずです。そういう意味で、本書は女性を巡る日本社会の問題にも接続しています。

子どものこと、女性のことが社会問題として捉えられていないこの国にあってこそ、 ぜひ、すべての方々に読んでいただきたい本だと思い、帯も書かせていただきました。

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隆祥館書店:二村 知子 | Tomoko Futamura
隆祥館書店店主 井村雅代コーチ(当時)に師事し、シンクロナイズドスイミングを始め、現役時代はチーム競技で2年連続日本1位、日本代表として2年連続世界第3位に。現役引退後、隆祥館書店に入社。2011年から「作家と読者の集い」と称したト-クイベントを開催、2016年からは「ママと赤ちゃんのための集い場」を毎月開き、2019年4月からは、宝上真弓先生と子育てに悩む親御さんのために絵本選書の無料サ-ビス、2020年6月より、お客様からのリクエストを受け一万円選書を始めている。

隆祥館書店:http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/


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