「宇宙×美容」宇宙生活における美容の現在と未来-後編-[斉藤良佳]
今号は、宇宙美容機構の皆さんへのインタビューの後編です。今回は宇宙美容機構の現在の取り組みや将来について伺いました!
宇宙美容とは?宇宙美容は地上にどう役立つのか?気になる読者の皆さん、必見です。
前編については、こちらからお読みください。
前編:「宇宙×美容」宇宙生活における美容の現在と未来-前編
海外の「美容」の価値観は、日本とは違うのですか?
寺岡さん(以下「寺」):国というより、人によりさまざまです。メイクなどの行為のみならず、日常行為・メンタル的な側面なども含めて全て美容です。様々な文化的背景からできた美容もあるので、宇宙美容という概念も生みだす必要があります。
殿木さん(以下「殿」):宇宙の特殊性は、いろいろな地域から来た人が狭いところに一緒に住むことです。見ているものが同じだと価値観が共有されるので、アイデンティティや共通点が生まれて、新たな美容文化が生まれてくると思います。旅行が始まったりするとまた美容の価値観も変わってきます。宇宙ホテルも最初は富裕層が象徴的な宇宙の生活を体験するものですが、一般の人が宇宙に行くようになれば違う文化が形成されると思います。
SS斉藤:文化を作るというのはワクワクする話ですね。
殿:宇宙での美容をどうすればいいかを自分達が作っていかないといけないなと思っています。シナリオやロードマップを作って、未来を見える化しようと。
現在重点的に取り組まれていることは何ですか?
寺:主な取り組みとしては、現在会員企業の皆様と、
A : 宇宙の暮らしと美容の開発シナリオ、ビジョン作り
B : 課題のリスト化・体系化
C : 宇宙での美容のHow-to作り
という3つの共創プロジェクトを進めています。その中で、宇宙に取り組む意義についての議論や、来年宇宙にいかれる稲波さんを美容でサポートするプロジェクトなどにも取り組んでいます。
殿:宇宙での暮らし・美容の課題と言ってもあまりに膨大ですので、絞れません。笑 ひとまず、民間旅行で、人が宇宙に行く未来という想定で、美容をどうするかを考える。今は課題をリスト化している段階です。
寺:化粧品には様々な成分が含まれているのですが、その中には、データがなく宇宙での安全性がわからないものも多い。そのなかでも情報を集めて宇宙での使用基準やスタンダードを作っている段階です。
また、個人の会員の皆様と一緒に宇宙美容について学び、宇宙コスメ制作や宇宙ヘアサロンについて考えるSpace Beauty Community活動も11月より開始しました。
さらに外部との連携として、 THINK SPACE LIFE、 一社)Space Medical Acceleratorさんと一緒に宇宙の暮らし全体のシナリオ・ビジョン作り、そして将来のLEO(Low Earth Orbit 低軌道)、月での暮らしのイラスト化にも取り組んでいます。 来年には、それぞれの取り組みのアウトプットも一部発表できると思いますので、ご期待ください。
地上の美容業界へのメリットはありますか?
殿:宇宙での生活はエシカルでありサステナブルなので、地上でのSDGsにも繋がるものがあります。必要以上のモノを持っていけないですから、大量生産や大量消費の世界を見つめ直すきっかけになると思います。宇宙の美容を考えることでSDGsなどにも新たなイノベーションが生まれると思っています。
寺:最近地上では製品が飽和しがちですが、本当に必要なものは何なのか、考える上での試金石になるのではないでしょうか。美容業界は最新の流行を生み出しているようで、意外に内側はアナログで、他の業界に比べてIT化や異業種からの参入も遅い業界でした。最近になってやっとITなどが入ってくるようになりました。宇宙美容はそうした美容業界の未来を問いかけるきっかけになるのではと思います。
殿:最近は機械化やAIが入ってきているので、自動カットの時代もくるかもしれません。そうすると美容師にはセンスが求められるようになります。宇宙は最先端ですが原始的な場所、そのミックスが面白いところですよね。
SS斉藤:確かに、想像以上に泥臭いですね(笑)ある意味キャンプのようなイメージという…
寺:本当に。その泥臭さは、宇宙美容という名前のせいで伝わらなかったりしますが(笑)
SS斉藤:宇宙に行く人が限られているからこそのニーズもあるのかな、と思うのですが。個人に合わせた肌質の分析だったり…宇宙での癒しにつながるようなケアとか。
殿:そうですね。宇宙に行くからこそのメリットもあるはずで、それを探そうとしています。
今後の展望を聞かせてください
殿:THINK SPACE LIFEと共に宇宙の暮らしのシナリオ・ビジョンを作るプロジェクトをしています。また、企業との共創プロジェクトをきっちりと運用することや、シンポジウムや機関誌で認知度を高めていくことです。
寺:その他に、価値を明確にすることも必要だと思います。宇宙を持続的に開発して、そこにお金を払っていいという価値を見出していくこと。自己満足ではいけないと思っています。立ち上げ前にやりたいと言っていたことが今できているので、いろいろな方を招き入れて楽しいことをやっていけたらと思います。
取材のまとめ
宇宙美容とSDGsは、確かに共通点がありますね!環境に優しくて宇宙でも使える…なんと素敵な製品なのでしょう。
今回の取材を通じ、自分の想像していた宇宙美容はほんの一部分で、どのような宇宙の環境でどのような美容が行われるかによってさまざまな形があるのだと知りました。
宇宙美容の幅広さを理解し、多くのプレイヤーが参入することで、宇宙美容・ひいては宇宙の生活への取り組みが日本の強みにできるのではないかと感じます。
宇宙美容シンポジウムなどさまざまな活動を行なう宇宙美容機構の今後に目が離せません!
今回の取材がご縁で、宇宙メルマガTHE VOYAGEについても、宇宙美容機構が発行する宇宙の美容を創造する、世界初の宇宙美容マガジン『MIRROR vol.03』に掲載して頂くことになりました。宇宙メルマガTHE VOYAGEの読者の皆さんにも、ぜひ『MIRROR』を手に取って頂ければと思います!
寺岡 慎太郎
一般社団法人宇宙美容機構 Founder/代表理事
Spacecosmetology株式会社 Founder/CEO
NYでヘアメイクアーティストとしても活動。真の美しさとは何か、未来の美容とは、宇宙での美容はどうなるのかという考えにたどり着き、宇宙美容という美容分野でも宇宙分野でも未開拓の分野でフロンティアとなるべく、2019年Space cosmetology株式会社を設立し、宇宙美容プロジェクトを開始。2021年 JAXA THINK SPACE LIFE コミュニティでの活動から一般社団法人宇宙美容機構を設立。
殿木修司
一般社団法人宇宙美容機構 Co-founder 理事/Spacecosmetology株式会社 Co-founder/株式会社ビューマックス 代表取締役/株式会社Beautyline 代表取締役
/特定非営利活動法人 Beaufa 代表理事
クリエイター・アーティストとして活動をする傍ら、美容に特化した株式会社ビューマックスを創業。
ビューティークリエイティブディレクターとしてブランディング、商品企画・研究開発、広告宣伝物制作、プロモーション、美容理論開発、ソフト・メゾッド開発など、化粧品会社の幅広い業務を請け負う。
森裕和
一般社団法人宇宙美容機構 理事
英エジンバラ大学理論宇宙物理学部飛び級入学・首席卒業。
エジンバラ王立協会から支援金を受け、理論宇宙論の研究(重力波・修正重力論)経験あり。
プロダイバーとして地中海で活躍し若手プロダイバーとして欧州・地中海エリアで賞も受賞し有名ダイビング雑誌に掲載される。バックパッカーの経験もあり、現在までに約90カ国訪問。日本に帰国後、野村総合研究所で経営コンサルタントとして、宇宙×グローバル×DXの新規事業創出と事業戦略をテーマに戦略コンサルティングを行う。世界初民間宇宙飛行士訓練施設Blue AbyssのCo-Founder兼VP of Business Development、アジア最大級の宇宙ビジネスプラットフォームSPACETIDE CxOアドバイザー、宇宙美容機構 理事など併任。Satellite ShowやSmallSat Conference、World Satellite Business Weekやオーストラリア政府主催の地球観測会議GEOWEEK2019のインダストリトラック等で多数登壇。趣味は沈船・海中洞窟ダイビング、飛行機操縦、ピアノ演奏、美術、宇宙物理等。宇宙飛行士として月面探査に参加するべく日々研磨している。
斉藤良佳(さいとうよしか)
京都大学医学部5年。一般社団法人Space Medical Accelerator理事。宇宙医学を学ぶ学生団体Space Medicine Japan Youth Community運営。宇宙医学を学び、その可能性を模索する傍ら、宇宙ビジネスにも興味を持ち、一般社団法人SPACETIDEでプロボノとして活動。
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