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戦い

プシュー
「Cもやられちまったか。」
「もうこんなの耐えられないわ。」
「仕方ないだろ、ここに逃げ込んできたのが運の尽きだ。あいつらを倒すのは無理がある、だから俺たちは逃げるしか無いんだよ。」
「逃げるって言ってもさ、あいつらは絶対追いかけてくるんだよ。毒も出してくる、これじゃあ逃げられないよ。」
「あいつらの毒が切れるのを待つんだ、そうなれば逃げ道が見える。逃げ切れればこの戦いに勝てるかもしれない。」
AとBはビルの隙間のような狭い場所に隠れてお互いに不安な表情を浮かべている。
「今ここに毒を撒かれたらお終いだよ。」
「ああ、わかってる、だからあいつらの目に着かないところに逃げなければいけない。だが、幸い今あいつらは俺たちを見失っている。焦ることはない、落ち着いて行動しよう。」
「うん、この子たちも守ってあげないとだもんね。」
Bがお腹をさすっている。
「ああ、絶対守ってやる。」
周りが静寂に包まれている。
「よし、あいつらは今ここにいないようだ、早く逃げるぞ。」
Bは固唾を飲みコクリと頷いた。だが、その時、プシューという音が聞こえた。
「ねえ、あいつら来ちゃったよ、早く逃げようよ。」
Aは不安な表情を浮かべて何か決心したようにBの方を見ている。
「どうしたの、逃げないと死んじゃうよ。」
「なあ、このままだと逃げられない。俺が囮になってあいつらの目の前を逃げ回る、その間にお前は逃げろ、お腹の子たちと一緒にな。」
「そんなことしたらAは死んじゃうよ、嫌だよそんなの。」
「お前たちが死ぬよりマシだよ、子供の顔見たかったって思うけど、それは叶わないな。お前たちが逃げ切れたら子供達に俺が居たということを教えてやって欲しい。それが今の夢だ。」
「嫌だよ。」
「Bごめんな。今までありがとう、ちゃんと生き残れよ。」
「生きて帰ってきてね。」
そう言ってAはあいつらのもとへ飛び出していった。10分ほどあいつらを撹乱したが、その後毒によって死んでしまった。

「ねえあなた、あそこにもゴキブリのがいるわよ、早くやっつけてよ。」
男はまたかと、溜息を吐き、害虫スプレーを取り出した。
「わかったよ、さっきの奴みたいに逃げ回らなきゃいいけど。なんであんなところ止まってんだよ、面倒くさいな。」
プスッ。
「あれ、害虫スプレーが切れちゃったみたいだ。」
「どうするのよ、早くやっつけてよ、見てるだけで気持ち悪いわ。」
男はまた面倒くさそうに新聞紙を取り出し丸めた。その新聞紙がゴキブリ目掛けて一直線に振り下ろされた。
パシン。
「よし、死んだぞ。」
「これで安心だわ。」

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