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「気配」が確かにそこにある! ポーラ美術館で「フィリップ・パレーノ あの場所、あの空」展

生き物なのか、無機質な物なのか、何かと「気配」を感じる不思議な展覧会、フィリップ・パレーノ展に行ってきました。

国内では最大規模の個展とのこと、そしてパリを代表するアーティストの個展ということで気持ちが引き締まります!

2024年7月に訪れました。場所は箱根のポーラ美術館です。

(このnoteには収蔵作品展やHIKARU Projectについても書いてあるので、長めのnoteになっています。目次をぜひご覧ください。)


感想

展示されているごあいさつや解説が作品を理解するのにとても役に立ちました。
アートは感じたまま受け取れば良いとよく言われるけれど、何か分からないということが私にとってはとてもストレスになってしまうので、美術館に行くと解説をよく読ませてもらいます。(頭を真っさらにしてというのが苦手です。昭和の教育で育ったから?)

フィリップ・パレーノ『暗転(ボルダーズ・ビーチ)』

現代アートとなれば尚更訳が分からないのでは!と構えていたのですが、今回の展覧会では、会場入ってすぐの「ごあいさつ」に何者かの気配、声、光、暗闇、隠されたメッセージ驚きと混乱の体験という言葉があり、私としてはこの「気配」という言葉で作品を観る心の準備ができました。

そして、展覧会での体験はその通りだったように思います。

入場料が2,200円になっています

この日は梅雨らしい天気でした

美術館へ続く道
霧に包まれて幻想的でした

そうなんです。
2024年6月8日より入場料が2,200円に変更されています。
ちょっと厳しいですが、仕方ないですね〜

私はこの美術検定3級認定証を提示することで、200円割引の2,000円で入らせてもらいました!美術検定がんばって良かったです!

フィリップ・パレーノについての前情報

現代アートは見る前にアーティストについて勉強しておくと良いという、職場の学芸員さんからの助言をいただいているので、ここに少し勉強しておいたことを書いておきます。

フィリップ・パレーノ
・現在60歳。アルジェリア生まれのパリ在住。
・2024年2月から7月7日まで(ついこの間まで!)韓国のソウルでアジア最大規模の個展を開催していた。リウム・ミュージアムにて。
・来年、「岡山芸術交流2025」ではアーティスティック・ディレクターを務めるそう。9月26日から11月24日まで
・2019年から2020年まで、東京ワタリウム美術館で個展「A Manifestation of Objects,」が開催されていた。
・音、光、映像など様々なメディアを使って知覚や体験に揺さぶりかけるアーティスト。

ネットで集めた情報です


このnoteでは印象に残った作品を3つ紹介します。
ちなみに写真撮影は基本的にOKで、動画も1分以内ならOKでした。

印象に残った作品1『私の部屋は金魚鉢』

アーティストが一つ一つの目を描いたそう

作品名の通り、展示室に入るとバルーンでできた魚がそこかしこにいました。

ギョッとするような魚もいました。気配はというと、あまり感じられません。
そこで私のイメージが膨らみます。
あまり気配を感じることのできないこの魚のバルーンが、暗い部屋(展示室は明るいです)の中で一人の時に、ふと振り返っていたりしたら、それはもう仰天ですよ〜!

と、いろいろイメージは膨らむのですが、中には可愛い感じの魚もいました。可愛いのは天井の方を泳いでいてなかなかうまく写真が撮れませんでした。

それにしても、展示室1室を丸々使って展示しているのは面白いなと思いました。

部屋中にバルーンと言うと、子供たちが風船と戯れる子育て支援センター的な雰囲気になっているのかなと思ったのですが、そこはやはり違いました。

バルーンには触っても良さそうでしたが、
大事な作品なので蹴ったりしないであげてほしいです

魚の目の部分はアーティストが一つ一つ描いたそうです。そうすることで知性を宿したとのこと。

うーん。確かにこちらに何か物言いだけではあります。

写真を見返すと、背景の箱根の木々が雨に打たれてとても綺麗です。この空間が水で満たされているような錯覚に陥りますね。

さて、次の展示室へ。
すると展示室の中から何やらゴーっという音が聞こえてきました。

印象に残った作品2『マリリン』と『ヘリオトロープ』

映像によるマリリン・モンローの肖像が流れていました。
音の正体は雨音です。

1955年、マリリン・モンローが映画撮影のため滞在していたホテルの部屋を映し出していました。

AIによるマリリンの声がその部屋の様子を説明しています。マリリンの姿は一切なく、声と部屋の映像だけでマリリンはその気配だけで表現されています。

脇にあるピアノからは不安や孤独などを連想させるような和音が聞こえてきます。

ピアノの存在感が大きかったです
勝手に和音を鳴らします

孤独、不安、寂しさを私はこの展示から感じたのですが、これがマリリン・モンローの肖像とのことです。

解説には、稀代のセレブリティとしての、あまりに魅惑的なペルソナと、その陰に隠れた一人の女性とマリリンのことを表現していました。

その陰に隠れた一人の女性の部分がひしひしと伝わってくる展示でした。

そして振り返ると、ブラインドが開き、『ヘリオトロープ』という作品が姿を見せます。

雨空の下、異様な明るさを放っていました

なぜ、ここに?
『マリリン』の反対側になぜこの作品を配置したのかは説明がありませんでした。

ただ、『マリリン』を観た後のこの『ヘリオトロープ』のミスマッチさが印象に残っています。

けど、そのミスマッチさが現実を表しているということなのかもしれません。

印象に残った作品3『幸せな結末』

もう一つ印象に残っているのが、こちらの作品↓

お互いのライトが重なる部分がとても綺麗でした

ただの電気スタンドなのですが、「幸せの結末」というタイトルが付けられています。

一対のセットの作品なのかと思ったら、一つは作家蔵、もう一つはアンナ・レナ・ヴァニーのコレクションとなっていました。

右のスタンドが見えなくなりました

片方が見えなくなったかと思うと、もう片方も見えなくなったりします

次は左のスタンドが消えました

電気スタンドが会話しているように思えます。

両方とも同時期に造られたようで、この展覧会で再び会うことができて嬉しそうに見えました。

こうしてキャプションの情報だけでも、無機質な電気スタンドも擬人化して見えてくるからまた面白いですね。これも、「気配」や「隠されたメッセージ」に繋がるように感じます。

できれば、この作品の背景をもっと知りたかったです。

驚き!来館者がいなくなった後もアートはそこに!

実は、作品リストを見ていて気になったことがありました。
それがこちら↓

ポーラ美術館HP作品リストより

エントランスに『ホタル』という展示があるそうです。

どこにあるのか気になってスタッフの方に聞いてみると、なんと暗くなってからでないと見ることができないそうです。

がびーん!

観てみたかったー。夜まではさすがに待てないです。

家に帰ってからも夜の暗闇に光るであろう「ホタル」の展示の「気配」を感じてくれということなのでしょうか!(←深読みしすぎ?)

もし、行く機会のある方がいたら、ぜひどんな展示だったのか教えてほしいです。

制作途中の図録について

前回の展覧会の時もそうだったのですが、今回も図録は制作中とのことで販売されていませんでした。
お店のスタッフに聞くと、アーティストが来館される際の写真も盛り込みたいのでまだ制作中とのことでした。
フィリップ・パレーノ本人がいらっしゃるということ?
(お写真見たら、スキンヘッドの素敵な方でした!かっこいい)
すごいなぁ。

で、販売時期は未定だけど、10月あたりにはとのことでした。

ちなみに、受付に言うとミュージアムショップだけの利用も可能とのことでした。

1冊、欲しいです。買いに来ちゃおうかな。

収蔵作品展がとても良かった!

さて、フィリップ・パレーノ展を堪能して、収蔵作品展を観に行きます。

何なのでしょうか、収蔵作品展に行くとちょっと安堵感を感じました。
現代アートはとてもアクティブで、こちらから行かなくても、そちらから勝手に来られてしまう感じがあり、まだ慣れてないのかもしれません。

3組のガラス工芸家のことが分かりやすく展示されていました

こちらの収蔵作品展では、モディリアーニとアンリ・ルソーの絵画、それからガラス工芸を観ることができました。

アメデオ・モディリアーニ 『ルネ』

小さな女の子が、「目がガラスみたーい!こわーい!」と大声で叫んでいました笑
私も、正直、そう思います!

アンリ・ルソー『ライオンのいるジャングル』

原田マハさんの「楽園のカンヴァス」を読んでからというもの、アンリ・ルソーの絵を観るととても微笑ましく思ってしまいます。
一生懸命さやヤドヴィガへの一途な想いも思い出します。

ルソーの絵に3枚も出会えました。とて贅沢ですね〜

そして、ガラス工芸です。

ドーム兄弟『花形ランプ』

解説が短く、分かりやすくて助かりました。
ドーム兄弟はガレのライバル的存在だったんですね。
工場もガレと同じナンシーという地に構えていたそうです。
アール・ヌーヴォーの代表的なガラス工芸家。

エミール・ガレ『草花文耳付花瓶』

エミール・ガレはフランスのガラス工芸でアール・ヌーヴォーの先駆けだったそうです。
流行にも敏感だったようです。
確かにとても繊細ですね。色使いがとても綺麗。
自然に対する愛情を感じます。こんな柄のドレスがあったら素敵ですね。

ルイス・C・ティファニー『花形花器』

ティファニー?え?あのティファニー?
と、平民丸出しの私でしたが、ここでも解説に助けられます。

あのティファニーのご長男でした。
アメリカのアール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家なんだそう。

すごいなぁ。

モネを勝手に友だちだと勘違いして観てみる

そして、いちばんテンションがバク上がりしたのがこちらの展示でした

というのも、山田五郎さんのこちらの本↓

購入してから、印象派の勉強をしているのです!

ちょっと恥ずかしいですが^^;
学生に戻った気分で勉強しています
このページはモネとサロンについて

こうして自分なりに勉強してから絵画を観ると、画家の存在がより身近に感じられるようになりました。

クロード・モネ『睡蓮の池』

描かれた年代を気にしてみたり、細かな筆のタッチを観てみたり、画家の存在が近くなった分、以前と見方に変化がありました。(むしろ勝手に友だちの絵を観に来たような気分でした笑)

額がゴージャスでした!
細かな筆のタッチまで見てみました

毎回楽しみなHIKARU Project

HIRAKU Projectは、過去にポーラ美術振興財団の助成を受けた作家を紹介する展覧会で、入り口からエスカレーターを降りた小さなスペースで開催されています。

今回も(って、毎回来てる訳ではないのですが)素敵な展示でした。

鈴木のぞみ『The Rings of Saturn 舷窓(げんそう)ーアイリッシュ海』

その窓からかつて見えたであろう風景を撮影、焼き付けているそうです。
かっこいいですね。

鈴木のぞみ『Other Days, Other Eyes: ニューイントン・アベニュー ベルファスト』

レストランのランチメニューも変わっていた

ポーラ美術館で食べるシーフードカレーがとても美味しくて、今回もそれをいただこうとレストランへ行きました。
が、メニューのどこを探してもシーフードカレーの文字は見つけられませんでした。

残念。

そして、いただいのがこちら↓

左奥のお皿にはパンが2つ
右奥のお皿にはサラダが付いてきました

私はお肉が食べられないので、ヘルシーメニュー1択です。
写真のメインのお皿に、パン2つとサラダが付きます。(お腹空きすぎてて、撮影前にサラダは食べてしまいました)

お値段は2,050円でした。

ヘルシーでしたが、ソースの味がしっかりしていて満足でした!
ごちそうさまでした。

まとめ

フィリップ・パレーノの展覧会では、現代アート初心者の私には良い意味で意外性があって、「そうくるかー」と何度も思いました。

フィリップ・パレーノ『ふきだし(ブロンズ)』
小さく「うわぁっ」と悲鳴をあげてしまいました
ちょっと気持ち悪かったです

量的にも観終わった後、どっぷり疲れるということはなく、そこはライトな感じで良かったです。座って鑑賞する映像作品もあったりしたので、もう少し展示作品があっても、40代の私でもまだいけた気がします。

それから、収蔵作品の展示は、マイブームの印象派ということも重なってかなり楽しませていただきました。

アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック『ムーラン・ド・ラ・ガレットにて』

絵画の見方が以前と比べると変わってきたことも嬉しい発見でした。

ポーラ美術館は入館料が変わったり、レストランのメニューも変わったり、プチリニューアルされていたようです。
それでも、こうして名画に出会えるのはとてもありがたいです。

次はどの美術館に行こうか、とても楽しみです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

またnote書きます!



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