直島の振り返りと『直島 瀬戸内アートの楽園』感想

twitterって最近あまり性に合わない。たぶん、思いついたことをパパパパと書いていくためのSNSって本当はtwitterの方が機能的にはふさわしいのだろうけど、どうも、そういうふうにうまく使えなくなった。おそらくは私の文章が基本的に回りくどいということもある。

で、noteってまあ文字数制限もないし、そういうふうに使ってもいいのかなという気もした。のでやってみることにする。

直島の話である。

とりあえずこの書籍を読んでみた。

「完全自然エネルギー」「自然との親和」。直島や他の島々のアートプロジェクトを通して実現しようとするところの試み。について、読んで知ってふーんとなり、今回直島だけだったが、豊島と犬島は面白そうだなあ、行ってみたいなあと思うとともに、ちょっとうまく飲み込めないところもあった。
直島において、私はあまりそういうふうに感じなかったからである。

地中美術館は、ある種の有機的・曲線的な建築ではあるが、コンクリートの極めて厳然とした佇まいは間違いなく、確固たる「安藤忠雄の空間」を作り出している。その空間の中、地の下をさまよったあと「地中カフェ」の横長の窓を通ってもう一度外へ放り出されたときに、人は自然、海、島というものに改めて以前とは異なる姿勢で向き合うことになる……というのが地中美術館のコンセプトである(と見て思ったし本書の解説も私はそのように読解した)(本筋とは関係ないが付け加えると、そのようなわけで地中美術館は展示スペースだけでなくカフェまで行かないと体験として完成しないように思われ、それはちょっとびっくりだった。私ときたらうっかり、字面通りカフェとして受け取って「喉乾いてないしいいかなー」と素通りするところだった。そんなヌケた来訪者はいないということなのか?)。ということはそれは、非常に使い古された言い回しになってしまうが、「自然と人工の対比」ではないのだろうか。
いや、対比とは言えなくむしろ、スイカに塩をかけるような、メロンに生ハムを乗せるようなものであって、それはともすれば我々現代人にとりただの風景、ただの背景となってしまいかねないような「ありのまま」の自然を、際立たせ意識させるというアートなのである……というようなスジも分からないではない。しかしながら、自己の体験を振り返って思うに、どうも私は、人間の計算を神の法の中に置かれるとケツがかゆくなる性質を持っているようだ。

神、というのは即ち地霊や自然や……
いやまあその辺の言及は省く(参照)。

人工の/数学の神殿については、それはそれで良いと思える。ウォルター・デ・マリアの『タイム/タイムレス/ノー・タイム』は安藤忠雄建築の巨大な空間の中に、真っ黒な真球が(『GANTZ』のアレみたいに)鎮座している。その周囲を金箔貼りの三角や四角や五角形の柱が取り囲んでいる。これはこれで非常に美しい幾何学の祈りである。
しかし例えば家プロジェクトの『護王神社』では、古い神社の形を、あるいはその構造的な比率を割り出し、あるいはこうあったかもしれないというさらに古い神域の空間構成をフィクションすることで、再現しつつ作品となしている。
これにはどうもムズムズしてしまうのである。

どうしてなのか。おそらくだが、私はそこにあちこちへの、複数の視線を読み取ってしまって落ち着かなくなるのだと思う。そのようにして造形しながら、最新のガラスを使った階段がそこに配される。古代への「リスペクト」、であると同時に、未来への目配せ、を感じてしまうのである。現代の「我々が」ここにいる、という勇みのような。あっちこっち見られてしまって、要するに、気が散る。
それにそもそも、祈りとはひとり神のみ(美とか高みとか海とかに置き換えていただいてもマア構わない)に向かうものであると私は捉えていて、それは現代アートとは相性が合わないのではないのだろうか? 現代アートとは、どうやら必然的に「我々」の話をするもののようだから。

もうひとつうまく飲み込めない。

豊島美術館には行ってみたい。コンクリートのシェルの中に入り、そこまで及んでくる風雨や虫や匂いの「そよ風」を静かにつぶさに汲み取る。そこから外へ出て、真に無数の自然に囲まれていることを知る、という構成意図と読み取った。これは建築と自然との関係性として非常に面白そうだ。
アーティストの文章が一番響いたのは犬島の柳 幸典『精錬所』である。犬島は機会があるか分からないが少なくともこのアーティストの作品はいつか体験してみたい。

と、色々書いてきて全てをひっくり返すようだが、これは単に、私が古代美術を偏愛しているからこう思うだけだ、というような気もする。
なかなかに難しい。
現時点での覚書、一読した感想文として。

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