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ペンギンの家

アナトール・フランスの『ペンギンの島』という本がある。
ある聖人があやまってペンギンを洗礼してしまうという話だ。
あらすじだけ読むととても面白そうな本であるし、実際面白いのだと思う。残念ながら私は全ページ読んでいないのでこのくらいしか語れないのだが。
それはそうとして、私は家のペンギン達を整理していた。サメたちと遊ぶのにかまけて、ペンギンのことを放ってしまっていたからだ。
そうすれば出るわ出るわペンギンのぬいぐるみ。
いつの間にこんなに繁殖したんだと思いながら(もちろん私が増やした)、袋に閉まっていく。
なぜこんなに増えたのか。

理由を説明しよう。
私が初めて出会ったペンギンは、ぬいぐるみのペンギンだった。
どこか昭和を感じさせるフォルムで、しかし、小学校入学前だった私はそのペンギンに一目惚れしてしまう。
ここまでは良かった。
その後、10歳になるかならないかくらいで古本屋で奇跡の出会いを果たす。
『ペンギン・コレクション』あの上田一生先生の著作である。
しかしその頃の私はそんなことなどつゆ知らず、読んで感激を受ける。
「大人になってもペンギン好きでいいんだ」
「大人になってもペンギンをコレクションしてもいいんだ」
これが私の運命を変えることとなる。
ペンギンは順調に増え始めた。最初に出会ったペンギンがぬいぐるみだったために、集めるのはぬいぐるみが中心だった。
当たり前だがぬいぐるみはかさばる。
厳しい両親だったのでかなり買うのは抑えていたが、それでもペンギンは繁殖した。
そして、一人暮らしをしてさらに繁殖し始めた。
実物に近いペンギンがとにかく好きで、一目出会ってしまえば、そのペンギンのことしか考えられなくなってしまう。頭の中はペンギンだらけ。
それでも、ぬいぐるみだけに留めておけばよかったのだ。
『ペンギン・コレクション』に触発された私は、手当たり次第にペンギンを集めるコレクターとなってしまった。一応、自分が気に入るかどうかの基準はあるが、そんなもの天下のペンギン様の前ではゆるゆるである。私はペンギン様に跪き、そっとカゴに入れてレジに持っていくしかないのだ。
私はペンギンに操られているのでどうしょうもない。
ついでに最近はちょっとサメも養殖した。

気付けば、私の部屋はぬいぐるみに占領されていた。多分そのうちぬいぐるみ専用部屋とかができて、私はベランダで寝ることになるのだろう。まあそれでもいっか。

こうして今年もペンギンは増え続けるのであった。

追伸:よさそうなペンギンのぬいぐるみを見つけたら情報ください。

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