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俺のニコルソンはハードボイルド。映画『チャイナタウン』ネタバレ感想文。


1974年のアメリカ映画。監督はロマン・ポランスキー。タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のディカプリオの隣人ね。
主演は若きジャック・ニコルソン。共演は『俺たちに明日はない』で蜂の巣になったはずのフェイ・ダナウェイとハードボイルドの古典『マルタの鷹』の監督ジョン・ヒューストン。
私がこの映画を観るのは2004年以来2度目。

ジャック・ニコルソンは『シャイニング』や『バットマン』のジョーカーといった個性的な役柄が印象的ですが、私はこの孤高の探偵ジェイク・ギテスの鼻絆創膏の印象も強くあります。少なくともちゃんとした人間だし。

映画の設定は1930年代後半のロサンゼルス。
この頃実際に、水利権問題ってのがあったそうですな。カリフォルニア州はこの頃どころか未だにいろんな利権や既得権が残っていて政治的に難しい場所だとか。シュワルツェネッガー知事でも抑え込めなかったらしい。

原案・脚本のロバート・タウンは、そうした利権問題等を扱った「裏LA史」3部作を目指していたそうです。
本作の結末を巡ってポランスキーと揉めたことで「2度とポランスキーにはやらせねえ」と思ったのか、約15年を経てやっと製作にこぎつけた2作目『黄昏のチャイナタウン』(90年)は自らのメガホンで撮りたかったらしい。
ところが、ジャック・ニコルソンが奪い取るような格好で監督も兼任してしまいます。だって、若手だったニコルソンも既に超大物。『バットマン』ジョーカーが前年の89年だからね。逆に言えば続編作るのが遅いよ。
結果、映画は大失敗し(私は未見なのですが)、ロジャー・コーマン門下生以来の盟友だった二人の間にも亀裂が入り、3作目は作られないまま今日に至るという次第です。

ハッピーエンドにしたかったロバート・タウンと悲劇的結末にしたいポランスキーの衝突は、ハリウッド的発想とヨーロッパ映画的発想の違いなのでしょうが、もしかすると続編が視野にあった原作者(脚本家)と「古典的王道ハードボイルド」をやりたかった監督の方向性の違いだったのかもしれません。
だって、事件を解決できなかった探偵の続編なんて期待できないでしょ?
金田一耕助なんかは、殺人防御率は悪いんだけど、事件は解決してるんですよ。ほんとアイツ「しまったぁ!」とかいつも言ってるくせに、なんとなく「めでたしめでたし」感を出すんだよな。

半世紀近くも昔の有名映画なので、後日談的に語られるこうした周辺エピソードが多いんですよね。
本当はそういう「情報」じゃなくて、当時リアルタイムで鑑賞した気分で素直な「感想」を書くべきなんですけど。
これ、当時観ても面白かったのかなあ?
もしかすると、『ダーティハリー 』(71年)、『フレンチ・コネクション』(71年)といった「リアルタイムの時代」の「アウトロー刑事」が新鮮な時期で、今さら中折れ帽の私立探偵なんて「古臭い」「ハンフリー・ボガードかっ!」と酷評していたかもしれません。
そうか!「ボギーあんたの時代はよかった」(沢田研二「勝手にしやがれ」(77年))ってまさにこの時代だったんだ!

そう考えると、 クリント・イーストウッド、ジーン・ハックマン、ジャック・ニコルソンと、この頃のハードボイルド界隈は個性的で面白い役者が目白押しでしたね。
(2021.02.02 BSにて鑑賞 ★★★★☆)

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監督:ロマン・ポランスキー/1974年 米

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