ピープルフライドストーリー (28)D君とH君の話

      第28回
    D君 と H君
       の
       話
          by    三毛乱

・D君の話
 D君が駅近くのトイレの個室に入ると、壁には落書きがいっぱいあったそうである。その中に『この女は簡単にヤらしてくれるゾ。電話番号は○○○─○○○………。名前は、○○○○』などと書かれたのがあった。D君は20代の好奇心旺盛な男性だった。訝しみながらも、電話を掛けてみたそうである。相手が出た。でも無言のままだった。「…………」D君も無言で息を飲むばかり。しばらく、そんな無言の時間が続いた。ついに、D君が「……あのう」と喋り始めた瞬間、相手から「殺すぞっ!」と男の声で言われたそうである。D君は慌てて電話を切った。(私はD君に対して、不謹慎ながら笑ってしまった。D君も災難だったかもしれないが、単なる好奇心が危険な場面に繋がる事も分かっただろうし、電話相手の男も、いたずらの無言電話ばかり続いてイライラしてたのかもしれないという可哀想な面もあるのではと思うのだが……。それとも、わざわざ壁に自分の電話番号を書き添えて、掛かって来た電話相手に「殺すぞ!」と言いたいという危険な複雑心理の男だったのだろうか?……)

・H君の話
 H君はその時ひどく酔っぱらっていた。起きても、部屋の中がグルグル回っていた。頭も痛い。壁には、等身大に近い女性のヌードのピンナップが貼られていた。股間のヘアーが妙に動めいていた。H君は頭を押さえながら、ゆっくり目をこらしていくと、そのヘアーがササササッと動いた。ゴキブリだったのである。H君は、ギャッとは叫ばなかったが、ギョッとしたそうだ。(そりゃ、まあそうだ…。)H君は、ゴキブリも女性のヘアーが好きなようです、とオチをつけて笑った。

 以上、皆さんの人生に何らかの参考になるのであれば望外の幸せであると、D君とH君が申していたお話でした。

             終
 

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