子ども達の好奇心に真摯に向き合った結果、ぽぽちゃんを生産終了する判断に至りました。『ピートラ』~号外~
ピープル株式会社 代表の桐渕です。
先日、当社商品「ぽぽちゃん」シリーズの生産終了を発表しました。想定してたよりもずっとたくさんの反響をいただきまして、約25年に渡り、多くの子ども達がぽぽちゃんを愛してくださったことの表れだと感じ、感謝の気持ちでいっぱいです。
私の周囲の親しい人たちからも、残念がる声や、ピープル店じまいするの?などご心配の声をいただきます。確かに一時はピープル=ぽぽちゃんといえるような代表的なシリーズにもなりましたので、私が想定するよりもずっとみなさんぽぽちゃんに思うところをがありそうです。
(店じまいは全然しません。社内はやる気に満ち溢れています)
そこで、改めまして、ぽぽちゃん生産終了を決断した理由について、直接自分の手で書き残しておこうと、ただいまキーボードをたたいています。
パーパスに本気で向き合った時、ぽぽちゃんは生産終了させてあげるべきだ という結論に至った。
ぽぽちゃん生産終了の判断に至った理由を一言で表すと上記のヒトコトにつきます。以下、もう少し詳しくします。
パーパスでは、ピープルは子どもの好奇心に対して真摯に向き合うことを社会と約束しています。ぽぽちゃんは、大事な子どもの好奇心の一つを満たすことを、役割として持たされました。
2歳前後になる子どもたちに見られる、本物の赤ちゃんやぬいぐるみをぎゅっと抱きしめたり、他のモノに対する態度とは明らかに違う「愛情」を感じるような行動を好奇心と認識し、それを思う存分発揮してもらえる方法としてカタチに落とし込まれたのがぽぽちゃんなんです。
子ども達が「赤ちゃん」を感じられるサイズとは?柔らかさとは?顔つきとは?それらを研究するために当時のピープルでは、たくさんの子ども達や親御さんたちにインタビューを行い、愛情あふれる様々な行動を調査したうえで、トライ&エラーを繰り返した結果、25年も続くベストセラーになるような共感を得られるお人形になりました。
発売後も子ども達へのインタビューは続けられ、子ども達がぽぽちゃんと一緒にどハマりする「お買い物ベビーカー」や「着せ替え」、「お弁当」といったあそび(商品)を作り、大ヒットに至りました。これらは全て子どもの好奇心という、普遍的な欲求に根差してものづくりをしていたことが、成功の本質的な理由だと認識しています。
商品開発活動に変化
その後、ロングセラーシリーズとして20年以上も商品を続けていくと、外部環境が大きく変化し、ぽぽちゃんの商品開発活動も変化を迫られます。
コンペティターとなる他社商品が充実したことで、ユーザーにとって選択肢が増えました。このことだけなら、私たちにとっても市場が確立され、売り場が確保されることで全体の販売数が上がるという良い効果もあります。
しかし市場が成熟すると当然起こる現象として「コモディティ化」というのがあります。購入者にとって、自社製品も他社製品もあまり区別がつかない状態になることです(ミネラルウォーターなどの例はコモディティ化の説明の際によく用いられます)。
だんだんとぽぽちゃんと他社のお人形を選択される時に、子どもが喜ぶかどうかよりも、お金を払う大人(対外は親御さん)のファッション的な好みや、値段、部屋に置く都合でよりコンパクトなものが選ばれる傾向が増えていきます。大人の好みは流行でどんどん変わるので、それらについていって商品に反映していくのは、ずっと続く大仕事になっていきます。そしてそのの流行は、子どもの好奇心という普遍的なニーズと相反する場合が多々あります。例えばぽぽちゃんが着るお洋服の柄ですが、子どもが好きなのは大きな動物のお顔だったりするのですが、大人の女性にとっては「ダサい」と映ったり。担当チームでは、ぽぽちゃんのお洋服をデザインする時、大人の好みに合わせるのか、子どもの好みに合わせるのか、矛盾に悩みました。
また、いかにお店で面を(他社から)奪うか、広告の枠をどう獲得するか、という仕事も増えていきます。
いつの間にか、商品を維持していくためには、おもちゃにとっての本質である子どもの好奇心よりも、お金を払う大人のファッション的流行を追ったり、他社とのシェア争いに始終することの方が重要になってしまったんです。
そのことになかなか気づかずに、私たちは「商品維持」の仕事を何年も続けてきました。本当にやりたいのは子ども達に会うこと。しかし売り場に顔を出すことや、広告の研究をすること、流行に合わせた商品のリニューアルをすることなど、あまり得意ではないことに一生懸命になり、その割には業績もついてこないし、評価もされない。とても苦しみました。
パーパスを掲げたことで矛盾に気が付いた
私たちは幼い愛情という「子どもの好奇心」を思う存分満たせるようなものづくりをしたかったはずなのに、ぽぽちゃんの仕事の大半はそうではなくなっている。
改めて、今の環境の中で子ども達の愛情に応える事業をしようと思ったとき、私たちにはお人形というカタチで実現するのは極めて難しいと判断しました。
個人的にも、次男がぽぽちゃんをとても気に入って遊んでいたこともあり、思い入れも深いので何度もその判断で良いのか悩んだし、生産終了するのをやめようと仲間にこぼしたこともありました。しかし、どう考えても自ら掲げたパーパスを裏切ることになる。最終的に、強い気持ちで終了に向けたプロジェクトにGoをかけました。
子どもの「愛情」は、お人形ではないカタチで取り組みたい
冷静に考えてみると、ぽぽちゃんと他社のお人形を、購入者の方たちが明確に区別していないという現状は、子ども達のお人形に対する好奇心はぽぽちゃんなしでも満たされていくと捉えることもできます。
とは言え、子どもの愛情というテーマは、好奇心事業のメーカーとして避けては通れない重要なテーマです。世界中の子ども達を深く観察し、まだ見つかっていなかったり止められてしまっているような気持ちを見つけて、肯定していけるようなものづくりを続けていきたいと思います。
改めまして、ぽぽちゃんを愛してくださったユーザーの皆さま、製造・販売活動にご協力いただいた皆さま、これまで本当にありがとうございました。心より感謝を申し上げます。
生産は終了しますが、今年いっぱい感謝を込めてさよならイベントをかけていきたいと思います。
ぽぽちゃんというお人形は生産終了となってしまいますが、ピープルは今後も子ども達やその好奇心と真摯に向き合い、子ども達が好奇心丸出しで思う存分遊べる世界に向けて少しずつ前進していきたいと思います。
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