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三位一体となって共に人生を歩んできたグラフ1000の話【#忘れられない一本 07】

誰にでも、忘れられない一本がある。
小学生の時に初めて手にしたシャープペンデビューの一本、
持っているだけでクラスの人気者になれた自分史上最強の一本、
受験生時代お守りのように大切にしていた一本。
そんな誰しもが持っている、思い出のシャープペンと、
シャープペンにまつわるストーリーをお届けする連載
#忘れられない一本 」。
ぺんてる社員がリレー方式でお届けしていきます。
第7弾は、ぺんてる入社1年目の、小森さん。
あなたの忘れられない一本は、なんですか?
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皆様、はじめまして。入社一年目の小森と申します。

新入社員である私にこの寄稿の依頼がきたときの気持ちは、正直嬉しさ半分、不安半分といったところ。

ぺんてるの製品、とりわけシャープペンが好きで入社した私。
TUFFシャープ( 0.9mmの太芯×大型消しゴムの頼れるナイスガイ)を母親に買い与えられシャープペンデビュー、初めて自分のおこづかいで買ったのは青のグラフ1000。
おかげさまで、中高生時代はどっぷりシャープペンの沼に...(詳しくは後程)

そんな私ですので、シャープペン研究部が発足したという社内インフォメーションを見たときのテンションの上がり具合は、想像に難くないでしょう。

「何て面白そうな企画なんだ!読むのが楽しみだなあ」

この時点では、受け身でこの企画を楽しむつもりでした。

しかし、広報課に仕事で訪れた際に課長にこの企画の話を振ったところ、冗談っぽく依頼が。

「流石に一年目の社員に寄稿依頼来ることはないでしょう!」
なーんて呑気に考えていた私がアホでした。話した一週間後には本当に依頼が舞い込みました(笑)

しかし、
・入社数か月のペーペーに、濃い記事とか制作秘話なんて書けるわけないヽ(^o^)丿
・そもそも文章書くのが苦手、Twitterの140文字が限界!
といった不安な要素が満載...

ここでブラウザバックをされる方がいないことを願うばかりです。

どうするかよく考えたところ、公式メディアで自分の思い出のシャープペンについて投稿できる機会なんてなかなかあるものではないという結論に。

クオリティ?起承転結?
そんなもの勢いと熱意でどうにかなる!
というスーパー楽観的な気持ちでキーボードを叩いています。

本音は?
「公式」という甘~い言葉に釣られたからです(小声)

前置きが長すぎると感じた方もいらっしゃるかもしれません。私もそう思います。


そういうわけで、そろそろ本題へ。が、ここで語れるのはあくまで「一本」。
新作から廃番製品までたくさんのペンを見つけようと東奔西走していた中高生時代、どのペンにも思い出があり一本に絞るといってもなかなか難しい話。
定番の「グラフ1000」、ぺんてるの製図用シャープペンの始祖「グラフシリーズ」、
製図用シャープペン好きなら誰もが憧れるであろう「メカニカ」、挙げてもキリがありません。
悩みぬいた末、グラフ1000の思い出を綴ることにしました。
一本といいつつ、三色のグラフ1000が登場しますがどうかお許しを。
では、「#忘れられない一本」、スタートです。


運命を変えた出会い

シャープペンにハマったのは、中一の冬。友達が使っていた限定品の青のグラフ1000を見たのがきっかけでした。
鮮やかな青色の軸でこんな洗練されたデザインのシャープペンがあるのか!
と思わず目が釘付けに。
今でこそ青のグラフ1000は定番ですが、当時はまだ限定品。
早く買わないと売り切れてしまうかもと思い、同じものを買いに文具店に駆け込みました。

念願のグラフ1000を初めて使ってみた感想は、「カッチリ」。
今まで使ってきたシャープペンにはなかった、ブレない書き心地にすっかり心を奪われました。

が、そこで欲が収まらないのが私の悪い癖。
「他の限定色も欲しい!もっと良い書き味のシャープペンってあるのかな??」
...気付けばシャープペンの沼にズブズブと足を踏み入れていました。

そんなわけで情報収集のためネットサーフィンをしていたある日、過去に限定品で真っ白なグラフ1000が発売されていたことを知りました。
詳しく調べてみると、4年前の限定品。
当時はフリマアプリもなく、廃番品や限定品を手に入れる手段はただ2つ、自分の足かオークションサイト。
使えるお金が限られている中学生が選んだのは、もちろん前者。
今考えれば、売っている保証もない文具店に何軒も足を運ぶ方が、オークションサイトでプレ値で落札するよりお金がかかるというのは自明の理。
お金はあるけど時間がない社会人ならオークションサイトやフリマアプリを使うだろうなと思うと、この経験は学生時代にしかできなかったな...としみじみ。

自分の足(電車)で沿線の文具店を巡り、祖父母宅に帰省したときはその地元の文房具店を探し、挙句の果てには、父親の足(車)にも頼り、探し続けました。(父親よスマン、そしてありがとう)

しかし、実際問題中学生が文具店を巡ることには大きな壁がありました。

それは、個人文具店の営業時間。

個人店は営業時間が短いお店が大半。(だいたい17-18時閉店)
部活が休みの日に行こうと思っても、学校が終わり家に着くのは16時過ぎ。
つまり時間的猶予がほとんどなかったんです。
移動中は常にダッシュしてもタッチの差で閉店、といったことも過去にありました。
電車賃も無駄になってしまうため、肉体的にも金銭的にも大きなダメージ…!
おかげさまで足は速くなりましたが(唐突な自分語り)

さらに追い打ちをかけるように、地図には載っているにも関わらず実際は既に廃業している、またはお店が取り壊されている、といった思いがけないトラップもありました。
途中からは電話して事前に確認するようにしていましたが、電話が繋がらなかったからといってそこで諦められるわけもなく。実際に出向いて営業していない、といったことは数えきれないほど経験しました。
駅から歩いて30分近くかかるお店が廃業していた時はショックさといったら...

一方で、2回アタックして開いていなかったお店に3度目の正直で訪れたら開いていたということもあります。
そういったお店に限って、欲しかったシャープペンが置いてあったりするもの。
営業しているのか廃業しているのか不明な文具店のほうが、レアな商品が残っていることが多いといったことが文具店巡りの楽しさでもあり、同時につらさでもありました。


振り返ってみると、これは苦行なのか?と思ってしまうような文具店巡りでしたが、私は個人文具店が大好きになりました。

何故かって?
それはズバリ、個人文具店は「人のあたたかさ」を感じることができるからです。

古いシャープペンを探していると電話したら、自分が来店するまで取り置きしてくださり、店舗裏の倉庫の中まで案内してくださった店員さん。
卸販売もされている文具店は倉庫がとても大きく、山のような商品の中からお目当ての商品が眠っているのでは!?とワクワクドキドキとした体験をさせていただいたことは今でも記憶に残っています。

そのほかにも、店内を物色していた僕に「何か探しているものでもあるの?」と声をかけてくださった店員さん。
探している商品名を伝えると、最新のカタログから古いカタログまですみずみと確認してくださり、営業に来る社員に在庫があるかどうか聞いてくれた丁寧な方もいました。
(この店員さんには、後に働く人を取材する、という中学校の夏休み課題でインタビューさせていただきましたが、それもまた快く引き受けてくださったなあ...)

自分のお店以外にも地図に載っていない文具店が近くにあることを教えてくださり、途中まで案内してくださったラジコン屋兼文具店の店員さん。
祖父母宅のある名古屋にあるため帰省した時にしか行けなかったのですが、連絡先も交換して今でも仲良くさせていただいています。


などなど…、お世話になった店員さん方には本当に頭が上がりません。
社会人となった今はなおさら、この行為の重みを感じます。

そういうわけで何だかんだ楽しみつつ、一年近く続けていた文具店巡り。
しかし、肝心の白いグラフ1000にお目にかかれることはなく。


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「そもそも白のグラフ1000って存在するのか??フェイクニュースじゃないか??」
と疑心暗鬼になること数知れず。
結局見つけることはできず、受験勉強に集中するため探すのは一旦諦めることにしました。


私を魅了した「FOR PRO」の二文字

そんなグラフ1000愛にあふれる私なので、受験勉強の相棒はもちろんグラフ1000の0.5。
限定品を買い集めておきながら、使っていたのは現行品(FOR PRO)でした。
現行品とは言えど、1986年生まれという大先輩!
私は以下のようなポイントに惹かれて使っていました。

◎中二心をくすぐられる「FOR PRO」というワード
〇マットブラックで高級感のある塗装
▲滑り知らずのグリップ
△とにかく壊れない

学校にシャープペンを持っていくことが許される中学一年生。
各々、家にあったもの、または家族に買ってもらったシャープペンを使っていた方が大半だったでしょう。

そして、何かと多感なお年頃の中学二年生。
この頃になると他の人とは違うものを使いたい、ちょっと背伸びして大人びたものを使いたい、といった気持ちが芽生え始めてくる方もいたのではないでしょうか?

かくいう私もその一人。
元々、カラフルな限定品からグラフ1000を知ったため、マットブラックである現行品のグラフ1000を初めて見たときはなかなか衝撃的でした。

「FOR PRO」の印字、何と心を惹かれる単語でしょうか!

FOR PRO印字 - コピー

手にしたときは、
「プロでもなんでもない私がこのシャープペンを使っても良いものなのか?」
と思わず自問自答しかけましたが、
「私は勉強のプロだ!」
と自分を鼓舞し、勉強するときのモチベーションを上げていました。

グリップが塗装されていることによる滑りづらさの向上、黒一色になったことにより使用時の集中力の向上といった恩恵もあり、限定品と比べると実用にはやはり現行品に軍配が上がりました。

余談ですが、グラフ1000に使っていた芯は「ハイポリマーFORPRO 2B」(300円※廃番)という少しお高い芯を使っていました。
シャープペンの芯の話まですると一向に終わりそうにないので、一言こだわりを述べておくと
「シャープペンのメーカーと芯のメーカーは合わせる」
これに尽きます。シャープペンと芯の相性ってやはりありますし、ぺんてる製品に限らず各社、自社芯で最大のパフォーマンスを発揮するように造られているはずなので...


今でこそ筆記+αの要素をウリにしたシャープペンは各社から発売されていますが、私がハマり始めた頃はその黎明期であったように思います。
三菱鉛筆からは芯を常に尖らせることのできるクルトガ、パイロットからは高級感を持たせたドクターグリップが発売され、もちろん中学生の間でも人気を集めていました。(気になって私も買った)。

そうした時代の潮流で、純粋に書く(描く)ことのみを追求した造りであるグラフ1000はある意味異端な存在。

そんなグラフ1000を何故使っていたのか?

もちろん使いやすいから使っていたわけですが、どこかに大人への憧れといったものがあったということは否定できません。
装飾のないシンプルなデザイン、黒一色のボディは、シャープペンというよりはまるで
大人だけが手にできる「道具」であるかのよう。
付加価値が追求されるなか、無駄な機能を削ぎ落したシャープペンを使うことで一歩大人の階段を上った気でいました。
もし、当時の自分に同じ質問したら強がってこんなことは口にしてはいなかったでしょうね。

そんな大人への階段を上らせてくれたグラフ1000は、未だに壊れることなく現在も筆箱のスタメンとして君臨しています。

今まで何度も落とし、時にはペン先が曲がる悲劇にも見舞われましたが、シンプルな内部機構のためトラブルは一切なし。ペン先が曲がったら、曲がった方向と反対側に程よく曲げるという荒技で何とでも直ります。

しかし、内部機構は壊れ知らずでも風貌はやはり変わってきます。
新品の黒はマットブラックで落ち着いたデザインですが、使い古したグラフ1000は塗装剥がれでテカテカ、傷もついてきます。

☆写真 2020-08-21 13 24 12


マットブラックと艶がかった黒、対照的ですが使い続けることで味が出るのもまた一興。
残念ながら「FOR PRO」の印字も消え去ってしまいましたが、これは消え去るまで使い込んだことで、所有者が真の「PRO」になったということで!(強引なポジティブ変換)

歴戦の猛者感が漂うボロボロのグラフ1000の方が愛着もわくのですが、これは私だけでしょうか?全世界のグラフ1000のオーナーの方々。

折角買った限定品は使わなかったんですか?という疑問の声が上がるかもしれませんね。

限定品は替えがきかないので、普段使いはちょっと...

コレクターの悲しい性です。


最後の巡礼

高校受験を無事突破し、時間に余裕ができたので真っ白なグラフ1000探しを再開することに。
久しぶりに文房店巡りをしようと向かったのは、都電荒川線沿線。

さして期待もせずに入ったお店には、今まで見たことのない光景が広がっていました。

シャープペンのコーナーには、赤、黒、そして何と、白いグラフ1000が一本ずつ陳列されているじゃあありませんか!!!
自分の目ではなんだか信用しきれず、手に取ったところでようやく見つけた実感がゾクゾクと。
興奮冷めやらぬままレジに持っていたのは言うまでもありません。

しかし、レジに持っていったところで急転直下、事件勃発。

「あ~、このペンずっと光に当たってたから変色しちゃってるけど大丈夫?」
と、店員さん。

そもそも白いグラフ1000の実物に遭遇したのが初めてだったため、グラフ1000の「白」の定義を知らない私。
頭を必死に回転させてイメージを思い浮かべると、記憶では真っ白だったはず。
しかし、手元にあるグラフ1000を見ると、やけにクリーム色になっているような...

必死になって考えている間、店員さんがグラフ1000をメガネ拭きでフキフキ、そして付け加えるように、
「この変色はもう落ちないと思うけど、それでも良かったら買ってく?」
と一言。

運命の選択を迫られました。

もうここでクリーム色を購入して白のグラフ1000探しの旅にピリオドを打つか、

はたまた真っ白なグラフ1000を追い求め、旅を続けるか。

シャープペンのコーナーがあったのは、蛍光灯の真下。
しかも、クリーム色のグラフ1000が鎮座していたのは何とペントレー。
要するに、お店で一番目立つところに置かれていたわけです。

アイドルグループでいえば、まさしくセンター。人気の子がいるところです。
そんなところに数年売れずに残っていたクリーム色のグラフ1000。

入荷当初は真っ白で、煌々と輝いていたでしょう。
しかし、なかなか売れず色落ちまでしてしまった。
よく陳列から外されてメーカー返品されなかったものです。

そんな風にこのシャープペンの境遇を想像したら、買わないわけにはいきません!

たとえ全盛期の輝きを失いかけていたとしても、応援するのが推し事ではないでしょうか?

「気にせず買います!」

ということで、世界に一本しかないクリーム色のグラフ1000のオーナーに就任しました、とさ。

めでたし、めでたし。

☆写真 2020-08-21 13 31 40

なんだか自分語りのような内容で終わってしまいましたが、書きながらふとこんな考えが思い浮かびました。

それは、
「グラフ1000を手にしていなければ全く違う人生を送っていたのではないか?」
ということ。

青のグラフ1000を手にしていなければ、まずそもそもシャープペンにハマることもなく、当然文具店巡りはしていなかったでしょう。

黒のグラフ1000「FOR PRO」を使って勉強していなければ、勉強するモチベーションが上がらず違う進路を歩んでいたかもしれません。

クリーム色のグラフ1000を苦労して手に入れていなければ、シャープペン、ましてや文房具に対する興味関心が現在まで続いていたかどうかは定かではありません。

一見バラバラに見えるこの3つのエピソード、しかし、これらが繋がり合った結果として、私は今、ぺんてるに入社してこの記事を書いています。

運命の巡り合わせというものは恐ろしいものです。

中高生時代は、受験勉強の頼れる相棒として。

大学生になると、時にはボールペンや万年筆に浮気することもあったものの、手軽さと書き味の良さでグラフ1000の右に出るペンはありませんでした。

そして、社会人となった現在。
もう出番はないかなと思っていたものの、グラフ1000を使わない日はありません。
数値のチェック、メモ書き、他部署の方に経費のルールを説明する際にも。

軸が細い+軽量のため持ったままキーボードを打ちつつ、電卓を叩くといった芸当も可能なグラフ1000。いちいち持ち替える手間もなく作業ができるので、面倒くさがりな自分にピッタリ。

黒ボールペンの鮮やかな発色も好きなのですが、どこか筆跡に強い印象を持たせてしまう…といったときには、シャープペン特有のグレーがかった黒が柔らかい印象を与えてくれます。


もうこうなったら、自分が死ぬ時まで使い続けて、棺桶の中に入れてもらうとしましょう!

たかがシャープペン、されどシャープペン。

運命を司る道具に、今一度目を向けてみてはいかがでしょうか?

☆写真 2020-08-21 14 52 31


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