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入社40年。GOLD KERRYは、ぺんてるで働いてきた「あかし」【#忘れられない一本 12】


誰にでも、忘れられない一本がある。
小学生の時に初めて手にしたシャープペンデビューの一本、
持っているだけでクラスの人気者になれた自分史上最強の一本、
受験生時代お守りのように大切にしていた一本。
そんな誰しもが持っている、思い出のシャープペンと、
シャープペンにまつわるストーリーをお届けする連載「 #忘れられない一本 」。
ぺんてる社員がリレー方式でお届けしていきます。
第12弾は、ぺんてる入社40年目の、庄山さん。
あなたの忘れられない一本は、なんですか?

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どうも、こんにちは。
私ぺんてる一筋40年、現在は、国内営業本部営業企画課という部署におります。

忘れられない一本のお話をする前に少しだけ、私の“忘れられない話”をさせてください。私がぺんてるに入社したのは1981年、巷では竹の子族が出現したり、ルービックキューブが爆発的に流行ったりした時代でした。

新入社員で右も左もわからぬまま、いきなり任された担当は「画材企画」。今はもう定かではありませんが、確か初めての企画書はパスティック30色だったような…。みなさん小学校の時の画材で、ぺんてるパステルや水彩絵の具、くれよんなどぺんてる製品にはじめてふれる機会が多いと思いますが、そんな歴史と看板を背負う画材の企画ということで、当時はなかなかに大変だったと記憶しています。

そんなスタートから、ぺんてる社内でさまざまな部署を渡り歩き、2007年からはシャープペンの企画担当になりました。シャープペンもいろいろ新製品を担当させて頂きましたが、なんといってもダントツに記憶が残っているのが、替芯カセット方式の「クイックドック」です。

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基本仕様がすでに決まっている中で、私の仕事はどのようなコンセプトを与え、世に送り出すべきなのか、それを熟慮することでした。そこで当時、アメリカでは売れていたシャープペンのデザインで、本体と替芯カセットとの組み合わせで色の重なりを楽しめる特徴に着想を得て、それを打ち出すことにしました。シャープペンを自分らしく楽しめる、芯を変えるだけじゃなくて、見た目も使う人の気分さえも変えられる、そんな仕掛けを込めて企画を考えました。おかげさまで、熟慮のかいもあり2008年にはグッドデザイン賞を頂くことができました。しかし、世間はそんなに甘くない。結果的には短命な製品(廃番)になってしまいました。
悔しい思いもありつつ、これもまた常に新製品が生み出される文具業界の定めだと、そんな風に今は感じています。


さて、そんなシャープペン企画当時の切ないエピソードはさておき、そろそろ本題に参りたいと思います。


私の「忘れられない1本」は1990年発売の「GOLD KERRY」です。

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以前に和田会長もKERRYについて忘れられない一本で触れておりました。

私が今回お話ししたいのは、見た目そのままゴールドのケリーです。実はこの「GOLD KERRY」ですが1990年に発売されまして、爆発的ヒットとなりました。
漆黒の軸に金色のグリップ・口金・ロゴが映える高級感溢れる製品で、今でも復活を願う声が多い製品です。

当時のチラシのコピー2

当時通常のケリーが1,500円(税別)に対して、このGOLD KERRYはお値段2倍の3,000円(税別)という価格設定。かなり驚いた覚えがあります。なぜこんなに高いのかって、最初は理解できませんでしたが、これが使えば使うほど、愛着が湧き価格に値する商品だと感じてくるから不思議です。どんどんと手にフィットする、どんなシーンにも愛用できる、不思議に飽きることがないデザイン。

それは一言で言えば「ステータス」ということなのだと思います。
このシリーズは、万年筆+シャープペンシルで「万年CIL」万年筆感覚で高級感のあるシャープペンが持てるというところがポイントです。持っていると気分が上がると言いますか、背筋がしゃんとする、そんなシャープペンです。自分の中にどこか万年筆に対する憧れがあるのか、このシャープペンを持っているというだけで、ステータスを感じるのです。ただ持つだけで気分を上げてくれる。こんなところは、先ほどのクイックドックと通じるところでもあります。

当時から大切に使いたい、と愛情を持っていたからか、いつの間にか社内の昇格試験や、論文作成、大事な仕事の時に登場する自分の「勝負シャープペン」になっていました。ここぞ、という時に登場してくる大物感が妙に安心するのです。(まあ、試験の結果は別として…笑)

他とは別格なシャープペンですから、扱いも別格です。革のペンケースに入れて大切に、大切に保管しています。高級感溢れるGOLD KERRYと革のペンケース、なぜかこの組み合わせが好きなのです。

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こんなに想いを語りましたが、このGOLD KERRYの企画をしたのは私ではありません。ではなぜ、担当をして思い入れのあるクイックドックやそのほかの製品でなく、これが私の忘れられない一本なのか?カッコよく言うと、GOLD KERRYはわたしがぺんてるで企画の仕事を担当してきた「あかし」なのです。

ぺんてるという誰もが知る企業で、人気ある商品の看板を背負い仕事をさせていただいている、という責任感と世に貢献する充実感。人生を変えるような一本や世の中をアッと言わせる発想を生み出すことができる企画という仕事の面白さ。それらすべてを、このGOLD KERRYから教えてもらったような気がします。

このシャープペンを持ち続ける限り、私がぺんてるで働いてきた「あかし」が、確かにここにあり続ける。そんな風に思ってやまないのです。