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どんな上司になりたいだろう

「マネージャーになったときのことを考えて、今の自分には難しい仕事や視点の高い仕事にチャレンジしていくことが大事だよ。そういうのを買って出ずにいざマネージャーになって、良い成果を出せなかった人を何人も見てきたからね。」

これは最近上司に言われた言葉。いわゆる典型的な日系企業で働き、30代中盤でボチボチマネジメントする側になっていく僕には響く言葉だった。その言葉を聞いた僕は「どんな上司になりたいだろう」とふと考えた。そのイメージとして、とっさに頭に浮かんだ2人の上司がいた。A課長とY課長である。

A課長

A課長は僕が社会人3年目から6年目に上司だった人。当時は海外営業の仕事をしていて、A課長が海外勤務から帰任するタイミングで上司となった。

正直、A課長はむちゃくちゃ仕事はできる人ではない。車のブログを書いているほど車好きで、海外出張報告よりも出張先で見つけた車紹介のブログ記事が先にアップロードされることもままある、少し自由気ままな人である。

僕がA課長の大好きなところは、いるだけで部下が働きやすい雰囲気に作るところだ。肩の力が抜けつつも、程良い緊張感を保ち決して嫌な雰囲気を作らない。思い返すと、当時はとても心理的安全性の高い雰囲気の中で働いていた記憶がある。仕事ができる人は今まで山ほど見ていたけれども、スタッフが働くための良い雰囲気を作れる人はほぼいなかったように思うし、こういうのは作ろうとして作れるものでもないだろうから、一種の才能のようにも思う。良い雰囲気を作ってくれるがゆえに、「僕がA課長を助けまくろう!何かもっとできることはないだろうか」という気持ちに自発的なっていた覚えがある。A課長は助けられ上手の上司のようである。


A課長の大好きなところはもう一つあって、それは個人と向き合ってくれるところだ。例えばA課長は半期毎に課の売上目標や利益目標をスライドを用いて課員に説明してくれるが、その中で個々人への達成したもらいたい目標のスライドを作り、ひとつひとつ丁寧に目を見て語ってくれた。それぞれ程良いストレッチゴールであり、また日々部下の仕事をしっかり見ていないと設定できないものだった。当然、部下としては見てくれている安心感や信頼感を感じ、目標達成しようという思いが自然と芽生えた。

そうした目標設定対象には派遣社員の方も含めており、今思うと働くメンバーに隔たりなく接しているところも良い雰囲気を作るのに寄与していた要因だったと思う。目標が達成して上の人たちに報告する時も、「〇〇さんが〇〇をやってくれたからできたんです」と言って行動を適切に労ってくれる。メンバーが落ち込んでいるときには、食事に誘って無理に理由もきかずに楽しく時間を過ごしてくれる。僕が海外出張先で財布を盗難されて帰国すると「これで財布買う足しにしな」とそっと1万円をくれたりして、本当に部下思いの上司だった。

部下思いの一方で、上に対しておかしい事はおかしいとモノ申すパンク精神を持っていたのも好きなところだ。当時、営業部長が一人で突っ走って作ったありえないほどダサイ販促物を、「こんなの誰も喜びませんよ!」と本人に直接言ってみんなの気持ちを代弁してくれた。きっと自分の仕事に対する信念やプライドがないとこういうことは言えないだろう。


今はA課長は転勤して遠くに住んでいるけれども、機会を作って会いに行くほど本当に今でも大好きで尊敬している(ブログもこっそり見ている)。どうやら僕が仕事で大事にしたいことはこの人から学んだようだ。


Y課長

次に思い浮かぶのはY課長。冒頭に書いた言葉を言ってくれた人である。

Y課長はA課長とは打って変わってかなりの切れ者。コンサルばりの美しい仕事術で、一緒にする仕事をすると惚れ惚れしてしまう。あまりに高いビジネス基礎力にときおり恐怖も感じるほど。先日も取引先と面談した際には取引先担当者を気づかせないレベルでコーチングを行うなど、恐らくこの人と同じ年齢になっても同じレベルには絶対たどり着けないとまざまざと感じてしまった。コソコソと勉強しているのは紡ぐ言葉に感じるけれども、ひけらかすようなこともしない。怖いところはできない人には容赦なく指導するところ。。

Y課長をこのように書くと堅物だと思われるかもしれないが、実際は逆でユーモアあふれる気さくな人。よく冗談も言うし、よく笑う。そしてよく呑む。ワインもウイスキーを語らせると止まらない。


僕がY課長の好きなところは賢く、洞察眼が鋭い故に部下もよく見ていること。僕が今担当している仕事内容に力を持て余しているのに気づくと、面白い仕事く難易度の高い仕事を何気なく持ってきてくれたりする。そして直接仕事は教えないけど、華麗な how to を盗ませてくれる。そして随所随所で妙に心に残る言葉を残してくれる。僕が昇格したときにくれた言葉はいまでも忘れない。


「前時代的に聞こえるかもしれないけど、これからの世代の人たちにはやりぬく力と潰れても戻ろうとする力(復元力)が重宝されるよ。これっていつの世でも必要とされてきてるのに、昨今これらの能力を持ってる人は少ないし、大金積んだとしても一朝一夕には身につかないからね。出世ってやりたいことをやれる権利とほぼ同義で、この2つはそれを獲得するための武器」

これ以外にもY課長から言われて、今も宝物のように大切に心にしまっている言葉はたくさんある。

Y課長は言葉だけでなく行動も粋な上司。僕はY課長が組織のオペレーションのラインにまで降りて加勢しないところを素敵だと感じている。手伝わないなんてと思う人もいるかと思うが、Y課長は課長クラスが1階層降りてオペレーション業務を手伝うと、組織として上向きにならず長期的によくないことを知っていて、そうしているのだと思う。自身が課長として本来何をするべきかを自覚し、飄々と仕事に取り組む姿は何も言葉を発さなくてもにカッコいい。僕の理想の姿だ。


ここまで書いて、A課長、Y課長ふたりとも部下想いで仕事への信念があることに気づいた。これらはシンプルなことで当たり前なことかもしれないけれど、それゆえいつまでも普遍的な価値を持つものだと思う。

僕はきっと2人と全く一緒の人間になるようなことはできないし、まるまるコピー人間にもなりたくない。でも2人から学んだ大切な当たり前を大事にして、自分流にこれからのキャリアを築いて、次の世代となる部下を育てられたらと思う。

こうして振り返るときっとA課長もY課長も「どんな部下に育てたいだろう」思った時があったんじゃないかと勝手に想像してしまった。その内容は確実に部下の僕に届いているし、それを仕事の結果で返していきたい。30代中盤、まだまだやるぞ。

皆様からのスキがもらえるととても嬉しいです。