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父と母と妹と僕と。新鮮な4人の食卓。

先日、久々に実家に帰った時の話。(久々といっても3カ月ぶりくらいだろうか。)サマータイム導入の関係で仕事がいつもより早く終わり、普段ならそのまま自宅に帰るところを、「久々に実家に顔出そうかな」と思い、夕飯を実家で食べることにした。

結婚して家をでてから、実家には父と母と妹が暮らしている。

実家の台所に入ると「おかえり~!」と、まったく久々な感じもなく、食事の支度をする母がいつも通り出迎えてくれる。食卓には唐揚げが山積みになっている。それは明らかに普段の3人分の量ではない。僕が来るということで普段より多めに、そして、僕が自宅に持って帰る用にも備えて、とてもとても多めに作ってくれたのだろう。そんな風に張り切ってくれる母が少しかわいく、嬉しい。

テーブルにおかずが並べられていく様子を眺めながら、母と二人で愚痴交じりの近況をだらだらと話す。すべてのおかずが並んだところで、「ごはんやでぇっー!」と母が家中に響き渡る声を発する。そして「あんた、先に食べときぃ。」と、僕に促した。僕が食べ始めて2~3分後、父と妹がぽつぽつと集まり、食卓に着く。
「ふぃ~、今日は唐揚げか。」とつぶやきながら、普段通りに椅子に座る父。「あ、お兄ちゃん来てるやん。また夕食費浮かせに来たんか?笑」と皮肉交じりに、いつもとの違いに気をやる妹。

家族4人で食卓を囲み、本当に他愛もない話をだらだらとくり広げながら食事をする。理屈っぽい父に、いつもどおり母が「ほんとコイツ腹立つわ」なんて苦言を言う。そんな小競り合いなんか気にせず、「なあ、こないだのあのテレビみた?」なんて一方的に話しかけてくる妹。

これを読む人によっては、普通の食卓の風景じゃないか? と感じる人がいると思うが、僕にとってはとても新鮮に感じた風景なのだ。

今年の2月に65歳を迎え、完全に仕事を退職した父。このまま年金暮らしを続けるわけではなく、いずれはまた仕事を見つけてフルタイムとはいかずとも働く気ではいるらしいが、今はコロナの影響もあり求職活動はいったん中断しているそう。

これまでずっとサービス業に従事していた父の勤務形態は、平日に不定期で休みがあり、仕事の日の帰宅時間は平均して22時頃。(夜が遅い分、朝の出勤時間も遅い。)
父が休みの日は、夕飯時に父が食卓にいても、僕も妹もそれぞれの予定があり出かけていることも多かったから、僕が実家にいる頃は、平日の夜に家族全員で食卓を囲んで食事をしたなんて記憶はほとんどなかった。

今では、新聞を隅々まで読み込み、一日中テレビを見ているせいか、「あのワイドショーの誰々のコメントはいつも面白い!」なんて会話を繰り広げるようになった父を含め、母と妹と僕の、家族4人全員の食卓。
僕にとってはとても新鮮で、「ああ、こういうのを求めていたんかなぁ」なんてふと思っている自分に気が付いた。

愛に飢えているとか、いままで寂しい思いをしていたとか、そういう意味ではない。ただただ「こういう家族像っていいなぁ」と思ったただけだ。
「ああ、この家族に生まれてよかったなぁ」とちょっと大げさに思ってみただけだ。

結婚して、初めて実家をでて暮らすようになって、早3年が経とうとしている。結婚して実家を出てからは、これまで育ててくれた両親のすごさ、それに対する感謝を感じることがうんと増えた。いままで、当たり前だと思いながら過ごしてきたことは、実は両親がなんとか作り上げてくれた当たり前だったんだと感じることがうんと増えた。

今は夫婦で二人暮らしの僕の家庭。これから家族が増えるのか、どうなるのかはわからない。(いつまでに、何人家族にする! という目標も定めていないので。)ただ、10年、20年経ってからも、何気ない日々の中で食卓を囲みながら「ああ、この景色っていいなぁ」と自分が感じたり、その場所にいる家族にも感じてもらえるような、当たり前の日常を作っていきたいなと思う。

久々に実家に帰って食べた夕食時、そんな小さな目標と喜びが湧いた。

妹によると「お兄ちゃんが帰ってくると、父も母も少しテンションが高くなり、特に父がうっとおしい。」らしい。
いつもはおかずを貰って帰るばかりの僕だけど、今度はお菓子や果物をもって、もう少し定期的に実家にも行こうと思った。

そんな平日の夜のひと時でした。

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