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春色スープ

とても印象的な児童書がある。アーノルドローベル作の「ふくろうくん」。代表作としては、がまくんとかえるくんの「ふたりはともだち」かな。そちらもとても好きだけれど、私がお気に入りなのはやっぱり「ふくろうくん」。

このふくろうくん、最高に魅力的なキャラクターなのだ。
夜、ベットで布団を被ると、自分の足の部分にこんもりとお山ができる。もちろんこれは自分の足そのものに他ならないんだけれど、彼はこの正体が気になって仕方がない。布団をめくったりまた被ったり、延々と繰り返し結局眠れない。
また、ある時は、2階と1階に同時に存在できないかと、階段を走って行ったり来たり。これもまた、できなくて彼は落ち込むんだけれど。

子どもながら、かわいいなぁと読み進めた記憶がある。

その中でも印象だったエピソードが、ふくろうくんが豆のスープを飲むシーン。寒い冬の日、ストーブの前でスープを飲むふくろうくん。玄関の戸を叩く音が聞こえて、扉を開けると「冬」のお客さまが。ふくろうくんの暖かい部屋を散々にしてゆく。豆のスープはカチンコチンに凍ってしまった。それを再びストーブの前で溶かしながら食べる、ふくろうくん。
なんて荒々しいお客さまなんだ!とぷりぷりしながら。

それを読んで「豆のスープ」なるものに興味が湧いた。さっそく、食べてみたいと母に言うも、いわゆるポタージュ系が苦手な家族なので有無を言わさず却下。残念だったけれど、仕方ない。あっさりと諦め、それから思い出すこともほとんどなかった。

けれど、先日買い物をした際に、冷凍野菜のコーナーをたまたま通った。お野菜は新鮮なものを食べるようにしているから、普段はめったに行かないんだけれど、どうしてか目を惹くものがあった。それは、冷凍のグリーンピースだった。グリーンピースと言えばシュウマイの上に乗っている、あるいはチャーハンの中に彩りのために加えられている脇役の野菜。豆の風味に癖があるから、苦手な人も多いあの豆。たっぷり500g入りの袋を見た時、ふいに「ふくろうくん」の豆のスープを思い出した。そして気がついたら手に取ってレジへと向かっていた。

500gも買ってしまったけれど、家に帰って見ると、結構多い。不安になってきた。使い切れるかしら。

どんなお豆のスープにしようかと考えていたら、前に新玉ねぎを買っておいたことを思い出した。よし、新玉ねぎとグリーンピースで、春色スープにしよう。休日朝ごはんはこれで決まり。

バターと新玉ねぎを炒めて、透明になったら小麦粉を。全体に纏ったらコンソメとお水を入れて冷凍グリーンピースをたっぷり300g。お豆が柔らかくなるまでコトコト。だいぶ柔らかくなってきたら、ミキサーにかける。とことんなめらかにしたいから、長めにかけてみる。
すると、みるみる緑色になっていく。とても綺麗で、回るミキサーをじっと見つめる。あぁ、わくわく。

じゅうぶん回るミキサーを眺めて楽しんだら、再びお鍋へ。ここで牛乳を入れるんだけれど、なかったから豆乳を。どちらも無ければお水でも。その方が、豆の風味をダイレクトに感じられるかな。新鮮な生のお豆ならそちらがおすすめ。今回は冷凍豆なのでミルク風味に。

ほんの少しのお塩と胡椒で味を整えたら、出来上がり。
うつわに盛ったら、仕上げにお豆を3粒ほど乗せると見栄えも良い。今回は、忘れちゃった。
ここで、家族が苦手だったことを思い出すけれど、まぁいいや。大丈夫でしょう。

目玉焼きのハム乗せと、舞茸のグリル焼き、昨日の晩御飯の残りの炊き込みご飯を盛ったら、さぁ、いただきます。

ふくろうくんは寒い冬の日に飲んでいたお豆のスープ。けれど、確実に春が近づいていることを感じさせる綺麗な緑色。梅の花も見頃を迎えようとしている。1月もあと1日。1月をどう過ごしたかで、どんな1年になるかが決まる、とはよく言ったもので、それだけ、習慣化することが生活にもたらす影響が大きいことを実感する。私はどんな1か月を過ごしたかな。どんな一年になるかな。春がきたら就職して1年が経つ。あっという間だったような、長かったような。

春の味がする、熱いスープを啜りながら、1月を振り返る。
そんな、休日朝ごはん。

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