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汝、星のごとく


凪良ゆうさん作品、初読了。

書店で見かけてはずっと気になっていたけれど、なかなか機会なく、ここまで引きずってしまった。

人生とは、愛とは、自分とは。
正解なんてない、だけれど誰しもが抱える漠然とした悩み、葛藤。恋愛小説だと思って読み始めたけれど、それだけにとどまらない、とっても心がほぐれる物語だった。

「自分の人生を生きることを、他の誰かに許されたいの?」

家族とはとても厄介だ。女って厄介だ。
自らの原点である一方で、縛りつけもする。

どうして、人を好きになるんだろうと思う。
人を好きになんてならなければ傷つくこともないのに。

「人は群れで暮らす動物です。だからなにかに属さないと生きていけない。ぼくが言っているのは、自分がなにに属するかを決める自由です。自分を縛る鎖は自分で選ぶ」

人は一人では生きていけない。
でも、だからこそ自分の足でしっかり立っていたい。

北原先生の言葉は全てが穏やかで優しい。心に染み入ってくる。

暁海も櫂も家族という存在が足枷になりながらも必死に自分の人生を生きようとしていた。
不器用でとても愛らしい二人。

「誰かに遠慮して大事なことを諦めたら、あとで後悔するかもしれないわよ。そのとき、その誰かのせいにしてしまうかもしれない。でもわたしの経験からすると、誰のせいにしても納得できないし救われないの。誰もあなたの人生の責任を取ってくれない」

瞳子さんのこの言葉、とても胸に刺さった。

暁海にとって、瞳子さんの存在とは父親を奪った人。
事実ではあるけれど、不思議と彼女に惹かれていく暁海。彼女の凛とした強さ、自分の足でしっかりと立てている彼女の人生が羨ましくあったのだろう。

でも父親の不倫相手に会う勇気ってないよね。
私だったら、ない。

なぜそんなに強く生きられるのかと暁海が瞳子さんに尋ねた時、瞳子さんはこう言った。 

「強いんじゃなくて、愚かになれただけだと思う」「愚か?」「どこ行きかわからない、地獄行きかもしれない列車に、えいって飛び乗れるかどうか」  えい……とわたしは繰り返した。「必要なのは頭を空っぽにする、その一瞬だけ」  

瞳子さんはそれを強さではなく、愚かさだと言う。

それが紛れもない強さだと思うのだけれど、愚かさだと言えてしまう瞳子さんは、やっぱり、強い女性だ。


どうしても噛み合わなくなっていく暁海と櫂。


わたしはあなたを癒やすためだけに存在しているふわふわのぬいぐるみじゃない。わたしは生きて、考えて、時間の経過と共に変化していき、傷ついたり喜んだりするひとりの人間で、あなたの恋人だ。

いやー、確かにこのタイミングでのプロポーズは櫂くん、失敗だよ。

しかも女子としては、結婚しよっか、ではなくて結婚しよう、と言ってほしい。そんな削除法の選択肢で選んだようなプロポーズを喜ぶ女がどこにいるのよ、、。

ベテラン夫婦ような手抜きだったと櫂は言うけれど、そういうとこだぞ。

わたしにとって、愛は優しい形をしていない。どうか元気でいて、幸せでいて、わたし以外を愛さないで、わたしを忘れないで。愛と呪いと祈りは似ている。

人生は矛盾だらけだ、と思う。

眠いけど、寝たくない。
不安だけど、楽しみ。
勉強しなきゃならないけど、やりたくない。(いや、やれよ)

そして、大好きで大嫌い。

その矛盾を白黒つけようとしなくていいのだと思う。

心の思うままに、わがままに生きていいのだと瞳子さんと北原先生が教えてくれた。

ただ、そんな時一人で生きていける力を身につけている方が助けになるんだよ、と。

──ああ、夕星。  昼と夜のあわいの中で瞬く星に一日の終わりを重ねて惜しむのか、もうすぐ訪れる夜を待ち遠しく想うのか。たった一粒の星ですら見方がちがう。わたしはこれからどんな選択を繰り返していくのだろう。どうか、それをまっとうしていけるようにと星に願った。

暁海にとって、櫂にとってお互い星のような存在だった。

見上げればそこにある、不変の存在。届きそうで届かない。
人は変化するものだけど、変わらない想いというのもまた存在するのだ。


暁海と櫂、名前からして運命の相手のよう、、、と思った。

素敵じゃない?

登場人物、とても魅力的な人ばかりだけど、私は結ちゃんが好き。

ひとりでも生きていけるようになりたいだけで、ひとりはいや」

こう、はっきり言える結ちゃんはさすがよ。

私も結婚願望が強いわけではないけれど、なくはない。

北原先生の言葉の、この先ずっと一人で生きていくのは怖い、というセリフが身に染みる。

ああ、私もそんな感情だ。

仕事してるし、ある程度蓄えもある。
一人で生きていけてしまうからこそ、愛されたい。

私も、だいぶ矛盾してるなぁ。笑


暁海が自らの作品につけた作品名、

Homme fatal

暁海ちゃん、櫂くんのこと本当に好きだったんだね。

これは私の持論なんだけど、異性に過去の恋人について尋ねた時、ちゃんと好きだった、と答えてくれる人がいい。それだけ真摯に人と向き合っていたということだから。
だから、デリカシーを失わない程度にさらっと、なんで別れたの?ってつい聞いてしまう。
ここで悪口が出てくる人はちょっと無理かも。

恋愛に限らず、人を愛するって辛いし、苦しいし、面倒くさいし、そんな感情なくなってしまえばいいのにと思うこともあるけれど、総じて、かけがえのないものだよね。

私も心の思うまま、ある程度はわがままに生きたいと思った。

とりあえず、恋人探しかな。笑

次回、「星を編む」

凪良ゆうさんにしばらくはハマりそう!!

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