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40.妻へのラブレター

僕は妻と飲むのが好きです。

付き合う前も、付き合ってからも、よく二人で飲みに行きました。
もちろん結婚してからも、よく二人で飲みに行っています。
今はコロナだったりを気にして頻度がかなり減りましたが、それでもたまに二人で飲みに行きます。



家の近くにカウンターだけの小さなレストランがあります。

近くで働いていたり、近所に住んでいる方しか来ない、常連さんだらけのお店です。

4年前に就職と同時に上京し、たまたま見つけたお店です。

4年前、初めて行ったときも、妻と二人でした。

楽しいデートの帰りには、決まって二人で行き、ワインを飲みました。

同棲を始めたときは、妻のお母さんと3人で行きました。

入籍した日には、やっぱり二人で行きました。

もちろんこれからも、二人で行くつもりです。


「よく来てくれるお客さんは、うちに通ってくれてる間に、付き合ったり、別れたりするけど、君たちはずっと二人だったね。」


と言って、マスターがスパークリングのワインをご馳走してくれました。


「初めて来たときは、未成年かと思って、お酒出していいのか、迷ったけどね。」


当時は、ほとんど学生みたいなもんだったから幼く見られてたんだなあ~なんて思っていると


「まあ。今も見た目はあの頃と変わってないけどね。」


と言って笑っていました。僕たちはただただ苦笑いです。

僕たち夫婦はいまだに居酒屋で年齢確認をされることがあります。26歳。年相応に見られたいお年頃です。

緊急事態宣言が出てる間なんかは、よくそこでテイクアウトを頼みました。
おいしいから頼む、という理由もあるのですが、コロナでピンチの時に少しでも手助けしたい、という気持ちが一番大きかったです。

4年間通っていたけれど、その気持ちを抱いたとき、僕らはもう「常連さん」と名乗っていいのでは、と思いました。

大切なのは、時間よりも気持ちだと思ったからです。

人生で初めて常連のお店ができました。

テイクアウトもすごくおいしくて、小食な僕らですが、このお店で食べるときだけ大食いになります。

僕らが他の常連さんより若いからか、ワインをご馳走して頂いたり、食べ物をご馳走して頂いたり、お話を振って頂いたり、とかなり良く迎えてくれます。
お店の雰囲気、料理の味、お手頃な価格、楽しい常連さんたち、そのすべてに僕たち夫婦は満足しています。


ただ、1つだけ。


1つだけ、マスターや、他の常連さん方に隠していることがあります。

それは。

僕が、かなり面白い人間だ、ということです。

今まで長々とレストランでの思い出を書いてきました。
嘘は何一つ書いていないのですが、あえて伏せていたことがあります。
それはマスターや、他の常連さんとのコミュニケーションを全て妻に任せていた、ということです。


僕は人見知りです。会社員をしているので、かなり人見知りは改善されたと思っています。
しかし、なぜかわからないのですが、お店の人に対してだけ極度の人見知りを発揮してしまうのです。


これに関しては、常連となったレストランでも例外ではありません。
いくらお酒に酔って上機嫌になっていようが、お店の方々の耳に届く僕の言葉はボソボソした「ごちそうさまでした。」という最後の挨拶だけです。
(そんな僕でも良いお店だと思えるくらい、良いお店なのですが。)


妻はいつもニコニコしていて愛想がいい上に、受け答えもしっかりしているので、初対面の人たちとすぐに溶け込みます。
僕は表情が固いし、声も小さいです。
いつも妻にだけ聞こえるような小さな声で話します。
ボソボソとした声で、でも確実に妻の笑いのツボを押すようなボケを続けるのです。
大げさではなく、妻は爆発したかのように笑ってくれます。



僕は妻の笑顔が大好きです。だから妻が笑っている様子を見て、とても嬉しく思い、またボケるのです。カウンターに座ってるお客さんには、僕の声は聞こえていません。
なので、妻が突然大きな声で笑った、という事実だけ認識して、目を丸くして驚きます。

原因は僕が面白いからなのに。


「他の人の前では、面白いこと言わないで。」


妻は僕に、そう耳打ちをします。


「夫ちゃんの魅力が知れ渡っちゃうから。」


心配はいりません。僕は妻だけが笑えば満足なのだから。
(それに妻はいつも爆笑してくれているけれど、実のところ、面白くないボケもたくさんしています。完全に妻専用のお笑いです。)


突然ですが、僕はダウンタウンの松本さんが大好きです。神様だと思っているくらい大好きなのですが、神様はやっぱり凄いな、と思った発言があります。

「生きた人の中で、1番笑い声を聞いた耳でありたい。」



松本人志さんなら、その願いは既に叶っているんじゃないか、とすら思わせるから、本当に凄いですよね。

もちろん、僕なんかは足元にも及びません。
生きた人の中で、1番笑い声を聞くなんて、僕の寿命だけが他の人より異常に長かろうが叶わないと思います。

でも。

でも、もしかしたら。

いや、絶対か。

これなら絶対できるな、と思うのです。


僕は、僕の耳を世界で1番、妻の笑い声を聞いた耳にすることができるし、僕の目を世界で1番、妻の笑顔を見た目にすることもできる、と思うのです。

お酒を飲んでいようが、飲んでいまいが、僕は妻を笑わせることができます。
酔っていようが、酔っていなかろうが関係ありません。でもお酒を飲んで酔っている方が、妻の笑い声は大きくなります。それにより楽しそうに笑ってくれる気がします。

僕のモチベーションを上げるには、これ以上ない理由です。
だから、僕はこれからも、妻と二人でお酒を飲みに行きます。

世界で1番、妻を笑わせ続けるために。

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