個別指導塾の闇(子供の塾に悩む親へ)

筆者は4年間、個別指導の塾で勤務していたことがある。その時の経験を基に、息子さんや娘さんを個別指導塾にいれようか考えている親御さんに伝えておきたいことを綴る。

まず、個別指導塾とは、子どもに安い料金で勉強させたい親と、勉強を教えることでお金を稼ぎたい大学生を結びつけるシステムである。

個別指導塾にいる先生はほとんどがアルバイトの大学生である。筆者が勤務していた塾は、社員として塾の母体の会社に就職し、塾のスタッフとして運営をしながら、教えることもする、という人はたったの3人で、残りの30人程度はすべて大学生であった。そしてアルバイトの大学生の給与は時給1,200円程度。その辺のレジ打ちと同じ給料で、自分の子どもは教えられていることを、親は認識しておく必要がある。

というのも、個別指導塾の説明会、面談に来て、「先生の中で大学生はどのくらいの割合ですか?」と質問する親が多い。「責任の無い大学生よりは、責任があって、かつ長年教えている社員に子どもを見てもらいたい」という思いがあるのだろう。社員はその質問に対し、「先生の半分ほどが大学生です」と答えるように言われている。「社員は3人しかいません」と言うと入塾してくれない可能性があるからだろう。しかし実態は上記の通りであり、これは完全な嘘である。個別指導塾の比較的安い授業料は、先生の多くが賃金の安い大学生であるからこそ、成立しているものだ。

次に、個別指導塾に子どもをいれる際には、子どもの学力レベルを考えてほしい。

個別指導塾は比較的授業料が安い分、いろいろな生徒がいる。勉強のやる気がなく、先生の話をまったく聞かずに、逆に先生に対して勉強とは関係のない話をし続ける生徒や、自閉症傾向のある生徒、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)ではないかと思われるような生徒もいる。個別指導塾がそのような生徒たちになんとか勉強させて、学校の授業についていけるようにすることに一役買っていることは事実である。しかし個別指導塾の多くは、一回の授業における先生と生徒の人数比が1人:2人である。自分の子どもの隣の席の生徒が手のかかる生徒であった場合、自分の子どもに先生がかけられる時間は少なくなってしまう。

また、受験の際にも問題がある。もともと志望校の偏差値が低い生徒は問題ない。一方で、問題は偏差値の高い学校を目指す力のある生徒だ。

1つめに、個別指導塾に通う生徒は比較的頭のよくない生徒が多い。そのため、偏差値の低い学校を志望校とする生徒が多く、「もっと勉強して、より良い教育が受けられる学校を目指したい」と思えない環境である。2つめに、塾の社員は生徒の模試の偏差値を参考に、「ちょっと頑張れば入れそうな偏差値の学校」を第一志望として設定させる。つまりここでも、より偏差値の高い学校を受けようという思いは生まれない。

ここまで個別指導塾の、「先生のほとんどは大学生」「生徒が上を目指そうと思えない」という点を確認したが、集団指導の塾や家庭教師はどうか。

集団指導塾や家庭教師の先生も、大学生が多いことは事実である。しかし、集団指導塾は個別指導塾よりは社員が多く、また大学生であっても複数人の生徒の前で授業をしなければならず、教えることへのハードルが高い分、その大学生の教育レベルも高いことが多い。家庭教師は実際に授業を見て、合わなければ変えれば良い。また、集団指導塾は授業についていけるレベルの生徒が集まるため、個別指導塾よりはレベルが高くなる。家庭教師では他の子どもとの関わりはない分、自分の勉強に集中できる。

とはいえ、筆者は個別指導塾の存在自体を否定するつもりはない。「比較的安いから」という安直な理由で選ばず、子どもの適正や学力レベルを考えた上で、塾を選んでほしいのだ。筆者の考える個別指導塾に子どもをいれる条件は、・集団での授業が嫌い(ついていけない)・通信教材を用いた自学も難しい・しかし家庭教師を雇うほどの経済的余裕はない・先生が大学生でもよい・子どもが偏差値の高い学校を目指さなくてよい・他の生徒の状況によっては先生が自分の子どもに目をかけられなくてもよい である。これらが満たされないからといって、塾や担当の先生に文句を言うことはお門違いである。

さらに言いたいのは、子どもの成績が不安だからといって子どもの意思に反して個別指導塾にぶちこむのは辞めてほしい。やる気のない子どもは塾に入れても勉強しないため意味がない上に、先生や他の生徒に迷惑をかけることになる。塾に入るのは親の意思ではなく、子の意思であるべきだ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?