討ち入りたくない内蔵助
ネタバレになりますが、最期は大石内蔵助の切腹で締めくくります。
史実として非常に有名なので「でも、内蔵助死んじゃうんだよなぁ…」と読んではいましたが、その最後は武士として清々しく散るのではなく、クソッ!クソッ!、なんでこうなってしまうんや!、そんな内蔵助の声が聞こえてくるような終わり方でした。
『討ち入りたくない内蔵助』は『あの日、松の廊下で』の続きになる小説ですが、前作を読んでいた流れがあるので、決して吉良上野介が悪人ではないことは分かっていました。
松の廊下の事件を発端に出来てしまった波のようなものがあり、その行先は赤穂浪士達の死に繋がっている。なんとか抗おう、全員が生きて暮らしていく道を繋げようと、内蔵助は画策するも、そのジタバタは届かず、無念の討ち入りとなります。
ホントは討ち入りたくないのです。
表紙の内蔵助が泣いている表情、そしてタイトルの意味、読んでみると非常に納得です。
内蔵助が「あぁ、もうめんどくせえ…」と心でぼやきつつ、時に現実から逃げたりしつつ、それでも赤穂藩をまとめる自身の立場を全うして、ケリを付ける様は、かっこ悪さをまとったかっこ良さを感じました。
この事件に詳しいわけではないので、どこまでが作者の想像によるものなのかは不明ですが、大石内蔵助の人間味を溢れんばかりに描かれており、美談ではない忠臣蔵を読めました。
2冊読んで、どちらかというと、『あの日、松の廊下で』の方が面白かったですが、どちらも読むと、より最後の切腹シーンが際立ってくると思います。
https://note.com/penginrock/n/n877a049eaeac
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