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『クリミア・ハン国 歴史・国家・社会』まえがきに代えて

2024年3月18日、ロシアによるクリミア半島の「併合」から10年が過ぎました。この10年間にクリミア半島とその周辺で起こってきたことを考えると暗澹たる気持ちしか浮かびません。国際社会の平和と安定、地域住民の幸福に少しでもつながる未来があることを祈るのみです。

10年前、クリミア情勢をめぐってクリミア・ハン国とクリミア・タタールという存在が日本語の言説空間で認知される中で、かつて無謀にもクリミア・ハン国史を専攻しようとした大学院生であった私は、日本語でクリミア・ハン国について書かれた資料がほとんどなく、イメージのみで語られていることに失望を感じていました。幸いにもTwitterなどでクリミア・ハン国史の話題を振ると、その実像についてそこそこ関心を持ってくれる人がいるようでした。そこで突如思い立ち、1か月ほどの短期間で一気に書き上げた原稿が『クリミア・ハン国 歴史・国家・社会』と題した小史です。

私としてはこれはあくまで昔取った杵柄でまとめた習作であり、機会があればきちんと先行研究を読み直して書き改めたいと思い、出版社に企画書を持ち込んだこともありましたが、当時の出版事情と私の能力がそれを許しませんでした。それから10年、出版事情はますます厳しさを増し、私が先行研究を調べ直す時間と多言語にわたる文献を読み解く能力を取り戻せる見込みもない中、旧稿をさらすことに気恥ずかしさがあって長年お声がけいただいた旧知の方に印刷したものを渡す程度にしていましたが、今回の節目を迎え、noteで全文を公開することにしました。

正直なところ、今も読み返すと粗だらけに感じますし、古い知識や思い込みで書いた間違いもあるはずで、あまり見せたくない気持ちも残っています。ぶっちゃけていえば現在進行中の別件の翻訳について出版を目指して関心を持ってもらえる人を増やそうという下心もあり、思い切って公開することにします。あとで黙って消すかもしれませんが、その際は何とぞご容赦ください。

目次

第1章 クリミア・ハン国の成立
第2章 オスマン支配下における成長と拡大
第3章 黒海北岸の支配者として
第4章 クリミア・ハン国の国家と社会
第5章 オスマンとロシアのはざまで

主要参考文献

  • 赤坂恒明『ジュチ裔諸政権史の研究』風間書房, 2005.

  • 伊東孝之(ほか)編『ポーランド・ウクライナ・バルト史』山川出版社, 1998

  • 小松久男編『中央ユーラシア史』山川出版社, 2000.

  • 杉山正明(ほか)『中央ユーラシアの統合9-16世紀』岩波書店, 1997.

  • 高橋昭一『トルコ・ロシア外交史』シルクロード, 1988.

  • 林佳世子『オスマン帝国500年の平和』講談社, 2008.

  • Bennigsen, A. et al. Le khanat de Crimée dans les archives du musée du palais de Topkapı. Mouton, 1978.

  • Bıyık, Ö. Kırım’ın idarî ve sosyo-ekonomik tarihi, 1600-1774. Ötüken, 2014.

  • Fisher, A. The Crimean Tatars. Hoover Institution Press, 1978.

  • Halim Giray (B. Günay ed.). Gülbün-ü hânân, Kırım hanları tarihi. İstanbul Üniversitesi Avrasya Enstitüsü, 2013.

  • Kurat, A.N. IV-XVIII. yüzyıllarda Karadeniz kuzeyindeki Türk kavimleri ve devletleri. Türk Tarih Kurumu, 1972.

  • TDV İslâm Araştırmaları Merkezi. Türkiye Diyanet Vakfı İslâm ansiklopedisi. (http://www.islamansiklopedisi.info/

  • Uzunçarşılı, İ.H. Osmanlı tarihi, Türk Tarih Kurumu, 1949-1961.

  • Ürekli, M. Kırım Hanlığının kuruluşu ve Osmanlı himâyesinde yükselişi, 1441-1569. Türk Kültürünü Araştırma Enstitüsü, 1989.