見出し画像

チベタンポップス翻訳 「母の手」

「僕のふるさとはチョモランマです。音楽との出会いは、お父さんが車の中でかけていたカセットテープで流行の歌を聞いたのが最初。子どもたちは授業中に、先生歌って!と言うので、よく歌ってあげているんですよ」(テレビ番組のインタビューより)

今回は、歌手タシ・プンツォクの歌詞翻訳です。

タシ・プンツォクは、中央チベットのシガツェ出身。
2017年、中国のアメリカンアイドルのような、オーディション番組で一躍スターに。
番組出演当時は、ラサで数学の教師をしていたそうです。

番組では数回に渡って審査員の前で歌を歌いますが、
その中でも本当に美しい曲、「ཨ་མའི་ཕྱག (母の手)」を訳してみました。
この曲は、タシ・プンツォクが作曲、彼のお兄さんが作詞をしているそうです。

そののびやかな声を聴くと、チベットの雪山、美しい景色が目の前に広がるようです。
ぜひ、動画と一緒にご覧ください。

オーディション番組で歌っている動画はこちら↓
https://youtu.be/-34iMajzOXU

歌詞付きの動画はこちら↓
https://youtu.be/4ydCi3zSjxQ

私がこの曲を聴いてタシ・プンツォクの大ファンになったのは3年くらい前。
当時もすぐ訳してみたのですが、いまいち意味が掴みきれないまま、進まずにいました。
そこで、最近は文法の勉強もなんとなくやってみてはいるので、今だったら前よりもっと意味がわかるかな?と思ってやってみました。

が…それはそれは大変な作業。
詩や歌詞だと、文章が洗練されている(細かいところまで記述しない)ので、文脈を読んで想像を膨らませながら翻訳する必要があります。
それが、チベットの文化的背景がない私には、とても難しいことでした…

自分で訳してはチベット人の友人にチェック、ということを数回繰り返して今回の内容まで至りました。友人には本当に感謝です。

とはいえ、歌詞の解釈は人それぞれだと思います。
ちょっと訳が決めきれなかった箇所は、カッコ書きで別のパターンの訳を載せてしまいました。こんなやり方でいいのだろうか…
みなさんがこの歌を味わうきっかけに、今回の訳を使っていただければ嬉しいです。

と、翻訳についていろいろ考えたことはまた別の記事で書いてみています↓
https://note.com/pematso/n/n31ebe52cec4c

何か感想等あればコメントくださいませ。
いつか、彼やANUにインタビューしてみたい!
将来の夢のひとつです。

------------------------

ཨ་མའི་ཕྱག བཀྲ་ཤིས་ཕུན་ཚོགས།
「アマの手」 タシ・プンツォク

(1)
ཕུ་གངས་རིའི་སྟེང་ལ།
雪山の奥深くで
(雪山の奥深くに寺がたたずみ)
གངས་ལྷ་མེ་ཏོག་བཞད་མོ་ཞི།
カンラメトク(※注釈1)が微笑む
ཕ་ཡུལ་ལྷ་ཡུལ། ཕ་ཡུལ་ལྷ་ཡུལ།
ふるさとは天国のよう
གངས་ལྷ་མེ་ཏོག་གིས་བཞད་མོ་བཞད།
カンラメトクが微笑む
མདའ་ས་གཞི་ས་ཁང་།
山のふもとには田んぼと家々
སྙེ་མས་མགོ་ལྕོག་ལྡེམ་ལྡེམ་གཡོ།
麦の稲穂がしなやかに揺れる
ཕ་ཡུལ་ལྷ་ཡུལ། ཕ་ཡུལ་ལྷ་ཡུལ།
ふるさとは天国のよう
སྙེ་མས་མགོ་ལྕོག་ལྡེམ་ལྡེམ་བྱས།
麦の稲穂がしなやかに揺れる

(2)
ཨ་མའི་ཕྱག་ཟུང་འདི་ཡིས་མུན་པ་ཚང་མ་བརྒལ་ཏེ།
アマの手によって、暗闇を越えて
(アマの手によって、すべての苦しみを乗り越えて)
(働き者のアマは、一日が終わると夜を迎えて)
སྐྱ་རེངས། སྐྱ་རེངས། སྐྱ་རེངས་བསུས་ནས་ཡར་ལ་བཞུགས།
朝日を迎えてきた
ཐབ་ཟུར་དྲོད་དང་རྩམ་པའི་དྲི་ཞིམ་མཉམ་དུ།
暖かいかまど(※注釈2)から、美味しいツァンパの香りとともに
ཨ་མ། ཨ་མ། ཨ་མའི་སྐྲ་ལོའི་ཁ་དོག་འགྱུར།
アマ アマ アマの髪の色が変わって
(アマの髪が白く変わる→苦労している様子を描いている?)

(3)
ཨ་མའི་ཕྱག་་་་་ བུ་ཕྲུག་གི་མི་ཚེ་ཡིན།
アマの手が、子の生涯を作り
ཨ་མའི་ལས་་་་་ བུ་ཕྲུག་གི་བསོད་ནམས་ཡིན།
アマのカルマは、子の福徳となる
ཨའོ། ལྕི་བའི་ཐལ་རྡུལ་ཁྲོད། སྒྲོན་མེ་ཡི་བསད་སྤར་ལ་རེག་ཟིན།
おお ヤク糞(※注釈3)の燃えかすとランプの光のように消えていく 
(ヤク糞の灰やランプの光のように消えていくアマの人生)
(ランプの消える直前が寂しい感じを表している?)
ཨའོ། ཨ་མ་ཡི་ཕྱག་ཟུང་། བུ་ང་ཡི་མི་ཚེའི་ལམ་བུ་གཏོད།
おお アマの両手が 私の人生をかたちづくっていく

(2)くりかえし

ཨ་མའི་ཕྱག་་་་་ བུ་ཕྲུག་གི་མི་ཚེ་ཡིན།
アマの手が、子の生涯を作り
ཨ་མའི་ལས་་་་་ བུ་ཕྲུག་གི་བསོད་ནམས་ཡིན།
アマのカルマは、子の福徳となる
ཨའོ། ལྕི་བའི་ཐལ་རྡུལ་ཁྲོད། མར་མེ་ཡི་བསད་སྤར་ལ་རེག་ཟིན།
おお ヤク糞の燃えかすと バターランプの光のように消えていく
ཨའོ། ཨ་མ་ཡི་ཕྱག་ཟུང་། བུ་ང་ཡི་མི་ཚེའི་ལམ་བུ་གཏོད།
おお アマの両手が 私の人生をかたちづくっていく

(3)くりかえし
(1)くりかえし

ཐོ་རིངས་ཀྱི་སྐར་ཆེན་དང་ཐབ་ཟུར་གྱི་རྩམ་པ།
夜明けに光る星と かまど片隅のツァンパ

ཉི་ཟེར་དང་པའི་རེ་བ་དང་བཅས།
朝日への希望とともに
བུ་ངའི་མི་ཚེ་གཏོད་པར་བྱས།
私の人生を切り開いてくれた
(毎日こうしてアマが人生をかたちづくってくれた)
ཨ་མ་ལགས།
アマラー

----------------------

※注釈1
གངས་ལྷ་མེ་ཏོག(カンラメトク)
添付写真1枚目。
高地特有の花の一種。チベット医学の中で薬に用いられることも多い。

※注釈2
チベットの家庭の中心には、かまどがあります。
かまどにはいくつか種類があって呼び分けられていますが、ここではどんなかまどなのか、不明です。
「チベット牧畜文化辞典」https://apps.apple.com/jp/app/nomadic/id1315312197
より、写真をいくつか添付してみます。

※注釈3 
ヤクとは、チベットなど高地で生息するウシ科の科の動物。写真二枚目参照。
ヤクを家畜として飼っている家庭では、糞を乾燥させて燃料として用いることがあるそうです。
ここでは、その燃料をかまどで燃やした時の灰を表しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?