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20.帰省

6月の速歩と前期第2中間テスト、7月の学園祭が終わると夏休みがやってくる。母校の寮では、休み中は閉鎖されるので、無理やりにでも実家に帰らされる。寮の裏口は、「取りあえず、実家に送っておくか?」と段ボールに詰められた荷物の山となった。そして土産物の買い出しに皆追われることになる。
私の場合は、いつも帰省の土産は「スルメイカ」とスルメイカで作った徳利とお猪口であった。函館と言えばイカである。イカは函館の顔として全国的にも有名になり、平成元年8月1日には、スルメイカが「函館市の魚」として制定され、函館市のシンボルとして親しまれている。今では、「ハコダテ観光ガイド イカール星人襲来中」と言う動画までもあるようだ。日本で一番侵略したい街は函館らしい。
北海道のイカ釣り漁の歴史は古く、天明年間(1781~1788年)の記録では、わずかではあるが長崎経由で中国へ輸出されていた。函館地方では、昔から日本海を南から北に回遊するスルメイカの生産地で、1859年 (安政6年)の函館開港に伴い徐々に盛んに行われるようになった。現在行われているような集魚用ランプの漁火で海を照らす漁法や漁具などは、明治時代に佐渡から函館に伝えられた。今の漁火は人工衛星からでもわかる程明るい。この時期の函館の夜景は素晴らしいものとなる。
1999年4月に付属の中学校ができて、小学校を卒業したばかりの小僧が寮生活を送るようになってからだと思われるが、ゴールデンウィークにも帰省する生徒もいるらしい。私たちの頃はGWは帰省しなかった。せっかく堅苦しい実家から飛び出したところである。ずっと寮にいたかったが、仕方がない。それに、帰省には別の目的があった。それについては追々語っていこうと思う。
帰省の時期になると、旅行会社の営業マンが寮にやってくる。そこで道内の生徒はJR(当初の頃はまだ国鉄だった)の、関東・関西組は飛行機の予約を取る。誰でも少しでも安く済ませたいと考えるので、我々飛行機組はスカイメイトに加入していた。スカイメイトは日本の航空会社の国内線普通旅客運賃がおよそ半額程度になる割引制度(旧称 : 青少年割引運賃)、およびその割引を受けるために一部会社で必要だった会員制度である。全日空 (ANA) と日本航空 (JAL) の大手二社と、新規航空会社である北海道国際航空 (ADO)、スカイマーク (SKY) が実施している。対象年齢は満12歳以上(に達した小学6年生を含む)から22歳未満まで。なお、年齢制限による割引であるので、厳密には学生割引ではない。
利用には、あらかじめ航空会社直営のカウンターで入会金と証明写真を添えて、【年齢の確認できるもの(健康保険証・パスポートのような公的書類のほか、学生証・生徒手帳等でも可)】を提示の上、「スカイメイト会員証」の発行を受ける必要があった。大手2社が近年発行していた会員証は磁気カードとなっているものがある。 「スカイメイト会員証」はSKY以外の各航空会社共通で使用可能であるが、発行から22歳に達するまでの最長5年間の有効期限が設けられ、有効期限満了時に22歳未満でスカイメイトの利用を継続する場合はあらためて発行手続きを行う必要があった。
しかしながら、2006年9月末をもってANAでは発行を終了している。ただし、日本航空インターナショナルについては、自動チェックイン・航空券売機 (TCM) での購入時にスカイメイトカードが必要となるため、2010年現在も空港支店カウンターで無料発行している。 2006年10月から大手二社はスカイメイト会員証の代わりに搭乗者本人名義のマイレージカードの提示だけでスカイメイト運賃の購入が可能になった。ただし、マイレージ会員情報に年齢(生年月日)が登録されていない場合は【年齢を確認できるもの】の提示も必要である。
当時(今もか)、函館と大阪(伊丹)をダイレクトに結ぶ飛行機の路線はない。東京の羽田空港で飛行機を乗り換えるか、名古屋まで飛行機で行って、そこから近鉄特急で帰るかの二者択一になったのであるが、初めての帰省のときには名古屋ルートを取ることになった。函館~名古屋は、スカイメイトを利用すれば当時、確か17,000円で帰れたと思う。名古屋から近鉄特急に乗っても2万円ちょっとで済んだ。なおかつ、京都から来ていた上田の両親から、名古屋から車で一緒に帰ろうと誘われていたのでその話に乗っているともっと安上がりになったかもしれない。しかし、私はその申し出を断った。なぜなら、近鉄特急の中で飲酒・喫煙がしたかったからである。

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